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将棋最強ブックス 最新版 勝てる石田流 |
[総合評価] B 難易度:★★★ 〜★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 中級〜上級向き |
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【著 者】 鈴木大介 | ||||
【出版社】 創元社 | ||||
発行:2011年1月 | ISBN:978-4-422-75133-7 | |||
定価:1,365円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 | |
▲石田流の定跡書。 「石田流は、角道を止めて石田流本組に組めれば面白く戦える戦法だが、4手目△8四歩〜△8五歩と飛先を伸ばされると升田式石田流(角交換型)にするしかなく、千日手になりやすくて、先手番としてはつまらない」──と思われていた時期がある。それが、7手目に▲7四歩と仕掛ける「鈴木式・新早石田」の開発により、石田流に新しい風が吹き込まれ、さらに続々と序盤の新手法が登場している。 その鈴木式を詳しくまとめたのが、前著『決定版 石田流新定跡』(鈴木大介,創元社,2005)だった。鈴木はこの作戦を引っさげて棋聖戦五番勝負に挑み、先手番の2局で鈴木式を採用。一時は優位を築いたが、佐藤の腕力の前に敗れた。 しかし鈴木式そのものが潰れたわけではなく、いまだ進化を続けている。また、旧来の升田式にも新手法が現れている。本書は、石田流の最前線の一部を詳しく解説した定跡書である。 各章の内容をチャートを交えながら見ていこう。 第1章は、「石田流の基本」として、▲6六歩と角道を止めた場合を解説。3手目▲7五歩の石田流では、4手目△8四歩以外なら先手は▲6六歩と角道を止めて、石田流本組に組むことができる(もちろん、角道を止めずに戦うことも可能)。角道を止めた場合の居飛車の作戦のうち、本章では棒金・右四間飛車・銀冠・居飛車穴熊の4つを紹介している。なお、右四間以外は『石田流の極意』(鈴木大介,MYCOM,2006)で解説しているためか、「おさらい」という扱いになっており、「だいたいこんな感じで戦えばOKですよ」という解説になっている。 ちょっとよく分からないのは、「C:銀冠への対策」で、後手の作戦がまだ右四間の含みがある段階で▲6八銀と上がっていること。「B:右四間飛車への対策」では、▲7九銀のままで待機しているので、整合性が取れない。 また、「A:棒金への対策」では、『石田流の極意』で解説した▲7九銀待機型ではない。△8三金に▲7八飛さえ覚えておけば、左銀が上がっても戦えるということだろうか? 第2章は、▲7四歩早仕掛け型。後手居飛車が△8四歩〜△8五歩と飛先を伸ばし、石田流本組を牽制した手に対し、7手目に▲7四歩と仕掛けるというもの。本章のメインは、▲7四歩に△同歩▲同飛の鈴木式で、従来の▲5五角に替えて▲7七角と打つのが眼目の一手。(わたしが知る限りでは)単行本初登場の順になる。 ▲7七角に対して最善とされる変化(下図の枝の一番深いところ)では、「△3三金+△7三金」という、この将棋以外では見たこともないような形になる。知らなければまず指せないだろう。 一方、本章のサブとして▲7四歩に△同歩▲5八玉の稲葉新手も解説。単行本では『相振りレボリューション』(杉本昌隆,MYCOM,2010.11)に続いて4冊目の登場となる。過去の本と比べて、そんなに詳しいわけではないが、本筋となる変化は多少違っている。 第3章はいわゆる升田式石田流。角道オープンのまま玉を移動させ、△4五角の筋がなくなったところで▲7六飛と浮く。後手はそれから角道を止められたのでは、何のために序盤に飛先を突き越したのか分からないので、角交換してくる将棋になる。 升田式では、近年は▲7七銀型から▲8六歩△同歩▲同飛と動く筋が開発されているが、本書ではその変化はなし。本章でメインとなっているのは里見新手▲4六角(2010年6月21日、NHK杯、▲里見香奈vs△小林裕士)。本書では、「里見新手は有力であるが、正しく対応されると先手苦しい」という結論だが、さらにその先として「▲5六歩を先に入れておけばかなり有力な筋となる」とある。升田式を指す人は必読だろう。 なお、升田式の基本となる「“角道オープン+飛先受けず”のままで玉の移動が成立する理由」についてはほとんど触れていないので、他書を参考にすべし。 第4章は、4手目角交換で、石田流を阻止する形。以前は「序盤早々に後手から角交換(手損)して良いわけがない」と一蹴されていたが、一手損角換わりの台頭と石田流の猛威により、見直されている。本章p192第5図などは、タイトル戦でも出た形(2010年2月5日、棋王戦第1局、▲久保vs△佐藤康)である。 焦点は9手目で、▲3八銀と美濃囲いを目指して突っ張るか、▲3八金で隙をなくして穏健策を採るか。『佐藤康光の石田流破り』(佐藤康光,日本将棋連盟発行,MYCOM販売,2010.04)では▲3八銀が本線で、▲3八金はサラッと流されていた。本書では、「▲3八銀から久保vs佐藤の変化はやや突っ張りすぎだが、▲7七桂の新発想で戦える」「▲3八金も先手が十分やれる、ただし違う将棋になる」という感じになっている。 なお、近年現れた序盤の手法のうち、本書に載っていないのは以下の通り。
これらについては、またいずれ別の本で解説されるだろう。 |