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◆内容紹介
1995年に相振り飛車の戦いに革命を起こしたのが「相振り革命」シリーズです。第一作の発売以降、相振り飛車は劇的な進化が始まり、それは現在も続いています。本書はこの相振り革命シリーズの最新作です。最近の振り飛車は三間飛車が増えており、相三間を中心に、三間飛車対向かい飛車、後手の秘策△5五角作戦など、実戦で試したくなるような面白い変化が盛りだくさんになっています。
また局面を先手の視点と後手の視点に分けて解説するなど、独特な工夫もしてあります。杉本昌隆七段渾身の研究を是非ご覧ください。

	第1章　先手三間vs後手△5三銀型三間（先手ジックリ型） ▲石田流に対し、△5四歩〜△5三銀〜△3二飛で三間飛車に振る。先手は△5五角〜△8二角（第3章で解説）を阻止するため、▲6七銀より前に▲5八金左を急ぐ。基本的にお互いに高美濃で戦うが、歩交換のタイミングしだいで高美濃のままか、矢倉を目指すかの選択肢がある。よって、本章では 　(1)高美濃vs高美濃の例 　(2)矢倉vs矢倉の例 　(3)矢倉vs高美濃の例 の3つを解説。 ○ピックアップ ・「▲5五飛のさばきの構想は、戸辺六段著の『戸辺流相振りなんでも三間飛車』で紹介されていた形。」（p19） 他人の著書を具体的な書名を挙げて紹介するのは、棋書ではかなり珍しい。 ・「△5三銀型美濃は△5四銀を上がらない方が受けに強い」(p49） △5五歩-△5四銀は通常は好形とされるだけに、形で上がっていた人には参考になる。
	第2章　先手三間vs△5三銀型三間（先手軽快型） ▲石田流に対し、△5四歩〜△5三銀〜△3二飛で三間飛車に振るのは第1章と同じ。本章では、先手は玉の囲いは最小限（▲3九玉型平美濃）にして、左辺の飛角銀桂で捌く。▲7九銀型で7筋歩交換をしていくので、本来の石田流使いには感覚的に適した戦いかも。 後手が美濃囲いなら、飛角桂香で端攻め。後手が矢倉模様なら、浮き飛車から▲2六飛で揺さぶる。 ○ピックアップ ・「相手の矢倉が予想されていても、あえて中段に引くのは現代感覚。」（p65） 従来は、矢倉に対して中段飛車に引くのは、相手の守り駒に飛が近いので良くないといわれていた。基本としては変わってないが、矢倉に対して中段飛車から揺さぶったり、圧迫される前に仕掛けるテクニックが発達した。
	第3章　相三間 後手の秘策 (1)△8二角転換作戦 互いに飛車先交換をして△5五角と出て、△8二角を転換する。狙いは先手の美濃囲いを角のニラミでつぶすこと。先手が歩交換をしてくれないと成立しないが、意外に多く現れそうな形。後の攻め方が分かりやすいので、アマにはかなり有効ではないだろうか？ちなみに対金無双にはまったく無効。 ○ピックアップ ・「相振りではたくさんの歩を手持ちにするのが急所だ。」（p75） ・「相三間では、角道が通っている関係で、後手にだけ穴熊に組む権利がある。」（p98）
	(2)後手穴熊作戦 穴熊には金無双から速攻で端攻めするのが有効。しかし金無双は序盤の安全度は高いが、持久戦になるといろいろなつぶされ方があり、進展性にも乏しいので激減した。よって、天敵が駆除された結果、後手の穴熊が有力になってきた。 本項では(1)対▲矢倉の例、(2)▲高美濃の例を解説。 ○ピックアップ ・「△8二角転換作戦」と「△穴熊作戦」は先手の構えと展開によって使い分ける。（なので同じ章で解説されている） ・穴熊に組むときに、△7二金を先にした方がいいか、後にした方がいいか。分けて解説されている。
	第4章　先手向かい飛車vs後手三間 これまでエース級だった戦型。前述の理由のため、減少している。この章だけは先手・後手両方の視点で解説。いまどちらの視点になっているかは、ページ右上に「（▲先手の視点▲）」「（△後手の視点△）」と表示されている。また、この章では、いま解説している変化の代表局が紹介されている（棋譜はなし）。 代表的な戦い方は3つ＋α。 (1)△三間から早い歩交換で矢倉を誘い、▲矢倉に対して△4五歩〜△6五歩の仕掛けが有力。代表局は2009年3月の羽生vs久保（竜王戦1組）と2010年7月の清水上vs田中悠（朝日杯）。 (2)角交換後に▲2八角と打って△美濃囲いを狙う構想。第3章第1節の△8二角転換作戦に似ている。代表局は2010年6月の藤井vs久保（A級）。 (3)▲カニ囲いvs△三間＋美濃囲い。先手があまり早く矢倉を目指さないように、慎重に指す。 (+α)後手△3七歩強要作戦が【補足】で紹介。先手が▲3七歩を打たずにがんばる（別のところに歩を使いたいため）なら、△5五角（香取り）と出て▲3七歩を強要する。その後角を戻すと2手損になるが、歩を打たせた形の実利を重視している。 ○ピックアップ ・「角交換から自陣角・△5五銀のぶつけ、△6六歩の垂らし・が打開の3点セット」（p163）
	第5章　その他の相振り、速攻三間、左穴熊対策 (1)その他の相振り �@▲三間vs△角道不止め四間 初手から▲7六歩△3四歩▲7五歩△4二飛▲7八飛!△8八角成▲同銀△4五角▲5六角で戦える、というもの。先手は角道を止める選択肢もあるが、本書では推奨されていない。
	�A▲向飛車vs△三間 前著『相振り革命最先端』で紹介された形の最新版。第4章の▲向飛車vs△三間とは異なる形。前著の内容のバージョンアップとなるので、基本図までの指し手は省略されている。互いの囲いに呼応して、先手は四間、後手は向飛車に振り直している。
	�B相三間、阿部新手 昔からある相石田流の新構想。第1章〜第3章の相三間とは異なる。先手の高美濃狙いに対して、角交換して金無双に組む。金無双の方が角の打ち込みが少ない点を主張する。
	(2)先手三間超急戦 いわゆる▲早石田の稲葉新手▲5八玉。公式戦で初めて指したのは稲葉四段だが、発案は菅井四段とされる。 単行本での登場は、『先崎学のすぐわかる現代将棋』（先崎学，北尾まどか，日本放送出版協会，2010.07）、『ライバルに勝つ最新定跡』（村山慈明，MYCOM，2010.09）に続き、3冊目。（ちなみにこれから発売される『最新版 勝てる石田流』（鈴木大介，創元社，2010.01）で詳しく解説されそう） 相振りとはいえない戦型であるが、本書で多く解説されている3手目▲7五歩がらみということで掲載されている。ただし、変化の分岐で言えば『ライバルに〜』の方が詳しい。 なお、本書では【補足】で2010/09/22の久保vs渡辺（A級）で現れた▲4八玉について、わざわざ原稿を差し替えて掲載してあるのと、この指し方の歴史概説がある。
	(3)東大流左穴熊中飛車対策 初手▲5六歩の▲中飛車には、△相振り三間が有力とされている。本書の「東大流」では後手が三間に振ったのを見て、▲5六飛の浮き飛車から居飛穴にスイッチする。英春流にも似た指し方だ。 この指し方はプロではほとんど実戦例がないが、ネットでは流行しているのこと（わたしは知りませんでしたorz）。単行本では初登場ながら、いきなり対策されてしまっている(汗)。

相振飛車の進化・変遷はホントに著しい。特に今回は、過去の常識が通用しなくなっている部分がいくつかあるので、少なくとも相振り党と石田流党は必読。現在は▲石田流を避けて通ることは非常に難しくなっているので、居飛車での対策に限界を感じている方も読んだ方がいいだろう。(2010Dec03)

※誤植・誤字等（初版第1刷で確認）
p9　×「第8図の△4五歩〜△6五歩の仕掛け（第1・2章参照）」　○「第8図の△4五歩〜△6五歩の仕掛け（第4章参照）」
p227第4図　×▲1七歩　○▲1六歩

【関連書籍】
　5.『相振りレボリューション』，2010（本頁）
　4.『相振り革命最先端』，2008
　3.『相振り革命(3)』，2005
　2.『新相振り革命』，2000
　1.『相振り革命』，1995
[ジャンル]　相振飛車
[シリーズ]　マイコミ将棋BOOKS
[著者]　杉本昌隆
[発行年]　2010年

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