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マイナビ将棋BOOKS すぐ勝てる!先手中飛車 |
[総合評価] B 難易度:★★★ 〜★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 中級〜上級向き |
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【著 者】 佐々木慎 | ||||
【出版社】 マイナビ | ||||
発行:2012年7月 | ISBN:978-4-8399-4401-8 | |||
定価:1,575円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||
・参考棋譜=4p |
【レビュー】 |
▲中飛車の戦法指南書。 ▲中飛車は、現在非常に勝ちやすい戦法の一つといえる。その理由は、指し手が分かりやすいこと、攻勢をとりやすいこと、居飛穴に組まれにくいことなどが挙げられる。また、石田流と違って飛車の自由度が高く、複数の場所で戦うことができるのも大きいだろう。半面、四間飛車や三間飛車と比べて玉型が薄いので、バランスを考えた指し回しが求められる。 本書は、そういった▲中飛車を分かりやすく解説した本である。 ▲中飛車を分かりやすく解説した本といえば、すぐに思い出すのが『パワー中飛車で攻めつぶす本』(鈴木大介,浅川書房,2009.12)だ。特に、対居飛車の内容は、本書とかなり似ている。どちらが良いかは難しいが、あえて言えば「勇気が湧いてくるのが鈴木本、コツをたくさん教えてくれるのが佐々木本」という感じだろうか(異論は認めます)。 また、本書第4章と同様に▲中飛車での対相振飛車を記した本は、『相振り中飛車で攻めつぶす本』(鈴木大介,浅川書房,2010.06)がある。鈴木本では、▲5六歩〜▲5八飛〜▲6八銀〜▲5七銀のスタートで、銀を先に使っていた。本書では、▲5六歩〜▲5八飛〜▲7六歩〜▲5五歩と角道を開けて5筋の位を取るのが基本になる。これは、△向飛車と△三間飛車のどちらに対しても同じだ。どちらが良いかは好みの問題だ。 各章の内容を、チャートを添えて紹介していこう。鈴木本と違いが大きい場所は随時コメントを添える。 第1章は、対2手目△8四歩+5筋位取り拒否型。「矢倉でも角換わりでも何でも来い」の純粋居飛車党に多い形だ。この戦型では、角交換と一歩交換、または銀交換が2つできれば、ほぼ先手優勢と考えてよい。 第2節 1筋を突き合えば、後手は居飛穴にはしにくい。それでも居飛穴にしてくる場合、一歩交換して即端攻めが面白い構想。 第3節 後手が居飛穴模様のときの4筋攻撃(p56〜)が特徴的。気分は藤井システムだ。 第5節 先手中飛車と同じ序盤から升田流向飛車にすることができる。本節では狙いだけを紹介しており、後手の対応はやや緩い。詳しく知りたい人は、専門書(『高崎一生の最強向かい飛車』(ア一生,MYCOM,2010)など)を参照のこと。ただし、升田流向飛車はあくまでも変化球であり、あえて指す必要は特にない。 第2章は、対2手目△8四歩+5筋位取り型。▲中飛車にとって理想的な展開であり、このように指してくれる居飛車党は少ないだろう。後手からの急戦は、先後の差が大きく上手くいかない。 後手の居飛穴に対しては、先手も相穴熊で対抗するのが現代的。▲4六銀〜▲3八飛の袖飛車で局面をリードする。3筋の歩を銀で交換して、▲2六銀と引くのが眼目の一手。▲2五銀から3四を狙ったり、1筋攻めをすることができる。 第3章は、対2手目△3四歩。アマではほとんどがこの形だろう。後手は飛先を保留して、陣形を整備することを優先する。 一番多そうな展開が、第3節の「5筋の位を取らせて、△6三銀型で5筋を受け止め、左銀で位の逆襲を狙う」という形。個人的には5筋位取りでの△6三銀型は後手の作戦負けモードだと思っているが、先手は具体的な方針を知っていないとこの形に自信が持てなくなる。本章では、5筋の位にこだわりすぎず、木村美濃で戦うことを推奨。「木村美濃+▲6八銀-5九金型」も考慮に入れておきたい。 第4章は、相振り飛車。冒頭で述べたとおり、本書では、▲5六歩〜▲5八飛〜▲7六歩〜▲5五歩と角道を開けて5筋の位を取るのが基本。 鈴木流の▲5六歩〜▲5八飛〜▲6八銀〜▲5七銀(角道を開けるのを保留)は「やや受身になりやすい」(p151)として、本書ではあまり推奨されていない。また、『新ゴキゲン中飛車戦法』(近藤正和,日本将棋連盟,2003)では「中飛車は相振りに向いていないので、別の筋に振り直したほうが良い」と書かれていたが、本書では5筋位取りで十分戦えるとのことで、実戦編の第4局(vs土佐戦)でも序盤の作戦勝ちから圧勝した棋譜が解説されている。 第5章の自戦記は、中終盤の形勢に差がついたところまで。投了までの総譜は、「参考棋譜」として章末にまとめて掲載されている。 ▲中飛車は、『パワー中飛車で攻めつぶす本』を入門として、本書を併せて読めば、かなり理解が深まるし、自分の得意戦法としても十分使えると思う。さらにいろいろな文献を見たい方は、▲中飛車の本一覧をどうぞ。(2012Sep12) ※誤字・誤植など(初版第1刷で確認): 特に見つかりませんでした。 |