最強将棋21 最前線物語(2) |
[総合評価] S 難易度:★★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)S(量)S レイアウト:B 解説:A 読みやすさ:B 有段〜高段向け |
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【著 者】 深浦康市 | ||||
【出版社】 浅川書房 | ||||
発行:2006年8月 | ISBN:4-86137-014-0 | |||
定価:1,470円(5%税込) | 227ページ/19cm |
【本の内容】 | |||||||||||||||||||||||||||||
・あとがき、と言いつつ加筆する最前線について=4p |
【レビュー】 |
総合定跡書。「この形がタイトル戦に出る!」が基本コンセプトの「最前線シリーズ」3冊目で、完全書き下ろし。タイトルに「2」とあるが、最初に『これが最前線だ!』があるため3冊目になる。 藤井システムと横歩取り△8五飛でほとんど埋め尽くされていた前著から、選ばれた戦型はまたも大きく様変わり。最近のプロ将棋の移り変わりの速さを感じさせる。今回の特徴は、力戦系振り飛車(相振飛車を含む)の隆盛と進化がひとつ。これは比較的自然な流れだったが、もうひとつ、かなり大きな新テーマが「手損戦法」の出現だ。「手損はヨクナイ、大勢に遅れる」の考え方から「手損しても形で得をすることがある」というブレイクスルーが起こった。1980年代から1990年代にかけて、「飛車先保留」の出現で矢倉や角換わりが大きく変わったことがあったが、その再来を予感する。「手損の得」は戦型だけでなく、部分的な手筋としてもしばしば見かけるようになった。 基本的な構成はシリーズ共通。各テーマの冒頭1ページで、テーマ図の説明、背景、考え方、思想、現在の傾向と対策などをひとまとめにし、解説ページでは基本変化と実戦例、考え方や今後の展望など。レイアウトも基本的に同じ。前著には見開きの左端に図ごとの短評があったが、今回は削除された(1冊目と同じスタイルに戻った)。 前著の内容は、東大将棋ブックスの「四間飛車道場シリーズ」「横歩取り道場シリーズ」などで深い変化がフォローされている部分もあったが、最近のように戦法の広がりが大きく進化が速くなってくると、もはや一冊の定跡書としてまとまらない可能性が高い。本書を読んで、どんな形で来られても驚かないようにしておきたいものである。 率直に言って、「狭く深く、変化重視」の『将棋定跡最先端』シリーズよりも、「思想・考え方重視」の本シリーズの方がずっと読みたい本である。考え方がガラリと変わりつつある近年では、特にそう思う。 ちなみに、さっき週刊将棋に載っている棋譜を並べていたら、さっそくテーマ4図が登場していた。タイトル戦だけでなく、プロ将棋ガイドとしてやっぱり必携の一冊である。(2006Oct26) |