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NHK将棋シリーズ 杉本昌隆の振り飛車ナビゲーション |
[総合評価] A 難易度:★★ 〜★★★ 図面:見開き3枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 初級〜中級向き |
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【著 者】 杉本昌隆 | ||||
【出版社】 日本放送出版協会 | ||||
発行:2009年1月 | ISBN:978-4-14-016170-8 | |||
定価:1,050円(5%税込) | 222ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||
・【コラム】序盤の心得/中盤の心得/終盤の心得 |
【レビュー】 |
振り飛車のコツや考え方を解説した本。 初心者は最初に覚える戦法として、振り飛車(特に四間飛車)を教えられることが多い。教える側の立場としては、(1)序盤の駒組みが簡単で覚えやすい (2)上達して有段者になってもずっと使える、などの理由で、棒銀と並んで双璧の存在だ。 確かに四間飛車は駒組みは覚えやすい。しかし、基本的に「待ち」の戦法であるため、相手の出方によって対応を変えなければならないので、マスターまでの道のりは結構長い。初級者〜中級者くらいでは、「飛車を振って、美濃に囲って、あとは何となく指している」という方も多いのではないだろうか? そういう方に「定跡を覚えなさい」というのは簡単だ。四間飛車は定跡がかなり整備されており、参考棋書も多い。暗記が得意な人には覚えやすい環境が整っている。半面、暗記が苦手な方(わたしも相当苦手です(汗))は「もっと覚えることが少なくならないだろうか」と考えるのは自然だろう。 本書は、振り飛車を指す初級者〜中級者を対象に、コツや考え方、方針といったところを中心に、定跡暗記に頼らずに振り飛車を指しこなせるように指南してくれる本である。 本書の内容は以下のとおり。(内容はわたしが適当にタイトル付けしました) ●第1章 振り飛車の基本とコツ ・振り飛車の駒組みの特徴 (角道を止めて飛車を振る/玉を美濃囲いに囲う/飛車先は角で受ける/玉側の端歩は受ける/美濃囲いの特徴と弱点/飛角総交換の捌き) ・左銀の使い方 (▲6七銀、▲6六銀、▲5六銀、ダイヤモンド美濃への組み換え) ・飛車の捌き (攻められた筋に飛車を振る/△居玉棒銀への対応) ・捌きとは (捌きの定義/捌きのタイミング/▲9八香の意義/玉頭銀) ●第2章 振り飛車の応用 ・持久戦対応策 (引き角への対応/対左美濃の考え方/対居飛車穴熊の考え方/石田流vs居飛穴/▲6六銀型からの攻め) ●第3章 振り飛車の終盤 ・囲い崩し (竜の好位置とは/駒得しながら寄せる/不要な駒は取らない/囲いの崩し方(舟囲い、左美濃、銀冠、穴熊)) ・最終盤(詰み、必至、しのぎ) (玉は下段に落とせ/送りの手筋/空間を開ける/挟み撃ち/中合い/と金攻め) ・攻防のテクニック (角の好位置(▲6六角、▲4六角)/受けるところはしっかり受ける/大駒は近づけて受ける/絶対に詰まない形とは/竜の位置の差) ●第4章 相振り飛車を覚えよう (金無双、美濃囲い、矢倉、穴熊/玉側の端歩は受けない/左辺の歩はたくさん突く/十字飛車の手筋/一度に二歩交換する/△5四銀型には注意/腰掛銀の利点/相四間飛車の例/対△三間飛車の例) 見開きで解説に区切りがついているので初級者にはとても読みやすい。見開きレイアウトのために解説を強引に打ち切っていることもなく、必要に応じて次のページに解説は続いていく。 また、全体的に指し手は最小限に抑えられ、可能な限り言葉による解説に徹している。振り飛車の感覚を理解したい人には、かなり良い本だと思う。半面、本書では定跡はほとんど覚えられない(第1章に居玉棒銀への対応があるくらい)ので、本格的にマスターしたい人には物足りないかもしれない。(2009Sep29) ※定跡を覚えてさらに上(有段者クラス)を目指したい人向けに参考になりそうな本をいくつか挙げておく。 ・『ホントに勝てる四間飛車』『ホントに勝てる振り飛車』(先崎学,河出書房新社,2002/2003) ・『四間飛車がわかる本』(野秀行,浅川書房,2008) ・「四間飛車を指しこなす本シリーズ」(全3巻,藤井猛,河出書房新社,2000) ・『これにて良し?四間飛車VS急戦定跡再点検』(野秀行,MYCOM,1999) ※NHK出版の棋書は、シリーズでレイアウトや段組、フォント、行間などが統一されておらず、非常に読みにくいものと読みやすいものとの差が大きい。本書はかなり読みやすい部類に入る。 |
【他の方のレビュー】(外部リンク) ・Amazon.co.jp: カスタマーレビュー ・棋書評価解説委員会 ・将棋の棋書レビュー |