2.6KB

<< 直前のページへ戻る
 

■相振り革命最先端

< | No.0752 | >

トップページ > 棋書ミシュラン! > 相振り革命最先端
相振り革命最先端
zoom
マイコミ将棋BOOKS
相振り革命最先端
[総合評価] A

難易度:★★★★☆

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
有段〜高段向き

この本をAmazonで見る

【著 者】 杉本昌隆
【出版社】 毎日コミュニケーションズ
発行:2008年6月 ISBN:978-4-8399-2878-0
定価:1,470円(5%税込) 240ページ/19cm


【本の内容】
第1章 現代相振りの基礎知識   12p
第2章 後手三間5五歩・5四銀型 〔便宜上先後逆〕
・対金無双編
 (1)▲5六銀(▲4七金の保留は?)
 (2)▲4七金(無難に)
 まとめ
・対美濃編
 (1)△3五歩▲9六歩…(後手がおとなしく指した場合)
 ├1.▲6六歩△1四歩▲6八飛(スキは大きいが一気にリードを狙う)
 ├2.▲6六歩△4五歩(重要な一手)
 └3.▲5八飛(慎重な一手)
 (2)△2六歩(△3五歩を保留)
 まとめ
・対矢倉編
 (1)△6三金(7筋歩交換に乗じて矢倉に組み、△7四歩を打つ)
 ├1.△5二銀(後手受ける展開は?)
 └2.△4五歩(後手の最善)
 (2)△6三金(矢倉に組み、△7四歩を打たない)
 まとめ
60p
第3章 先手中飛車
VS向かい飛車・三間飛車
(▲中飛車穴熊)
・先手中飛車VS向かい飛車
 (1)▲5五歩(5筋歩交換が利くか?)
 (2)▲4八玉(持久戦志向)
 ├1.2筋歩交換後△2二飛
 │ ├1.△4三銀▲8六歩△6四歩(8筋の歩を伸ばす)
 │ └2.△4三銀▲8六歩△2四角(プロの実戦)
 ├2.2筋歩交換後△2四飛
 └3.2筋歩交換後△2五飛
   ├a.▲6六歩
   └b.▲7五歩
 まとめ
・▲中飛車VS三間飛車
 (1)△7二銀(後手は囲い優先)
 (2)△3五歩(後手は3筋歩交換優先)
 ├1.▲4六銀に△3二飛
 └2.▲4六銀に△4四歩(飛を引かない)
 (3)いきなり3筋歩交換には?
 まとめ
66p
第4章 後手△3五歩保留三間 ・後手△3五歩保留三間 自玉美濃編〔便宜上先後逆〕
 (1)▲8五桂に△1三香
 (2)▲8五桂に△1六歩
 (3)▲8五桂に△8四歩
 (4)後手の▲8五桂対策
 (5)▲7五歩保留から穴熊
 (6)後手低い陣形なら?
 まとめ
16p
第5章 ▲6七銀保留向かい飛車  (1)後手一目散穴熊の場合
 (2)△7二金と警戒
 (3)△3五歩保留をあきらめ急戦策
 ├1.△3四飛〜▲3八金
 ├2.△3四飛〜▲4六歩
 └3.△4二銀
   ├a.▲8四歩から継ぎ歩が利くか?
   ├b.▲3八金から収める
   └c.▲4六歩から金矢倉を目指す
 まとめ
 (4)追記・対△3五歩保留型穴熊に対する藤井流の新構想
46p
第6章 感覚を磨く次の一手 ・次の一手問題=10問 22p

・【コラム】(1)買って下さい (2)研究の成果? (3)眠り続ける題材 (4)魅せる将棋

◆内容紹介(MYCOMホームページより)
本書は本格派振り飛車党の実力者、杉本昌隆七段による相振り飛車の戦術書です。前半は先手向かい飛車に対して、後手が三間飛車や中飛車で対抗する指し方を紹介してあります。後半では△3五歩保留三間や▲6七銀保留向かい飛車など、最先端の研究を惜しみなく披露してあります。
 振り飛車党にとって相振り飛車は、決して避けては通れない道です。細かなポイントを稼ぎ、作戦勝ちから勝利する楽しみを味わってほしいと思います。


【レビュー】
相振飛車の定跡書。「相振り革命シリーズ」の4作め。

もはや何でもあり」(p11)──現代の相振飛車は、この言葉に代表されるだろう。もともと相振飛車は玉型の自由度が高く、30年以上前から一部でさまざまな工夫がされていたのだが、現在ではこの思想が相振飛車全体に広がっている。

最近の傾向は、
 ・(一時は主流戦法になっていた)△向飛車が減少、△三間飛車が復活。ただし△3四歩止めの工夫あり
 ・後手は先手と似た陣形に組むのを避ける傾向
 ・最新のオープニングは「▲7六歩△3四歩▲6六歩△3二飛▲7七角△6二玉▲8六歩」。


前書きに「今回はあえて特殊な戦型をクローズアップしてみた。」とあるように、本書では、比較的目新しい作戦や、プロの最先端レベルの作戦を解説している。その分、汎用性はやや下がった感じになっている。

第1章は最新の相振飛車事情。昔(相振り革命(1995))からの時代の流れ、現代相振飛車の思想と流行について、など。相振飛車を指す人は、少なくともこの章だけは読んでおいたほうが良いと思う。

第2章〜第5章は具体的な戦法解説になるが、もはや言葉だけではどんな作戦か説明しづらくなっているので、図面を用いて説明していこう。
第2章 基本図
第2章 後手の成功例

【第2章・後手三間5五歩・5四銀型】

最新のオープニングとされる▲7六歩△3四歩▲6六歩△3二飛▲7七角△6二玉▲8六歩からスタート。そして△3五歩▲7八銀△7二銀▲6七銀△4二銀▲8八飛△5四歩▲8五歩△5三銀で【第2章 基本図】。

ここから先手がどういう玉型を指向するかによって展開が変わってくるが、【第2章 後手の成功例】のような形になれば作戦勝ち。5五の位を取り、5五歩の下に銀を持ってきて、玉型は高美濃にするのがポイント。持久戦で5五の位が取れれば相居飛車でも作戦勝ちになることが多く、理に適った作戦だ。

第3章 ▲中飛車vs△向飛車
【第3章・先手中飛車】

何が何でも中飛車という現代の中飛車党は、先手なら初手は当然▲5六歩。相振飛車では中飛車は少し損とされているが、そんなのお構いなしで中飛車を指したい人も多い。前作『相振り革命3』では先手中飛車対策が書かれていたが、本書では▲中飛車視点で書かれている。

▲7六歩を急がず、▲6八銀を優先する。▲5五歩も急がない。「▲5七銀型」を作るのを最優先とし、角の活用は後から。これは相振飛車の中では先手中飛車特有の作戦で、独特の感覚である。

対△向飛車では、あわてて先攻したり乱戦にしたりせず、低く穴熊に囲うのが有力(左図)。手が広いのでここからは難しいが、あとは後手の玉型に応じて攻める場所を変えていけばよい。

対△三間飛車も基本は同じ。ただし、早めに△3六歩と突っかけてくる場合があるので、そのときは左銀を▲4六銀として対応する。

第4章・△3五歩保留三間
【第4章・△3五歩保留三間】

第2章の三間+5筋位取りも有力だったが、本章ではさらに欲張って(?)「△3五歩保留(△3四歩止め)+5筋位取り+高美濃」を目指す。〔左図〕がその一例。

△3四歩止めにしていることで、3筋への攻撃力は乏しいが、5筋位取りの効果で「△4四角型」が組みやすくなっており、さらに△4四角の利きが端へ直通しているので(△3四歩止めの効果)△3三桂〜△2五桂で端への集中攻撃が実現しやすい。

第5章・▲6七銀保留向かい飛車
【第5章・▲6七銀保留向かい飛車】

後手の「△3五歩保留」対策の「▲6七銀保留」。これが最先端の駆け引きだ。」(p18)

普通、後手が三間飛車にしてくるなら、十字飛車対策で▲6七銀型を早めに作る必要があるが、△3五歩保留型なら▲6七銀を急ぐ必要がない。それなら銀を後回しにし、▲8八飛〜▲6八銀として速攻が望める。特に後手が穴熊なら狙い撃ちが可能。「保留できる手はとことん後回し」(p173)の思想は相振飛車でも当てはまる。

オープニングは第2章と同じ。第2章では後手が△3五歩を決め、そこから5筋位取りを目指したが、本章では(1)後手一目散穴熊の場合、(2)△7二金と警戒、(3)△3五歩保留をあきらめ急戦策、の3つのパターンが解説されている。



第6章は次の一手問題。本編(第2章〜第5章)の補足と、杉本の実戦からの出題。

個人的には、今回は最新事情すぎて、あまりついていけない感じがした。理解はできるのだが、「この戦型、わたしの実戦に現れるかなぁ…」というのが正直なところ。出版から9ヶ月経ってしまった現在、いや、出版時点ではすでに“最先端”ではないのかもしれないけれど。ただ、いつもどおりにいろいろな作戦を提示し、指してだけでなく思想も交えた解説は非常にうれしい。

そろそろ相振飛車の実戦集がほしいなぁ…もちろん解説は杉本先生で。(2009Mar05)


【他の方のレビュー】(外部リンク)
沖縄ではたらく将棋好きのアメブロ
キラリっ娘のそよ風日記(記事の一部)
Amazon.co.jp: カスタマーレビュー
ものぐさ将棋観戦ブログ
ビーケーワン




【関連書籍】
 5.『
相振りレボリューション』,2010
 4.『
相振り革命最先端』,2008(本頁)
 3.『
相振り革命(3)』,2005
 2.『
新相振り革命』,2000
 1.『
相振り革命』,1995
[ジャンル] 
相振飛車
[シリーズ] マイコミ将棋BOOKS
[著者] 
杉本昌隆
[発行年] 
2008年

< | >

トップページ > 棋書ミシュラン! > 相振り革命最先端


Copyright(C) 1999-2024 【将棋 棋書ミシュラン!】 All Right Reserved