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最強将棋21 相振り中飛車で攻めつぶす本 |
[総合評価] A 難易度:★★★☆ 〜★★★★ 見開き2問(天地逆) 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 上級〜有段者向き |
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【著 者】 鈴木大介 | ||||
【出版社】 浅川書房 | ||||
発行:2010年6月 | ISBN:978-4-86137-028-1 | |||
定価:1,575円(5%税込) | 240ページ/19cm |
【本の内容】 | |||||||||||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
相振飛車(▲中飛車)の次の一手問題集。レイアウトは「指しこな形式」。 ▲中飛車は有力な戦法である。かなり主導権を握りやすく、分かりやすい攻め筋がいくつかあり、またさまざまに変化できるので居飛車の対応が追いついていない感じがある。居飛車との戦い方は、前作『パワー中飛車で攻めつぶす本』(鈴木大介,浅川書房,2009.12)などで述べられてきた。 一方、「中飛車は相振飛車に弱い」というのが定説だった。相振飛車の飛の位置は2筋(8筋)に近いほど良いとされ、中飛車ではうまく戦えないと言われていた。序盤で▲7七角と上がってからでないと左銀を動かしにくく、駒組みの差し手争いで遅れを取って面白くないとされていたのだ。 本書では“不急の一手”▲7七角を省略する手法を紹介。具体的には▲5六歩△3四歩▲5八飛△3二飛▲6八銀が要所。銀を先に使うことで、相振り中飛車の序盤が生まれ変わった。 p139「相振り中飛車は、@▲5六歩〜▲5八飛(5筋)、A▲6八銀〜▲5七銀(左銀)、B▲7六歩(角桂)の3つの要素から成り立つ戦法です。このうち最も難しいのは、左銀の(5七銀の次の)動きを決めるタイミングです。」 |
基本的に@〜Bはいつも同じ。そのあと、5七銀をどこに動かすか(▲6六銀/▲5六銀/▲4六銀)が本書のポイントとなる。はっきり言って、今までの常識とはかなり違っている。これまで「形」で▲5六銀と上がっていた人は、必ず一読しておく必要がある。 各章の内容を具体的に説明していこう。 第1章〜第4章は、▲中飛車に対して最も有力とされる△三間飛車。 第1章は、「もし角交換してきたら?」がテーマ。先手にとってありがたい手だが、アマではかなりありそうな展開だ。初手から▲5六歩△3四歩▲5八飛△3二飛▲6八銀△3五歩▲5七銀△6二玉▲7六歩△8八角成▲同飛△7二玉▲8六歩が第1章基本図。向飛車+斜め棒銀にするのがポイント。 (1)△美濃囲い (2)△金無双 第2章は、角交換してこない場合で、早めに△3五歩を突いてきた場合。「早めの△3五歩には▲4六銀」(p24)がコツだ。 (1)△3六歩から一歩交換 (2)△3四飛〜△7四飛のゆさぶり (3)△8八角成の角交換 (4)△1四歩の様子見 (4)は著者が公式戦で指された手で、かなりプロ的な進行になる。p27のように、局面の評価を言語化しているのは◎。 第3章は、△3五歩を保留された場合。p68▲6六銀が基本図となる。 (1)△3五歩 (2)△4三銀 (3)△4三金 (4)基本図以前に△6四歩 以前は▲5六銀と好形に上がるのが普通で、重そうな▲6六銀は違和感がある。しかし飛先が軽くなっており、一歩交換すれば銀は自由になる。 第4章は、△三間飛車側の最善策。p100第1図の「△3五歩も△4四歩も(△6四歩も)保留した形」が後手の最善。先手の動きを見てから手を決めようというもので、いかにも現代的だ。対して、先手は銀の態度を決めずに穴熊に潜るのが本章の主旨。p108から (1)△3五歩 (2)△2四歩 (3)△4五歩 に分岐。 ・p101解答の「好手が浮かばない!」にはビックリ。 ・p101の図は必見! ・p108「(穴熊で)4八の地点に余計な駒を置かない方がよい」「▲4八金左と上がるくらいなら離れ駒のまま4九にいたほうがマシ」は以下にも現代感覚。その意味は本編で明らかになる。 第5章〜第7章は△三間飛車以外の相振飛車。 第5章は△向飛車。対△三間飛車と序盤は同じでよい。 (1)後手、角道を止める (2)後手、角道を止めない 向飛車は相振りの作戦としては有力であるが、速攻しづらい戦法なので、▲中飛車にとっては割と楽に戦えるようだ。 第6章は、相中飛車の打開。いわゆる「相見せ槍銀」(『5五の龍』に登場)の打開だ。アマではかなり登場しやすい戦型だと思う。『5五の龍』では穴熊に潜り、3筋に飛を転回することで打開したが、まったく同型に囲われると打開できなかった。本章では8筋に飛を回って打開する。 章タイトルの「鏡を壊す中座飛車」は、8筋歩交換後に▲8五飛とすれば、後手は2筋歩交換後に△2五飛とできないので、同型が崩れるということ。なお、章末p209には相見せ槍銀以外の相中飛車についてアドバイスがある。 第7章は、対四間飛車。案外難敵で、先手も戦い方(特に玉の囲い方と左銀の使い方)を変える必要がある。「△3三角〜△4四銀型を作られたら作戦負け、阻止できたら作戦勝ち」である。先手は▲5六銀型にして、4筋歩交換をけん制する。交換してきたら▲4五歩で飛を閉じ込める意味である。さらに、王手で歩交換されないように、そして4筋が厚くなるように玉の囲いも工夫する。右図がそれで、まるで急戦矢倉の後手番のようだ。 わたし自身はあまり▲中飛車を指さないのだが、後手を持つことはよくある。▲中飛車に対しては割と漫然と指していたが、本書に載っていたのは知らないことだらけで、目から鱗がボロボロ落ちた。少なくとも、本書の内容を知っていないと後手番を持てない気がした。 相振り中飛車はアマでは必須課題。同じ内容の棋書も今のところないので(少なくともわたしは読んでいません)、必読だと思う。(2010Jul13) ※「ココセがひどい」と一部で話題に上がっていたが、そんなに多いわけではない。「狙い筋を分かりやすく示している」という好印象のほうが強かったが、どうだろう? 一応、ココセと思われる箇所を挙げておく。 ・p41 △7一桂はココセ? 最後に壁になってしまっている。 ・p110 手がないとはいえ、△2四歩〜△2五歩はココセ?p115で▲5五桂の金銀両取りから▲2三銀(飛角両取り)を打たれてしまっている。 ・p104 穴熊を明示した先手に対し、△4四歩(p104)がココセ?穴熊への速攻をなくしてしまっているような。第4章はp108から分岐するので、そもそもp104がココセだったら少し困る。 ※p117解答14図から△6五歩は?角が引けば△4五歩(銀桂両取り)、▲同桂は△6四銀▲8八角△6五銀…で銀は死なず、先手が困っているような。 |