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■横歩取り道場 第ニ巻 相横歩取り

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東大将棋ブックス
横歩取り道場 第二巻
相横歩取り
[総合評価] A

難易度:★★★★☆

図面:見開き6枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:B
有段向き

【著 者】 所司和晴
【出版社】 毎日コミュニケーションズ
発行:2002年9月 ISBN:4-8399-0818-4
定価:1,200円 224ページ/19cm


【本の内容】
第1章 基本図までの駒組み   20p
第2章 ▲7七銀-飛交換型 (1)△8二角型
(2)△6四歩型
(3)△7三角型
(4)△8二歩型
(5)△8六歩型
138p
第3章 ▲7七銀-▲3六飛型   16p
第4章 ▲7七桂型 (1)▲6六角型
(2)▲5八玉型
28p
第5章 ▲7七歩型   14p

◆内容紹介
相横歩取りを徹底解説。相横歩取りはアマ間では非常に人気の高い戦法だ。飛車角総交換で一気に終盤、速戦即決のスピード感がその理由であろう。後手番を持って指すのも怖いが、やや良いとされている先手番で戦うのはそれ以上に怖い意味がある。しかし、横歩を取ったからには一番激しい変化に突っ込んで行きたい―本書はそんな方々のために激しい変化は詰みまで調べ上げた。本書を読まずに横歩取りは語れない。


【レビュー】
相横歩取りの定跡書。

相横歩取りは、お互いに横歩(先手なら△3四歩、後手なら▲7六歩)を飛車で取る戦法。序盤早々に互いに3歩を持ち、多くの場所で歩が使えるので、非常に激しい戦いになりやすい。超急戦ならある程度結論が出そうなものだが、相横歩は江戸時代から(!)指されているにもかかわらず、いまだに結論が出ていない戦法の一つである。※1現在のプロ公式戦でも年間数局がポツポツと指されていて、少しずつ進化をしている。

本書は、相横歩取りの定跡を一冊にまとめた本である。なお、相横歩取りの専門書は本書が初めて。

相横歩取りの棋書としては、『羽生の頭脳 9 激戦!横歩取り』(羽生善治,日本将棋連盟,1994.09)が有名で、よく相横歩取りの棋譜中継や解説記事でも登場する。しかし、『羽生の頭脳 9』での結論が北浜新手(1994.10)で覆された。その「北浜新手のルート」が「後手勝ち」と結論付けられたために、先手は他のルートを探る必要に迫られ、新たな研究が始まった。

参考:【北浜新手】

 ・小野修一vs北浜健介,1994/10/04,全日プロ(将棋の棋譜でーたべーす)

△8六飛に▲7六歩が中合いの手筋で、従来はここで△8一飛(馬を取る)▲6二銀成△同玉▲7四桂△5一玉▲6三銀で先手指せる、が『羽生の頭脳 9 激戦!横歩取り』のp127〜p131に載っていた定説。

ところが、△8一飛のところで△7六同飛!と歩を取り、▲6五玉△6四歩▲5五玉△5四歩!が北浜新手と呼ばれている手で、この変化が後手良しに覆ったため、新たな研究が始まった。この辺りの顛末については、『新手年鑑 Vol.I』(島朗,MYCOM,1995.08)のp130〜132や、『新手年鑑 Vol.II』(勝又清和,MYCOM,1996.09)の冒頭p4〜p6で解説されている。


もちろん本書では、北浜新手やその他の新手もいくつか収められている。

最近、相横歩取りの専門書『乱戦!相横歩取り』(北島忠雄,MYCOM,2011.02)が発行されたが、テーマ的に本書とかなり重なっている。というわけで、違いを明確にするために、まずは本書から読んでみることにした。

各章の内容を、他書との違いも交えながら、チャートを使って紹介していこう。特に、『羽生の頭脳 9 激戦!横歩取り』と違う部分は、チャート内に青字で記しておく。


第1章は、相横歩取り基本図からの変化の概要。チャート(下図)にあるように、個別に章や節が立っている変化は本章では紹介のみにとどめ、それ以外の変化については少し詳しく書かれている。本書出版の1ヶ月前に発売された『郷田真隆の指して楽しい横歩取り』(郷田真隆,フローラル出版,2002.08)で紹介された2つの郷田新手(▲2八歩、▲7九金)については、軽めの扱いだ。▲7九金の方は完全スルー。



第2章は、「▲7七銀-飛交換型」とタイトルにあるが、実際はその中で飛交換後に▲4六角と打つ変化に絞っている。相横歩取りの定跡の中で「最善」と言われ、かつ最も激しい戦いになる変化だ。詰むや詰まざるやの局面まで研究が進んでいる。△3七角成に▲4八金の新手は1996年3月の▲井上慶太vs△丸山忠久で登場。





第3章は、基本図から▲7七銀△7四飛に▲3六飛と飛交換を避けた形を解説。「大駒総交換の激しい戦いを避け、比較的穏やかな展開を目指したもの。先手やや気合負けの感があるが、一局の将棋」(p164)とある。先手で相横歩取りが苦手な人は、この展開だけを覚えておいてもいい。



第4章は、基本図から▲7七桂。基本的に持久戦狙いの手であるが、△3三金(▲2二歩を防ぐ)▲8四飛△8二歩に▲6六角が比較的新しい手。▲5八玉は「陣形を整えつつ後手の△7五角を防いだ手で従来の定跡手。もちろん現在も有力手段である。」(p200)という手だ。



第5章は、基本図から▲7七歩。わたしが知る限りでは、『ヨコ歩取り戦法』(芹沢博文,北辰堂,1975)で提唱された形だ。筋悪と見られがちで、プロの実戦例も多くないが、大乱戦を避けるには有効。相手の気合を空振りさせる効果もあるかも?




相横歩取りのような分岐型の戦型は、東大将棋ブックスシリーズがもっとも得意とするところ。妙手もたくさん出てくるので、横歩取りを指す人なら、たとえ相横歩を指さないとしても、必携の一冊である。

現時点では決定版に近い一冊だが、その後に出た新手もいくつかある。さて、『乱戦!相横歩取り』では、その辺りはどうだろうか?(2011Feb28)


※1 ^ 相横歩取りの歴史については『続 横歩取りは生きている−上巻−』(沢田多喜男,将棋天国社,1988)が詳しい。相横歩取りが最初に登場するのは、大橋宗英著の『平手相懸定跡集』の第十八章だそうだ。

※【参考】 〔相横歩取りの単行本での流れ(主なもの、2011年まで)〕
 1988-07
横歩取りガイド,週刊将棋編,所司和晴協力,MYCOM
 1988-10
続 横歩取りは生きている 上巻,沢田多喜男,将棋天国社
 1990-09
横歩取りガイドII,所司和晴,週刊将棋編,MYCOM
 1994-09
羽生の頭脳 9 激戦!横歩取り,羽生善治,日本将棋連盟
 1994-10 北浜新手
 1999-04
これが最前線だ!最新定跡完全ガイド,深浦康市,河出書房新社
 2002-07
定跡外伝2,週刊将棋編,MYCOM
 2002-08
郷田真隆の指して楽しい横歩取り,郷田真隆,日本棋道協会編,フローラル出版
 2002-09
横歩取り道場 第ニ巻 相横歩取り,所司和晴,MYCOM(本書)
 2005-12
将棋定跡最先端 居飛車編,所司和晴,MYCOM
 2006-11
最新戦法必勝ガイド これが若手プロの常識だ,村山慈明,MYCOM
 2011-02
乱戦!相横歩取り,北島忠雄,MYCOM



【関連書籍】

[ジャンル] 
横歩取り
[シリーズ] 
東大将棋ブックス
[著者] 
所司和晴
[発行年] 
2002年

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