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SATO Yasumitsu's SHOGI 佐藤康光の一手損角換わり |
[総合評価] B 難易度:★★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 有段向き |
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【著 者】 佐藤康光 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2010年8月 | ISBN:978-4-8399-3640-2 | |||
定価:1,575円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||
・参考棋譜9局=9p |
【レビュー】 |
一手損角換わりの指南書。 一手損角換わりが世に出てから数年が経過した。振飛車模様の展開もあって、もう一つの戦法ではくくれない大きなうねりとなっているが、初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△3二金▲7八金△8四歩▲2五歩△8八角成と進めば、居飛車系の一手損角換わり。本書ではこの序盤が基本となっている。 居飛車系の戦型としては、「先手が手損をとがめようと早く仕掛ける早繰り銀と棒銀」と、「やや持久戦模様に展開する▲右玉と腰掛銀」に大別される。本書では、相居飛車系の一手損角換わりの4戦型について、佐藤康光の見解と実戦解説を行っていく。 各章の内容をチャートと図面で見てみよう。 第1章は早繰り銀と棒銀の講座。…が始まる前に、冒頭4pで「△一手損角換わりの誕生の背景、現状、各戦型のポイント」がまとめられている。第2章はその2戦型の実戦編で、講座どおりに進む将棋もあれば、講座の補完となっているものもある。 第3章は右玉と腰掛銀。持久戦調ということでまとめられているが、基本的には性質の違う将棋だ。第4章は右玉と腰掛銀の実戦解説。 以前の右玉はやや消極的なイメージがあったが、一手損角換わりの登場で変化があった。序盤に早く▲1六歩と突くと、手損している後手としては△1四歩と突き返しにくい。それで▲1五歩と1筋の位が取れるため、右玉にすると玉がかなり広くなり、また端攻めも受けにくいという主張だ。 腰掛銀は、正調角換わりとは△8四歩と△8五歩が違うだけだが、まったく違う将棋になる。△8五桂の余地が残っているため、▲7五歩と桂頭を攻める手が利かないためだ。 「定跡書」ではなく「指南書」と書いたのは、本書で扱っている変化にあまり大きな広がりがなく、「狭く、ある程度深く」となっているため。チャートを見れば分かる通り、基本図からの分岐は定跡書としてはかなり少ない。 これは、佐藤が現在気にしているテーマについて記したものだからと思われる。たとえば、対早繰り銀編では最終盤まで調べている変化がある一方で、1〜2年前にはタイトル戦でも指されていた△5五角▲3七歩△3六歩▲5六歩の変化はサラッと流して終わっている。一手損角換わりに対してある程度の知識を持っていて、かつ流行にもついていこうとしている人には有用かもしれないが、それ以外の人にはちょっと使いづらいかも。 同シリーズの『佐藤康光の石田流破り』(2010.04)と比べても、「これは実戦で使ってみよう」という形が今回は少なかった。一手損角換わり自体がプロ的な戦型なので仕方ないのかもしれないが…。(2010Sep11) ※2010Sep28追記:第2章実戦編p67参考図にて、「▲5五銀もある。(中略)△1五角と打ち、▲2六歩に△2四角が一例だ。」と、この変化が有力であることが示唆されている。しかし、本書の発売後の2010/09/23に放映された第18期銀河戦決勝、丸山vs佐藤康戦にて、この変化は否定された。週刊将棋2010年9月29日号24面によれば、△1五角に▲1六歩△3七銀▲同桂△同歩成▲1八飛△2六角▲2七歩△3八と▲2六歩△2七金▲7九玉△1八金▲同香△6五桂▲8八玉!△7七桂成▲同桂で先手優勢。先手玉が3八とから遠ざかったのが大きい。(丸山は、銀河戦では▲7九玉で▲6六銀上とし、敗れた。収録5日後の王将戦・対木村戦では、同一局面に誘導して勝利。) |