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マイコミ将棋BOOKS ライバルに勝つ最新定跡 |
[総合評価] B 難易度:★★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:B 有段者向き |
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【著 者】 村山慈明 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2010年9月 | ISBN:978-4-8399-3698-3 | |||
定価:1,470円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
定跡最前線の解説書。 「終盤は村山に訊け」は、故・村山聖九段が存命のときに言われた言葉。難解な終盤でも村山に訊けばたちどころに答える様を表しており、いまや伝説である。現在では「序盤は村山に訊け」と言われ、プロの定跡最先端は村山に訊けば分かる、というもの。その村山が本書の著者である。 本書は、プロの最先端で現在流行している戦型を解説した本であり、村山の最前線本としては3冊目になる。(過去の2冊は『アマの知らない最新定跡』(2008.12),『最新戦法必勝ガイド』(2006.11))前作までと比べて、図面の配置がかなり悪化しており、ページを繰り戻す回数が多くなったのは残念なところ。 本書で解説されているテーマ局面は、タイトル戦でも何度か登場しており、プロ将棋をまめにウォッチしている人にとっては、何度も見たことがある局面が多いと思う。第4章の石田流(稲葉新手)については、プロ高段での実戦はまだあまりないと思うが、これから出てくるかもしれない。 ほとんどの章のテーマ局面は、相当奥の深いところからスタートしており、ごく一部の高段者や定跡通同士の対局を除けば、アマの実戦で同一局面になることはほとんどないだろう。解説も全体的に、思想や考え方よりも、徹底的な読みや研究を元に書かれているので、本書を読んで実力アップはあまり期待できない。それよりも、ここ1〜2年の「プロ将棋観戦ガイド」として使うのがよいと思う。 各章の内容を図面とチャートを添えて解説していこう。 第1章は△ゴキゲン中飛車vs▲3七銀型急戦。最近の本では『遠山流中飛車急戦ガイド』(遠山雄亮,MYCOM,2010.07)の第5章と同じテーマ。『遠山流〜』では、後手がさっさと美濃囲いに囲う変化にページが割かれていたが、本書では後手が早めに左銀を活用する変化も多く書かれている。 第2章は△ゴキゲン中飛車vs▲5八金右超急戦。ゴキゲン中飛車の急戦の中でも最も華々しい変化で、タイトル戦や高段者の重要な対局でもしばしば現れる。『遠山流〜』の第6章では▲7五角が消えた理由を詳しく書いていたが、本書ではスルー。『遠山流〜』で最新形とされて少しだけ触れられていた△2七角以降の変化に絞って、かなり詳しく書かれている。また、現在の最重要課題はチャート末尾の「菅井新手△7二玉」(実際は関東の奨励会員がかなり以前から指摘していたそうだ)。 第3章は▲ゴキゲン中飛車。この章も『遠山流〜』第2章と似たテーマである。特に深浦新手△2四角の周辺を詳しく解説。 第4章は▲石田流・稲葉新手。7手目に▲7四歩と仕掛けた後(ここまでは鈴木式と同じ)、▲5八玉と上がるという、いままでになかった構想だ。直接的には▲7四飛と走ったときの△6五角が両取りになるのを防いでいる。単行本では、『先崎学のすぐわかる現代将棋』(先崎学,北尾まどか,日本放送出版協会,2010.07)のp124〜127で簡単に触れられているくらいで、詳しく解説されるのは初めて。(2010Sep27追記:この戦型に早くも新手が現れた。2010/09/22のA級順位戦 久保vs渡辺で、先手は9手目に▲4八玉!『先崎の〜』では「▲4八玉とは上がれない」とされている。週刊将棋2010年9月29日号によれば、「▲4八玉は奨励会員の研究テーマ」だそうで、わたしも9/24の夜に将棋倶楽部24の最高段で▲4八玉が指されるのを見た。) 第5章は横歩取り△8五飛vs▲新山ア流。先手がコンパクトな構えから速攻を見せる。一時は△8五飛を絶滅寸前にまで追いやったが、スペシャリストたちのがんばりによって現在でも均衡を保っている。本章では、基本図から(1)△7四歩(2)△8六歩の二択以下の攻防を解説。 第6章は横歩取り△8五飛vs▲5八玉型。以前からある▲5八玉型は、金開きに構えてじっくり駒を使っていくタイプだったが、本章で解説されている形はちょっと違う。右の金銀を動かさず、ヒネリ飛車風に飛車先逆襲を狙っていく作戦だ。これはアマにも使いこなしやすいのではないだろうか? 第7章は同型角換わり腰掛銀。何十年も前から指されている戦型だが、いまだに結論は出ていない。だが、少なくとも『羽生の頭脳 7 角換わり最前線』(羽生善治,日本将棋連盟,1993)のころとは歩の突き捨ての順番が変わってきている。先手が後手の変化球を避けるために手順が変わったわけだが、自戦記p184で突き捨ての順について「世に伊那さんあり(42173あり)」という語呂合わせが書かれている。また、ちょっと前によく指されていた2筋交換後の▲2六飛が消えた理由については、自戦記p185で渡辺新手の紹介とともに書かれている。基本図の60手までが定跡だというのだからすごい。 第8章は△一手損角換わりvs▲早繰り銀。直近では『佐藤康光の一手損角換わり』(佐藤康光,MYCOM,2010.08)との比較になる。基本図は同じ。『佐藤康光の〜』ではあっさりしていた▲7九玉の変化について深入りしているところが大きく違う。 深浦の最前線三部作(※1)に比べると、より最先端で専門性が高い分、逆に1〜2年もしないうちに賞味期限が切れてしまう(=流行が他に移ってしまい、本書のテーマ局面が現れなくなる)可能性は高い。読むならお早めに。 ※1 深浦の最前線三部作 『これが最前線だ!最新定跡完全ガイド』(深浦康市,河出書房新社,1999.04), 『最前線物語』(深浦康市,浅川書房,2003.09), 『最前線物語(2)』(深浦康市,浅川書房,2006.08) 2010年夏の王位戦(深浦vs広瀬)で何度も戦われた四間穴熊は、1作目の『これが〜』にテーマ図として載っており、見慣れない作戦かと思われた「振飛車の左銀と居飛車の守りの桂が交換になる」のも載っていた。 ※誤植等 p140 ×「第5図以下の指し手」 ○「第5図以下の指し手A」 p147 ×「▲4五桂には△6九飛が…」 ○「▲4五桂には△4九飛が…」 |
【関連書籍】 |
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