基本図まで
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲3四飛△3三角▲3六飛△2二銀▲8七歩△8五飛▲2六飛△4一玉で基本図。このあと、後手は中原囲いにして右桂を跳ねるのはどの戦型でもほとんど同じ。先手の対策がたくさんあり、どの変化にも対応しなければならないという苦悩はあるが、組むまでが覚えやすいというのは、四間飛車と似た特徴である。 |
テーマ1 ▲9六角の変化
基本図から▲3三角成△同桂▲9六角(左図)。本章では、このあと△6五飛▲6六歩△6四飛▲6五歩△8四飛▲6三角成△5二金となり、▲6三馬の引き場所として(1)▲3六馬
(2)▲9六馬を解説。一応▲2七馬もあるのだが、ほぼスルー。
横歩取り△8五飛にするために、最初に乗り越えるべき関門であるが、超基本であるためか『横歩取り△8五飛戦法』(中座真,日本将棋連盟,2001)と『8五飛を指してみる本』(森下卓,河出書房新社,2001)くらいにしか載っていない。プロの実戦例は3局で、後手の全勝だが、高橋の見解は「先手良しと言われているものの、実際に指してみれば意外にいい勝負かもしれない。」(p21)とのこと。確かに、参考棋譜1を見る限り、先手もやれそうに思える。先手が知識勝負を避け、乱戦から手将棋にしたければ、これもありだと思う。 |
テーマ2 中住まい▲3八金型(1)
基本図から▲5八玉△6二銀▲3八金△5一金▲4八銀△7四歩▲3六歩△2五歩(左図)。▲3七桂とされる前に△2五歩から動くのがポイント。後手の右桂を活用する前に戦いになるので、プロでは実戦例が少なめだが、後手の勝率は高い。右の桂香は“エサ”と見ることもできるのではないだろうか? |
テーマ3 中住まい▲3八金型(2)
基本図から▲5八玉△6二銀▲3八金△5一金▲4八銀△7四歩▲3六歩△7三桂▲3七桂(左図)。右桂を跳ね合う、最も基礎的な形。先手でこの構えを好む棋士も多い。▲7七角型の新しい形も解説。 |
テーマ4 3筋突き越し型
基本図から▲5八玉△6二銀▲3八銀△5一金▲3六歩△7四歩▲3五歩(左図)。▲3八銀-▲4九金-▲5八玉型から▲3五歩と突き出す。後手の選択肢は(1)△同飛
(2)△7三桂の2つ。(1)の△同飛は両取りを承知で激戦に飛び込む変化で、2004年ごろにかなり流行した。以下▲3三角成△同桂▲4六角△2五歩▲1六飛△3四飛▲3五歩で、さらに次の3つに分岐する。
(1)△4四飛:森内vs羽生の名人戦第2局(2004)で、「森内は▲7四歩を知っていた、羽生は知らなかった」
(2)△5四飛:羽生vs高橋(2004)の▲6六角が決定版で、以降の公式戦からは消滅。
(3)△6四飛:本筋の感じがなく、2004年以降敬遠されている。 |
テーマ5 中住まい▲4八金型
基本図から▲5八玉△6二銀▲3八銀△5一金▲3六歩△7四歩▲3七桂△7三桂▲4八金(左図)。▲3八銀-▲4八金-▲5八玉型がポイント。金開き(▲3八金型)よりも金銀の連結がいい。△4六桂の筋が甘いので、後手の攻め方は△8六歩に絞られる。▲3八金型との顕著な違いはp71を参照。本書執筆中に現れた最新形の紹介はp79を参照。 |
テーマ6 ▲6八玉型
基本図から▲6八玉△6二銀▲3八銀△5一金▲3六歩△7四歩▲3七桂△7三桂▲4六歩(左図)。▲3八銀-▲4九金-▲6八玉型で安定感がある。反面、左銀が▲6八銀とできないので、5七の地点を強化しにくい。後手の攻め筋は△7五歩
or △5五飛(松尾新手)。△5五飛は角交換後の分岐が5つあるが、本章では高橋が一番指したいという△7五歩のみを解説。谷川vs丸山の名人戦第7局(2001)で現れた、△4五桂捨て〜△4六角の筋といえば分かるだろうか? |
テーマ7 居玉速攻型
基本図から▲4八銀△6二銀▲3六歩△5一金▲3七桂(左図)。いわゆる「新山ア流」で、対△8五飛戦法のエース。先手は玉の囲いを最小限で済ませて速攻する。後手は右桂の活用が間に合わない。一時期、△8五飛を絶滅危惧種に追い込んだ張本人。△7四歩▲3五歩△4四角に(1)▲3六飛
(2)▲7七角 (3)▲6六角と分岐する。(1)▲3六飛は△8五飛の成否にかかわる重要変化で、高橋もこの対策を見つけたことで「私自身……再び愛用者の一人に復活したのだった。」(p108) |
テーマ8 角交換桂跳ね型
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲3四飛△3三角▲3六飛△2二銀、ここで変化して▲5八玉△4一玉▲8七歩△8五歩▲3三角成△同桂▲7七桂(左図)。いわゆる佐藤流角交換▲7七桂型で、かなり新しい部類に入る形。(すみません、別の形と勘違いしていたようです。この形はそんなに新しい形ではありません。本書では参考棋譜(18)で高橋九段が唯一先手を持った形として取り上げられており、2003年3月の実戦が解説されています。(2010Nov28追記))▲5八玉と居玉を避けただけで、右の金銀を動かさない簡素な構えで、角交換して▲7七桂と跳ね、△8五飛の行き先を問う。 |
テーマ9 ▲8七歩保留型
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲3四飛△3三角▲3六飛△2二銀、ここで変化して▲5八玉△4一玉▲3八金(左図)。いわゆる(広い意味での)山ア流で、▲8七歩を打たない。△8五飛戦法は、基本的に▲8七歩を打たれてから△8五飛とするので、「△8五飛自体を阻止する」というコンセプトだ。分岐は(1)△6二銀
(2)△5一金 (3)△8四飛の3つ。『横歩取り道場
第一巻 8五飛阻止』(所司和晴,MYCOM,2002)に詳しく書かれている。現在は超急戦対策ができている感じで、プロの実戦にはあまり現れないが、アマが対応するのは大変かも。先手の攻め方が分かりやすい。 |
テーマ10 横歩取りひねり飛車型
初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲3四飛△3三角▲3六飛△2二銀、ここで変化して▲9六歩△4一玉▲7五歩(左図)。清水女流がやたらと採用するひねり飛車型。先手勝率がかなり高いが、それは後手が飛車交換に応じた(▲7五歩に△3六飛)ときの戦績が先手の7勝1敗のため。飛車交換に応じず、持久戦になればいい勝負。 |