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東大将棋ブックス 横歩取り道場 第三巻 4五角戦法 |
[総合評価] A 難易度:★★★★☆ 図面:見開き6枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:B 有段向き |
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【著 者】 所司和晴 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2002年11月 | ISBN:4-8399-0866-4 | |||
定価:1,200円 | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||||||
◆内容紹介(MYCOMホームページより) |
【レビュー】 |
横歩取り△4五角戦法の定跡書。 横歩取り△4五角戦法は、プロ的には「研究が終わった」戦法である。1980年代にプロアマ入り乱れて研究が進み、公式戦だけでなく、雑誌の指定局面戦などでも盛んに研究が行われたが、「後手無理筋」の結論が出され、以降プロの公式戦で指されることはなくなった。 しかしその後も△4五角は、アマ将棋で猛威を振るい続けている。たとえば、発足直後の将棋倶楽部24で行われていた指定局面戦では、有段者が入れ替わりながら戦っていたが、いい勝負だった(注:当時わたしはまだ有段者ではなく、参加資格はありませんでした…)。結論が出ていても、それをまとめきった本がなかったのである。 本書は、横歩取り△4五角戦法の研究を一冊にまとめた、集大成の一冊である。 各章の内容をチャートを交えながら簡単に紹介していこう。 第1章は、△4五角戦法基本図からの変化の概要。チャート(下図)にあるように、個別に章や節が立っている変化は本章では紹介のみにとどめ、それ以外の変化については少し詳しく書かれている。なお、第7章は「若島・佐々木流」と呼ばれる変化で、△4五角という手自体が出てこないが、これも△4五角戦法の一部として扱っている。 メイン変化である第2章は、「△4五角に▲2四飛△2三歩の交換を入れて▲7七角」。双方ともに最善を尽くしたとされる変化だ。内容は『横歩取りガイド』(週刊将棋/編,所司和晴/協力,MYCOM,1988)をベースに書かれている。結論自体に変更はないが、難解な部分の奥の方まで書かれていたり、候補手が数多く追加されていたりする。(※p222編集後記より抜粋「(著者の所司七段は)自分の著書『横歩取りガイド』を読み返し、細部にいたるまで変化をチェックし直したそうだが、調べてみるとまだまだ厄介な変化が多く、いくつも最善手を変更されたようだ。」) チャートを見れば分かるが、めまいがするほど長く、分岐も大量だ。将棋のある局面での合法手は平均80手などと言われるが、戦いのさなかに有力な手が12通りもあるというのは、この定跡くらいしか知らない。 第3章〜第5章の変化は、第2章に比べて、先手としては劣るとされる変化。『横歩取りガイド』には一切書かれていない。とは言っても、これらの変化もまったくダメという訳ではなく、研究の初期にはかなり踏み込んで検討された。『横歩取りは生きている』、『続 横歩取りは生きている 上巻』、『羽生の頭脳 10 最新の横歩取り戦法』には載っているので、チャートではこれらの本と比較しておく。 第6章は、△4五角に▲3五飛で、『定跡外伝2』(週刊将棋編,MYCOM,2002.07)のp220〜223で紹介された新手。「定跡外しの手」という位置づけだったが、本章ではもっと先まで詳しく書かれている。 第7章は、△2八歩を取らずに▲7七角と打つ「若島・佐々木流」。これもかなり有力なので、「△4五角はとにかく苦手だが、ごくたまにしか遭遇しない△4五角のために膨大な量の暗記をするのは嫌だ」という人は、この変化だけを覚えておいてもいいかもしれない。乱戦・激戦にはなるが、少なくとも「一方的に攻め込まれる」という展開にはならない。 本書は、変化の検討がほとんど完全に行われ、本当の意味での「決定版」となりうる珍しい例である。また、1手の予断も許さない厳しい分岐は、「東大将棋ブックス」が最も得意とするところであり、シリーズの中でも出色の出来といえると思う。出版から8年半が経過しても、本書の価値はほとんど下がっていない。 今後、△4五角戦法の新刊が出るとは考えにくいので、少なくとも横歩取り党の人は「保存版」として持っておくべき一冊である。(2011Mar19) ※〔横歩取り△4五角戦法の主要な本〕: 2011年3月現在 1981-02 横歩取りは生きている,沢田多喜男,将棋天国社 1988-07 横歩取りガイド,週刊将棋/編,所司和晴/協力,MYCOM 1988-10 続 横歩取りは生きている 上巻,沢田多喜男,将棋天国社 1990-09 横歩取りガイドII,所司和晴,週刊将棋/編,MYCOM 1994-12 羽生の頭脳 10 最新の横歩取り戦法,羽生善治,日本将棋連盟 2002-09 横歩取り道場 第三巻 4五角戦法,所司和晴,MYCOM (本書) |