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■よくわかる四間飛車

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よくわかる四間飛車
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マイナビ将棋BOOKS
よくわかる四間飛車
[総合評価] A

難易度:★★
  〜★★★☆

図面:見開き4〜5枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
初級〜上級向き

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【著 者】 藤倉勇樹
【出版社】 マイナビ
発行:2011年11月 ISBN:978-4-8399-4094-2
定価:1,470円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
序章 簡単な心構え   8p
第1章 対棒銀基本編   20p
第2章 対急戦 ・先手四間飛車対急戦
・後手四間飛車対急戦
62p
第3章 対右四間飛車   44p
第4章 対左美濃   26p
第5章 対居飛車穴熊 ・後手四間飛車対居飛車穴熊
・先手四間飛車対居飛車穴熊
30p
第6章 実戦型次の一手 (計7問) 16p

・【ワンポイントアドバイス】対急戦の心構え/端攻めの対応/舟囲いの金に注目/居玉棒銀について

◆内容紹介
よくわかるシリーズ第6弾!! 四間飛車でさばいて勝とう!
初段を目指す人に向けて、いろいろな戦型を解説する「よくわかるシリーズ」。その第6弾は四間飛車で、著者は藤倉勇樹四段です。
振り飛車を指してみたいと思ったら、まずは基本となる四間飛車から始めるのがお勧めです。振り飛車を指す上での心構えから、美濃囲いの特長や急戦の受け方、そして左美濃や居飛車穴熊との戦い方について、図面や表を用いて解説しています。
居飛車の手に乗り、飛車角をさばいて一手勝つ。振り飛車の極意をしっかり学んで、実戦で試してみてください。


【レビュー】
四間飛車全般を分かりやすく解説した本。

プロでは激減した四間飛車だが、覚えやすく、実戦的に勝ちやすい戦法であることは歴史が証明している。居飛車党の目がゴキゲン中飛車や石田流に向いている現在、四間飛車を得意戦法にしてみるのもいいだろう。ただ、最近は級位者でも理解できるように四間飛車を解説した本はあまりなかった。

本書は、級位者から低段までに対応している四間飛車本である。特に居玉棒銀、単純舟囲い棒銀、右四間飛車に悩んでいる人は要チェック


各章の内容をチャートを添えながら紹介していこう。なお、本書は易しめの本ではあるが、四間飛車が後手の場合でも先後はそのまま表記されている。


序章は、四間飛車を指す上での心構えと、各章の内容の紹介。四間飛車の鉄則といえる点について、太字で書かれている。

 ・「相手の銀を五段目に出させたらまずい」(p9)
 ・「攻められた筋に飛車を回る」(p10)


また、美濃囲いの発展の仕方について、p13にまとめの表がある。美濃囲いは、3〜5筋の歩を突いて立体的にしたり、高美濃〜銀冠への建て替えなど発展性があるが、どの手も一長一短があり、なかなか難しい。本章では、美濃囲いを発展させる手の長所と短所をまとめた表と、(著者の私見で)各手の攻めと守りを点数化した表が添えられているのが◎で、藤倉の単独初著作『相振り飛車 基本のキ』(藤倉勇樹,MYCOM,2007)を髣髴とさせる。


第1章は、居飛車の速攻棒銀の対処法。居玉棒銀と、舟囲い棒銀の2本立て。p206のコラムによれば、級位者(下位)では居玉棒銀が非常に多いのだそうだ。上級位になると、舟囲い(▲7九銀型の最も簡素なもの)での棒銀が急増する。いずれも本格棒銀に比べれば対処は易しいが、コツを知らないと上手くいかない。

初段を目指そうという人は、この2戦法を撃破しなくてはならないので、本章を繰り返し読み込もう。居玉棒銀が載っている棋書は少なく(『インターネットで将棋を勝て!』(ネット駒音/編著,双葉社,2000)くらいしか記憶にない)、舟囲い棒銀はさらに少ないので、これらに悩まされている人は必読だ。

本章で学べるコツは、下記の通り。振飛車の基本的な狙いや捌きが凝縮されている。

〔本章で学べる内容の例〕
 ・相手の仕掛けを引き付けて角道ポン(▲6五歩)
 ・▲4六角で飛のコビンを狙う
 ・▲6四歩で自分の飛先を軽くする
 ・歩のぶつかった筋に飛を振る
 ・飛先の突き捨て(△8六歩)は、相手にせず攻め合いにできるか考える
 ・自陣に有効な打ち込み場所がなければ、飛角交換は恐れない




第2章は、▲5七銀左(△5三銀左)急戦の対処法。先手四間飛車での△左6四銀、△6五歩早仕掛けと、後手四間飛車での▲山田流3五歩(△1二香型)、▲棒銀の4本立て。

▲5七銀左急戦対策には、振飛車のエッセンスである「最後は美濃囲いのアドバンテージで勝つ」が詰まっている。本書でもページ数が多めに取られているが、かなり細かく研究が進んでおり、場合によっては詰みまで解析されている。急戦の本は非常にたくさん出ているので、細かい部分は他書を見ることにして、本章では勝ち方の感覚をつかむのがよい。

〔本章で学べる内容の例〕
 ・舟囲い崩し: 一段飛車+〔▲2四桂〜▲2三角〕
 ・美濃崩し: △2四香
 ・△1一香を取る価値
 ・▲9五角(幽霊角)
 ・飛角交換に応じる条件: △4一金型+▲4六角の筋がある
 ・舟囲い△4二金型崩し: ▲2六桂
 ・挟撃必至のかけ方


5七銀左急戦は、左4六銀、早仕掛け、山田流▲3五歩、山田流▲9七角、棒銀、鷺宮流などたくさんあるが、居飛車がどの形を選ぶかは、振飛車の待ち方(△3二銀型/△4三銀型、△1二香、△5四歩、△6四歩など)と密接な関係がある。特に級位者ではこの関係を理解できていない場合が多いので、序章のように一覧表にしてあるとよかった。



第3章は、右四間対策で、▲四間飛車vs△右四間飛車。右四間は初心から高段まで使える戦法で、特に級位から低段では今も昔も猛威を振るっており、四間飛車使いは対策必須だ。四間側からの仕掛けがほとんどなく、仕掛けの権利が常に右四間側にあるのが大きい。右四間からの仕掛けはほぼ一つだけ(△8五桂〜△6五歩)なので、どのタイミング(玉型)で仕掛けるかがポイント。四間側としては、反撃を見越した陣形で待つ必要があり、序盤の駒組みが大事。

〔本章で学べる内容の例〕
 ・「右四間飛車に対しては、仕掛けを見せられたときの待ち方が一つのポイント」(p108)
 ・「先手は▲6七銀型を作っておけばすぐにつぶされる心配はありません」(p109)
 ・「△7三桂に▲5六銀と上がるのが大事なタイミング」(p110)
 ・美濃崩し: 端攻め〜△2四桂
 ・銀冠崩し: ▲4六角(馬)の設置〜▲2五歩(※序盤で▲4五歩としてスペースを確保しておく)


右四間対策の視点で書かれた本は少なく、コンセプトが近い『ホントに勝てる四間飛車』(先崎学,河出書房新社,2002)にも右四間対策は載っていないため、本書のキーといってもよい章である。



第4章は、▲四間飛車vs△左美濃。天守閣美濃からの急戦、四枚美濃、銀冠(米長玉)の3本立て。

左美濃(特に天守閣美濃)に対しては、下図のように▲3九玉型にしておくのが最大のポイント。中盤以降にいつでも玉頭攻めができるようにし、自玉は当たりを避けておく。流れ弾に当たらないように、5筋の歩は突かないこと。また、四枚美濃に対しては、▲4五歩と位を取ることを常に意識しておく。

わたしも以前に左美濃を得意にしていた時期があるが、この形が優秀でやらなくなった。自玉(左美濃)だけ終盤になってしまうことが多いのだ。四間側としては、▲2八玉と上がるタイミングは、(1)左美濃の可能性がなくなってから (2)△7四歩で急戦が見えたら(代わりに▲4七金でもOK) (3)米長玉への組み替えを見たら、の3点。

終盤は、常に▲2五歩を狙っていく。これだけでかなり勝負になる。また、本書では出てこないが、▲3五歩のコビン攻めも相当有力。少し古い本だが、『佐藤康光の寄せの急所 囲いの急所』(佐藤康光,日本放送出版協会,1995)に分かりやすく書かれている。


第5章は、対居飛車穴熊。△四間飛車では浮き飛車作戦、▲四間飛車では鈴木システムの2本立て。本書では藤井システムは推奨されていない。なお、先手でも浮き飛車は使えそうだが、手詰まりで千日手になるおそれがある。後手で鈴木システムは普通に使えると思う。(『島ノート 振り飛車編』(島朗,講談社,2002)では、鈴木システムはすべて後手で解説されている)

〔本章で学べる内容の例〕
 ・角道を開けるタイミング
 ・△3九角〜△5七角成と角を切って4筋突破
 ・浮き飛車からの捌き方
 ・鈴木システムで▲5七銀と引くタイミング






よくわかるシリーズ」は、本によっては「プロ将棋観戦ガイド」的な難易度のものもあるが、本書はシリーズの中ではかなり易しい方で、級位者〜低段者が実戦で勝てるようになることを強く意識した内容になっている。特に第1章の急攻棒銀対策と、第3章の右四間対策は大いに参考になるだろう。

なお、本書をマスターできたら、次に読むのは『四間飛車の急所(1) 進化の謎を解く』(藤井猛,浅川書房,2003)がオススメ。ゆっくり進みたい人は、『ホントに勝てる四間飛車』(先崎学,河出書房新社,2002)が同様のコンセプトなので、復習しながら読んでみるとよい。(2011Dec06)

※誤字・誤植等(初版第1刷で確認):
p63棋譜 △「△8六歩▲同歩△8六飛」 ○「△8六歩▲同歩△同飛」



【関連書籍】

[ジャンル] 
四間飛車総合
[シリーズ] 
マイコミ将棋BOOKS よくわかるシリーズ
[著者] 
藤倉勇樹
[発行年] 
2011年

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