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マイナビ将棋BOOKS よくわかる矢倉 |
[総合評価] A 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 上級〜有段向き |
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【著 者】 金井恒太 | ||||
【出版社】 マイナビ | ||||
発行:2012年6月 | ISBN:978-4-8399-4327-1 | |||
定価:1,470円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | |||||||||||||||
・【コラム】 新たな可能性(羽生新手) |
【レビュー】 |
矢倉の定跡書。 金井は、前作『対急戦矢倉必勝ガイド』(MYCOM,2010.08)で代表的な急戦矢倉について解説した。そして、本書では持久戦系のいわゆる「本格矢倉」について解説する。2冊を併せて読めば、現代矢倉の基本はバッチリだといえるだろう。 各章の内容をチャートを添えて紹介していこう。 第1章は、加藤流。▲4六銀型が全盛の現代において、加藤一二三九段が頑なに指し続けたことからその名がついた。加藤九段の場合は早めに▲2六歩を突いてくるが、〔加藤流基本図〕のように通常の飛先不突き矢倉からも合流できる。 〔図〕では△1四歩とは突きにくい。先手にスズメ刺し棒銀の形を採られてしまうからである。後手の選択肢は大きく分けて以下の3つ。 (1)△7三銀から攻め合う (2)△7五歩から歩交換 → 1歩持ち合い角対抗型になる (3)▲1五歩を甘受して△5三銀と専守防衛 第2章は、▲4六銀-3七桂型。現代矢倉の本流ど真ん中である。 いろいろな形が戦われてきたが、現在は基本的に後手は専守防衛策(右銀を△4二銀と引いて固める)を採る。ただし、完全に受け切りを目指すわけではなく、頃合いを見て反撃を試みるため、先手の仕掛け直前にどのような形で待てるかが課題になっている。本章での後手の選択肢は、大きく分けて以下の3つ。 (1)△7三角から△8五歩-△9四歩型 → 先手は穴熊から総攻撃 (2)△7三角から△8四歩-△9五歩型 → 宮田新手▲6五歩 (3)△6四角のまま△8五歩〜△4二銀(島本流) 本章の形については、本書の約1ヵ月後に出版された『最新定跡村山レポート』(村山慈明,マイナビ,2012.07)と重なる部分も多い。先に本書を読んでから村山本を読むと、より理解を深めやすいだろう。 第3章は、森下システム。〔森下システム基本図〕のように、右銀の動きを保留して、玉の囲いを急ぐのが特徴。後手の動きに合わせて、右銀の動きを決めていく硬軟自在の陣形だ。一時期、△スズメ刺しにより絶滅しかかっていたが、深浦流(p118〜)により復活を果たしている。 本章では大きく分けて以下の3つを解説している。 (1)森下システムの本領が発揮される戦い (2)△スズメ刺しvs▲深浦流 (3)△4三金右からのスズメ刺し模様 第4章は、藤井流矢倉。基本的に早囲いを目指している。通常の早囲いは、玉を早く囲いすぎるため、急戦矢倉に対して弱かったが、藤井流では▲2六歩と▲3七銀に2手かけることにより、後手に先に態度を決めさせるようになっている(△4四歩を突かせれば後手からの急戦は難しい)。 本書はプロの最前線で戦われている戦型の基本を解説したものであり、「よくわかるシリーズ」の中では難しい部類に入る。矢倉の理想攻撃形や手筋から解説したものではないため、矢倉初心者にはかなりしんどいだろう。すでに矢倉が好きで、プロの矢倉の棋譜をよく並べている人が頭を整理するには最適だと思う。(2012Sep05) ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p14 ×「銀ばざみを狙うのは」 ○「銀ばさみを狙うのは」 p26 ×「〜する順を調べてきましが」 ○「〜する順を調べてきましたが」 p57 ×「▲6八金引(参考図)進み」 ○「▲6八金引(参考図)と進み」 p78 ×「先手の次の手も難しい局面_で、」 ○「先手の次の手も難しい局面で」 (謎のアンダーバーがある(実際は縦書きなので左端の縦棒)) p138 ×「第1図以下の指し手A」 ○「第1図以下の指し手B」 p171 ×「再掲第6図以下の指し手A」 ○「再掲第6図以下の指し手B」 p186 ×「再掲第6図以下の指し手B」 ○「再掲第6図以下の指し手C」 |