第1章 石田流の入り口
・3手目▲7八飛はダメ
・4手目はほぼ5通り
当HPには「もうコワくない!早石田」というページがあり、4手目を網羅的に研究しようとしたが、途中で挫折。orz
そのページでは有力手を10種類にまとめたが、プロ的には次の5通りだそうだ。
(1)△8四歩 → 互いに突っ張る展開。急戦か、升田式石田流になりやすい。
(2)△4二玉 → 持久戦志向。第6章参照。先手が5手目▲7八飛と突っ張ると乱戦定跡になる。
(3)△6二銀 → 持久戦志向。
(4)△5四歩 → 持久戦&相振飛車志向。居飛車では後手が作戦負けしやすい。第6章参照。
(5)△8八角成
・△4五角問題について
角交換から△4五角(角の両成り)について、どう対策できるか。久保の勝率イメージ付き。(※1)
本章に限ったことではないが、解説の指し手の途中で「手の意味」が入るのが久保ユニークだと思った。
(例)
p16「▲6八飛(△4五角を避けながら振り飛車にする意味)」
p17「▲3八銀(▲3八金なら無難だが、できれば形よく銀を立ちたい)」
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第2章 升田式石田流の基礎知識
角道を開けたまま、飛先を受けずに悠然と玉を美濃囲いに収め、飛を浮くのがご存知「升田式石田流」。本章では升田式独特の攻め筋を分類して紹介していく。
p22〜 升田式の序盤
・第1の筋:王手飛車の定跡
多くの奇襲本に載っているが、後手が最善の抵抗をした場合を幾通りも触れているのは◎。
・後手が飛先の歩を交換できるタイミングはあるか?
・第2の筋:角交換から▲8八飛とぶつける
・第3の筋:隙があれば▲3六飛と玉頭の歩を取りにいく
p34〜 ▲7七桂型
・第4の筋:▲7七桂型から▲8五桂と歩を取る
・第5の筋:▲7七桂型から▲9六角で歩を取りにいく
p46〜 ▲7七銀型
・▲7七銀型の狙いその1:▲5五銀で後手の駒組みを牽制
・▲7七銀型の狙いその2:▲8六歩
後手の対策ができてしまっているとのこと。
p55〜 升田式最新版
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第3章 早石田定跡
古来から「ハメ手」とされているが、難しい点もある。升田式、鈴木流、久保流の基礎となる。
p65〜 早石田の再検証
早石田が載っている本は10冊以上読んだはずだが、▲7四飛に△6四銀の変化で▲8四飛や▲2二銀という手は知らなかった。
p70〜 久保流の概説
早石田と同様に仕掛けるが、一気に攻めるのではなく、歩交換できれば満足。詳しくは第5章を参照。
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第4章 鈴木流急戦
居玉のまま仕掛けるのが鈴木流。本章については、『最新版 勝てる石田流』(鈴木大介,創元社,2011.01)の第2章が詳しい。新手▲7七角は、本書では章末の1pのみ。少し古い変化については『決定版
石田流新定跡』(鈴木大介,創元社,2005.01)の第1章を読むと良い。
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第5章 久保流急戦
▲4八玉としてから▲7四歩と仕掛けるのは早石田と同じだが、久保流は「歩交換できれば一歩手持ちで飛車が軽いので良し」という考え方。
p89〜 久保流のねらい
ここの部分は第3章と内容がほぼ重なっている。
p95〜 久保新手▲7五飛
2009年2月28日の久保vs佐藤康(棋王戦第2局)で登場。その年の「升田幸三賞」(新手を称える賞)も受賞しているが、当時騒がれた「△7四歩に▲4五飛」はすでに潰れているらしく、その経緯が書いてある。ただし、「△7四歩に▲同飛」はまだ研究課題として残っており、久保流は終わっていない。
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第6章 その他の石田流
・△棒金
先手の対策は基本的に▲7九銀型。対棒金の▲7七桂型は森内新手△3三銀(2001)で消滅。本節では△8三金に▲7八飛の久保新手がメイン。(この変化は『石田流の極意』(鈴木大介,MYCOM,2006.10)の第2章が詳しい)
・△左美濃(銀冠も含む)
棒金がないのを見て、先手の左銀が上がっている形。△4二玉型左美濃からの急戦と、後手が銀冠に組もうと△2三銀とした瞬間に▲6五歩と仕掛ける手筋と、持久戦(▲ダイヤモンド美濃)を解説。
・△居飛車穴熊
▲7七角と上がっておき、△1二香の瞬間に角交換を挑むのが急所。
・4手目△5四歩
近年では相振飛車志向の手だが、以前は居飛車が多かった。本節では相振りは取り扱わず、△居飛車の場合のみ解説する。急戦は第1章と重複部分が多い。持久戦ではほぼ先手良しとなり、4手目△5四歩からの居飛車はほとんどなくなっている。
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第7章 後手の石田流
・4手目△3五歩からの石田流
▲4六歩〜▲4七銀なら後手も指せる。
▲5六歩だと後手苦しい。
▲5六歩に3・4・3戦法で対抗すれば、ダメではないが作戦的に損をしている感じ。
▲2五歩△3二飛▲6八玉でも後手不満。
∴4手目△3五歩からの石田流はあまり面白くない。
・2手目△3二飛戦法
3手目▲2六歩
3手目▲9六歩
3手目▲7七角
基本的な内容は『2手目の革新 3二飛戦法』(長岡裕也,MYCOM,2008.08)を参照するとよいが、▲9五歩と端を突き越されたときに左銀を引き付けて穴熊に組み替えるのは大いに参考になる。先手が簡単に良くなることはなく、△3二飛はまだ現役とのこと。
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第8章 最新の石田流
初手から▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩の局面で、▲7四歩△同歩▲同飛と行くのが第4章の鈴木流。これも有力だが、全体的になかなか難しいため、7手目の局面でいろいろな変化球が試されている。
・久保新手▲7四歩△同歩▲4八玉
2010年9月22日の久保vs渡辺(A級)で公式戦初登場。単行本でちゃんと解説されるのは本書が初めて(『相振りレボリューション』(杉本昌隆,MYCOM,2010.11)では少しだけ触れられている)。第5章の久保流での「△6二銀〜△7二金」の形を嫌ったもので、△4五角対策はちゃんとある。
・稲葉新手▲7四歩△同歩▲5八玉
本書では本文中の解説のみ。久保は「▲5八玉型は相掛かり感覚」(p189)ということで好みではないらしく、指していないとのこと。
・菅井流▲7六飛
2010年11月25日の菅井vs谷川(王位戦)で登場。この手自体は江戸時代からあるが、時代がループして再登場した。本節では菅井vs谷川戦の中盤の修正手順まで触れてあり、「▲7六飛に対し、△8八角成▲同銀△4五角とする変化なら先手も十分指せる」(p200)とのこと。角交換だけして△4五角を打たないのも考えられるが、仮に後手が角交換しても良くならないとなれば、後手が飛先を伸ばしてきても先手は石田流本組に組めることになる?!
そうすると、石田流本組を嫌うなら4手目角交換しかなくなるかもしれない。
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