zoom |
羽生の頭脳 7 角換わり最前線 |
[総合評価] A 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 読みやすさ:A 上級〜有段向け |
||
【著 者】 羽生善治 | ||||
【出版社】 日本将棋連盟 | ||||
発行:1993年9月 | ISBN:4-8197-0316-1 | |||
定価:971円 | 222ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||
|
【レビュー】 |
角換わりの定跡書。 第1章は先手棒銀。1970年代〜80年代には盛んに指されており、初級者向けの棒銀解説本にもよく出てくる戦型だ。少し前に出版された『角換わりガイド』(週刊将棋編,田中寅彦協力,MYCOM,1989.03)には後手の工夫がいろいろ書かれているが、本章では△5四角vs▲3八角にほぼ絞られている。 第2章は、「角換わり腰掛け銀の常識」とあるが、基本的には「後手が同形腰掛け銀を避ける工夫」について。第1部は基本図にいたるまで、第2部は△4四歩と突かずに争点を作らないように指した場合、第3部は後手が右金を動かすタイミングの工夫、第4部は△7四歩と突かずに桂頭の弱点を作らないように指した場合。 第3章は、2011年現在でもトッププロの間で重要なテーマになっている同形腰掛け銀。ただしこの当時は富岡流などはなく、1筋の突き捨てから▲1二歩△同香▲1一角の筋が開発されたころである。本章では、先手が歩を突き捨てていく順番が3種類あり、 (1)4-3-2筋の歩を突く順、 (2)4-3-7-2筋の歩を突く順、 (3)4-3-1-7-2筋の歩を突く順、 が順番に述べられている。(※なお、この順番は現代(2011年現在)では少し変化していて、「4-2-1-7-3筋の順番(「世に伊那さんあり」)で突いたほうが紛れが少ない」とされている) 第4章は後手棒銀。同形が苦しく感じた後手が腰掛銀を避け、先手に一方的に攻められるのを防ぐ目的で指され始めた。当初は「先手の棒銀でさえ攻め切るのは難しいのに、1手遅い後手で攻めになるのか?」と考えられていたが、意外に有力策。先手は▲2六歩型で早く▲4六歩を突いてしまうため、早繰り銀型が作れず、反撃が遅い。 第1部は後手棒銀のオーソドックスな例、第2部は△3二金を省略してその一手を端攻めに向ける作戦。第3部は3手目▲7八金で、△3二金省略型を拒否することができる。3手目▲7八金はp195で強力プッシュされており、一時期は注目を浴びた。(※4) 純正角換わりの定跡書は少ないので、まずは本書が候補の一つとなるだろう。ただし、角換わり三兄弟の「早繰り銀」が載っていないし、先手棒銀編はほとんど△5四角型に絞られているので、角換わりの基礎から幅広く学びたい人は『角換わりガイド』の方が個人的にはオススメ。 ところで本書の表紙。羽生さんの眼鏡が、ほっぺに食い込みすぎだと思いませんか?(笑)(2002ct11,2011Mar09大幅改訂(チャート等)) ※腰掛銀の基本である木村定跡についてはサラッと流されている。「木村定跡は▲必勝」が有段者の常識なので、実戦に木村定跡型が出ることはまずないと思うが、実際にその局面に遭遇したときに「あなたは勝ちきれますか?」と言われると自信がない。『過去の定跡書に詳しく紹介されている』らしいのだが、どの定跡書だろうか? ※4 ^ 3手目▲7八金については、『高田流新戦略3手目7八金』(高田尚平,MYCOM,2002.08)が詳しい。 |