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最強将棋レクチャーブックス(4) 四間飛車がわかる本 |
[総合評価] A 難易度:★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 中級〜上級向き |
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【著 者】 野秀行 | ||||
【出版社】 浅川書房 | ||||
発行:2008年7月 | ISBN:978-4-86137-021-2 | |||
定価:1,470円 | 188ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
・【コラム】▲6五銀と▲5七銀 |
【レビュー】 |
△四間飛車vs▲5七銀左急戦の戦法解説書。上級〜初段/二段くらいの人が△四間飛車を持って勝てるように解説した本である。 「また四間飛車か……」棋書を何冊も持っている人はそう思っただろう。わたしは思いました(笑)。確かに四間飛車vs急戦を解説した本はかなりたくさん出ているし、△4三銀型への斜め棒銀・早仕掛け・棒銀がメインで載っている本に限定しても、2004年以降の5年間ですでに3冊出ている。 ・『四間飛車の急所(2) 急戦大全【下】』,藤井猛,浅川書房,2004.10 ・『木村一基の急戦・四間飛車破り』,木村一基,NHK出版,2005.03 ・『四間飛車破り【急戦編】』,渡辺明,浅川書房,2005.04 また、本書とよく似たコンセプトの本には、次のものがある。 ・『ホントに勝てる四間飛車』,先崎学,河出書房新社,2002.12 なお、野自身も『これにて良し? 四間飛車VS急戦定跡再点検』(MYCOM,1999)という四間vs急戦の本を出していて、これは本書と対象棋力がほぼ同じである。ここに挙げた5冊はいずれもかなりの良書である。 本書は渡辺本以来3年ぶりの四間対急戦の本ではあるが、この3年でプロ公式戦での四間飛車は激減し、なにか革新的な定跡の進化があったわけでもない。 ではなぜいま四間vs急戦の本なのか? わたしが思うには、振飛車戦は高段者から初級者までアマ将棋の花形であり、さらに四間vs急戦には振飛車戦のエッセンスがたっぷり詰まっている。特に四間飛車は軽すぎず重すぎず、バランスよく捌くという点ではぜひともマスターしておくべき戦型なのだと思う。加えて、前書きなどから著者の思いを要約すると、「従来の定跡書は難しすぎる。解説が難しいというより、“わずかな疑問手でも厳しく咎めたい”というプロ将棋の戦いに偏重している。本書では、アマが勝ちやすく、振飛車らしい戦い方というのを解説したい」という感じだ。ただし、この思いそのものも先崎本とかぶっている感じはするが…。 本書のテーマ図は右図。△4三銀型四間飛車に対して、居飛車急戦を3つのタイプに分けて解説する(玉頭銀もカウントすると4つ)。四間飛車視点の本なので、図面や棋譜はすべて先後逆表示になっている(四間飛車側が手前)。 各項には[基本][必修][応用][無印]の4つのマークが付いている(無印は何も書いていないので「マークが付いている」は変だが…)。[基本][必修]は文字通り、本書が対象としている棋力の人はぜひマスターしてほしいもの。級位者でも[基本]だけはなんとか読んでおきたい。[応用][無印]は、やや発展的な内容や、定跡の少し先の変化などで、変化を覚えなくてもよいが、ぜひ感覚だけはつかみたいものになっている。 まえがきにある「いくつかの新手を発見しました」の一つは、第5章(▲4五歩早仕掛け-▲8八角打型)での中終盤における新手順(p117〜)。(あと1〜2つあったと思ったが、見失いました。すみません。) 全体的に、「初段±2くらい」という対象棋力をはっきりと捉えており、非常に分かりやすい解説である。特に、「捌く」「重い」などの感覚を言語化してうまく表現できているし、「振飛車らしく勝つ」という戦型選択も見事だと思う。前半の対ナナメ棒銀は、特に準急戦型ですぐに反発する型ではなく、玉型を整えて待機し、中央から反発する型を推奨。後半の対棒銀では、プロで主流の△4三金型(金が玉から離れる)ではなく、振飛車らしさの出る△6五歩位取り型(△6四角が狙い)を推奨している。 最後に、どうしてもコンセプトがかぶっている本との差が気になるところ。代表的な2冊との比較をしておこう。 (1)『これにて良し?』(以下「野前著」)と比べて どちらもアマ向けの変化を分かりやすく解説することに成功しているが、前著はどちらかといえば居飛車視点で、形勢判断をうまく言語化しつつも、やや論理的な感じ。本書は形勢判断自体はあまり多くなく、やや感覚的。「野前著は理系向き、本書は文系向き」とあえて言っておこう。個人的には前著の方が好みに合うのは、わたしが理系だからなのか、それとも先に読んだからなのか? (2)『ホントに勝てる四間飛車』(以下「先崎本」)と比べて かなり全体の雰囲気が似ている。コンセプトも、編集担当も同じだからだろうか。持久戦もフォローしている先崎本の方が四間飛車戦法の全体像が理解できるようになっているが、急戦に絞れば本書の方がより詳しい。「居飛穴なんかチョロいよ、対急戦の方が困ってるよ」という人には本書をオススメしたいが、あまりそういう人はいないような…。 まとめると、本書もかなりの良書だが、他にも選択肢はある。やはり、四間vs急戦はややお腹いっぱい気味だ。野氏には、同様のコンセプトを棋書出版が手薄な戦型で実現してほしいと思う。(2008Aug19) ※初版は誤字・ミスプリントが結構あった。内容に関わるものとしては、p121-上段l6「(誤)△同歩なら▲4五桂」→「(正)△同歩なら▲5四桂」、p121-下段l15「(誤)B図で△5五銀なら」→「(正)C図で△5五銀なら」など。他には句読点やカッコが他の場所に吹っ飛んでいて、空白だけが残っているというよく分からない誤植もいくつか…(ex. p11/p68/p107)。個人的には誤植は割とマイナスポイント。 |
【他の方のレビュー】(外部リンク) ・Amazon.co.jp: カスタマーレビュー ・将棋思録 ・640PLUS |
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