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振り飛車の真髄(2) 石田流の極意 〜先手番の最強戦法 |
[総合評価] B 難易度:★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)B(量)A レイアウト:A 解説:B 読みやすさ:A 中級〜上級向き |
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【著 者】 鈴木大介 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2006年10月 | ISBN:4-8399-2182-2 | |||
定価:1,449円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
▲石田流の定跡書。 鈴木は、2004年に創元社から『決定版 石田流新定跡』(以下『創元社本』)という、やはり▲石田流の本を出している。基本的には、本書と創元社本のスタンスは同じで、次のような感じ。 (1)△8四歩〜△8五歩なら、升田式石田流ではなく鈴木新手で戦え (2)そのほかの手なら、▲6六歩と止めて石田本組で十分 本書の方が創元社本よりも少しだけ級位者向けの解説になっている(さすがに「初級者向け」とは思えないが…。「初級者」の定義が違うのかもしれない)。そのため、プロ的な指し方よりも理解しやすい変化を選んでいたり、後手にややヌルい手を指させたりしている箇所があったりする。 各章ごとに、創元社本との違いを見ていこう。 第1章は△8五歩早突き対策。初手から▲7六歩△3四歩▲7五歩△8四歩▲7八飛△8五歩から、鈴木新手▲7四歩で戦うのは同じ。ただし、創元社本では以下△7四同歩▲同飛△8八角成▲同銀△6五角が本線だが、本書では△9二角が推奨手で、△6五角はさらっと流されている。△9二角は、次に△7四角と飛車を取れば△6五角の変化と同じだが、他に△7三歩と△8六歩があり、違う変化になる。鈴木新手をマスターしたければ、両方読む必要がある。 第2章は対棒金。創元社本では、△7六飛と浮いたらすぐに▲6七銀型を作ることを推奨しているが、本書では▲7九銀-▲5八金型で、▲6七金と上がる久保流棒金対策を推奨。もちろん、棒金の可能性が消えるまで、▲7七桂を保留する(飛を引く余地を残す)のは共通だ。これもどちらも有力視されているので、どちらがいいということはない。 第3章は対左美濃。創元社本では触れなかった形だ。本書では、ここでも▲7九銀-▲5八金型。 第4章は対居飛穴。創元社本ではダイヤモンド美濃が不満なので、組まれる前に▲7七角から動く展開だった。本書もダイヤモンド美濃が不満なのは同じだが、▲7八金型を作って速攻をかける順が推奨されている。ただ、第3章(左美濃編)のp121で「△9四歩は絶対に必要な一手」とされているのに、本章では後手が△9四歩を突かない形を咎めての快勝劇になっている。「穴熊は囲いに手が掛かるので、なかなか△9四歩は突けないケースも多い」(p151)とあるが、右金を保留すれば突けるのでは…。 第5章はその他の有力な石田対策。創元社本にはない。本書では、角交換には▲6八飛から組む。右四間には▲7六飛-▲7七桂型で受ける。そしてプロでかなり有力な銀冠には、ダイヤモンド美濃で組む。右四間編にかなり期待していたのだが、△6一金型ではなかったので少し残念だった…。(※将棋部のKさんが得意な戦法で、△6一金を動かさない形にはかなり苦労しています) 以上のように、創元社本と本書では載っている変化がかなり異なる。どちらを選ぶかは好みだろう。読みやすさは本書の方が少し上か。実戦でやられそうな戦法は一通り載っているのもよい。余裕があれば、両方読んだ方が勉強になるだろう。わたしの場合は、いまのところ本書を参考にすることが結構多い。 石田流は、中盤は本に載っているのと似て非なる形になることが多いので、基本的な変化を知ったあとは、ひたすら棋譜並べと実戦を積むのがよいと思う。(2007Aug21) |