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マイコミ将棋BOOKS よくわかる中飛車 |
[総合評価] B 難易度:★★★ 〜★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 中級〜有段向き |
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【著 者】 藤倉勇樹 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2010年12月 | ISBN:978-4-8399-3765-2 | |||
定価:1,470円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||
・【コラム】真部一男九段の思い出 |
【レビュー】 |
ゴキゲン中飛車系(基本的に角道を止めない中飛車)の総合指南書。 本書の内容について、p6にこのように書いてある。 「この本は(中略)5級から初段を目指す方を対象に、角道を止めない中飛車について解説してあります。」 「よくわかる中飛車ということで、難しいことは書かず、「わかりやすい」をテーマに構想を練りました。」 また、各節には次のような難易度表示がしてある。 ★1 かなり易しい。(4〜5級) ★2 まだまだ易しい。(3〜4級) ★3 ちょっと難解。(2級〜3級) ★4 ぐっと難解。(1級〜初段) ★5 有段者向け。(本書にはなし) ということで、「級位者向けの本」…のはずなのだが……。 まずは各章の内容をチャートを添えて紹介していこう。 第1章は▲5六歩から始まる▲中飛車。「対棒銀」は後手の居玉棒銀で、道場3級どうしの対局から取材とのこと。確かに級位者は玉の囲いもそこそこに攻めてくることが多い。また△6三銀-△4三金と構えて5筋突破を防ごうとするのは、有段者(二段〜三段くらい)の実戦でもよく見かける光景だ。左銀も繰り出していく形と違い、この形は居飛車が消極的で作戦負けになりやすいが、プロはあまり指さないため、実際に咎めるとなると記述してある本は少ない。 この章は、確かに級位者でも分かるような戦型を多くセレクトしていると思う。 第2章は△ゴキゲン中飛車。この10年間、プロでもガンガン戦われている戦型であり、出てくる戦型はいずれもプロの実戦で磨き抜かれたものなので、この章はハッキリ言って級位者向けではない。つまり、互いにかなりレベルの高い知識を持っていないと、本章の戦型にはたどり着かないのである。特に、「超急戦▲5八金右」で最後の△5三香や△2七角まで達するのは、かなりアンテナの感度が良い人だ。 ただ、「現在プロで戦われている戦型を、なるべく易しく解説した」という側面はある。プロのゴキゲン中飛車がよく分からない人は、本章を紐解いてみるのがいいだろう。 第3章は▲中飛車での相振飛車。相振飛車は飛車の位置が左であるほど良いという考え方があるため、「中飛車には相振飛車で対抗」という戦型も結構多い。本章では、互いの囲いは現在の相振飛車戦では基本とされている美濃囲いに限定し、相振飛車戦でも▲中飛車側が十分に戦える例を示している。対三間飛車と対向飛車では、飛を他の筋へ転回させる例と、5筋にこだわって戦う例を紹介。また、本書のわずか1ヶ月前に発売された『相振りレボリューション』(杉本昌隆,MYCOM,2010.11)で単行本初登場となった「東大流左穴熊中飛車」についても解説されている。 第3章については、「だいたいこんな感じで戦いましょう」という解説になっており、もともとの対象棋力と合致している。 著者の前作『相振り飛車 基本のキ』(藤倉勇樹,MYCOM,2007.09)では、相振飛車の戦い方を不慣れな人にも分かるように解説していて良かった。本書でも解説の質は分かりやすくてよいと思うが、もともと設定している対象棋力と実際に解説している戦型の差異が大きく、また章によってもバラツキがあるのが残念。 また、チャートを見ると分かるが、テーマとなる盤面を見るためにかなりページを戻る場合がある。いっそのこと、各節で新しくテーマ図を立ててしまったほうが読みやすかったのではないだろうか。他にも、重要なフレーズをゴシック体や囲みで強調したりするなど、レイアウト上の工夫を施せば、もっと読みやすくなって級位者でも理解しやすくなったかもしれない。 あと、創元社の棋書などでおなじみの「復習問題」は、対象棋力を考えればあってもよいが、本文のどこを参照すればよいかを書いてほしかった。 総括すると、「編集上の工夫でもっと良くなったはずの惜しい本」という感じだった。 個人的には以下の3冊を読んだ方が満足度が高いんじゃないかと思うが、 ・『遠山流中飛車持久戦ガイド』(遠山雄亮,MYCOM,2009.11) ・『遠山流中飛車急戦ガイド』(遠山雄亮,MYCOM,2010.07) ・『相振り中飛車で攻めつぶす本』(鈴木大介,浅川書房,2010.06) 1冊で済ませたい、または今までの知識を整理したいなら選択肢に入れたい。(2011Jan20) ※誤植・誤字等(初版第1刷で確認) p122 ×「△5五歩 ▲4五銀 △同歩 (第17図)」 ○「△5五歩 ▲4五銀 △同銀 ▲同歩 (第17図)」 p160 ×「基本図以下の指し手B」 ○「基本図以下の指し手C」 p161 「△5六歩では△6二玉から持久戦にする指し方もあり、後述します。」→後述されていない。なお、2筋交換される前の▲5八金右に△6二玉はp166から解説されている。 |