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■最新の8五飛戦法

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最新の8五飛戦法
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プロ最前線シリーズ
最新の8五飛戦法
[総合評価] A

難易度:★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜有段向き

【著 者】 高橋道雄
【出版社】 毎日コミュニケーションズ
発行:2009年12月 ISBN:978-4-8399-3334-0
定価:1,575円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
  横歩取り△8五飛の主要10図   2p
第1章 横歩取りの基礎知識   12p
第2章 △8五飛の最新定跡 (1)▲9六角の変化=8p
(2)中住まい▲3八金型(1)=12p
(3)中住まい▲3八金型(2)=14p
(4)3筋突き越し型=14p
(5)中住まい▲4八金型=14p
(6)▲6八玉型=12p
(7)居玉速攻型(新山ア流)=26p
(8)角交換桂跳ね型=10p
(9)▲8七歩保留型=12p
(10)横歩取りひねり飛車型=5p
126p
第3章 実戦編 参考棋譜=25局 76p

◆内容紹介
プロ将棋の最前線を探るシリーズ第一弾。
12年前にこつ然と現れた「横歩取り8五飛戦法」は、いろいろ進化を遂げながら、現在でもプロ公式戦で用いられています。
本書は本戦法のスペシャリストである高橋道雄九段が、本戦法の骨子、特長、考え方などについて詳しく解説。自身の実戦に基づいたワンポイント講座を収録するなど、将棋を指すファン、プロの将棋を見るファン、いずれに対しても良いガイドとなること請け合いです。著者はこの戦法を駆使して、竜王戦1組、順位戦A級復帰を果たしただけに、読む者を納得させる力があります。


【レビュー】
横歩取り△8五飛戦法の定跡書。

1999年に横歩取り△8五飛戦法が流行し、その後約5年間はゴキゲン中飛車と並んでプロ将棋の二大戦法になっていた時期がある。その期間は、「横歩取り道場」シリーズをはじめとして、横歩取りの定跡書はたくさん出版されていた。しかし、新山ア流の台頭によって、△8五飛戦法は一時は絶滅の危機に陥った。それでも一部のスペシャリストたちの努力と研究により、「後手も戦える」となり、2010年現在でも横歩取りは指されている。

本書は、△8五飛戦法のスペシャリストの一人である高橋が、△8五飛戦法の10大テーマ図について、最新の結論を書き記した本である。横歩取り専門の定跡書は、実に6年半ぶりの出版となる。

▲9六角や▲8七歩保留など、比較的初期のころの形については、現在の結論や定説を解説。新山ア流や角交換桂跳ねなど新しめの形については、現在本筋と考えられている形を中心に解説している。

ページ数を見れば分かるとおり、基本的には「狭く・深く」ではなく、「広く・浅く」である。ただし、本筋にかなり絞り込んであるし、単なる指し手の羅列ではなく、考え方や高橋個人の見解(定説との違いなど)を述べているのが良い。

同じシリーズの『最新の相掛かり戦法』(野月浩貴,MYCOM,2010.02)と同様に、高橋の「横歩取り△8五飛愛」が感じられる内容になっている。

第1章の前にある「横歩取り△8五飛の主要10図」は、本書で扱う10のテーマ図を見開きに集めたもの。載っているのは、図面、掲載ページ(そのテーマが載っているページ)、2009年11月10日現在の後手勝率。解説は特になし。

第1章の「横歩取りの基礎知識」では、初手から△8五飛の基本陣形完成までの基礎知識。触れられている内容は、
 ・△4五角、相横歩取りの紹介
 ・△3三角に▲同飛成△同桂▲7七角打の変化
 ・▲3四飛に△4一玉
なお、新山ア流を警戒する△5二玉(先手の構えによっては手損を気にせず△4一玉型に戻す)の手法は、出版時点ではまだ登場していない(はず)ので、載っていない。

第2章は、メインの定跡解説。10テーマに分かれているので、各テーマの内容を盤面をつけて書き出してみよう。なお、本書は網羅・分岐型の書き方はされていないので、自作チャートは作成しなかった。

基本図まで

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲3四飛△3三角▲3六飛△2二銀▲8七歩△8五飛▲2六飛△4一玉で基本図。このあと、後手は中原囲いにして右桂を跳ねるのはどの戦型でもほとんど同じ。先手の対策がたくさんあり、どの変化にも対応しなければならないという苦悩はあるが、組むまでが覚えやすいというのは、四間飛車と似た特徴である。
テーマ1 ▲9六角の変化

基本図から▲3三角成△同桂▲9六角(左図)。本章では、このあと△6五飛▲6六歩△6四飛▲6五歩△8四飛▲6三角成△5二金となり、▲6三馬の引き場所として(1)▲3六馬 (2)▲9六馬を解説。一応▲2七馬もあるのだが、ほぼスルー。

横歩取り△8五飛にするために、最初に乗り越えるべき関門であるが、超基本であるためか『横歩取り△8五飛戦法』(中座真,日本将棋連盟,2001)と『8五飛を指してみる本』(森下卓,河出書房新社,2001)くらいにしか載っていない。プロの実戦例は3局で、後手の全勝だが、高橋の見解は「先手良しと言われているものの、実際に指してみれば意外にいい勝負かもしれない。」(p21)とのこと。確かに、参考棋譜1を見る限り、先手もやれそうに思える。先手が知識勝負を避け、乱戦から手将棋にしたければ、これもありだと思う。
テーマ2 中住まい▲3八金型(1)

基本図から▲5八玉△6二銀▲3八金△5一金▲4八銀△7四歩▲3六歩△2五歩(左図)。▲3七桂とされる前に△2五歩から動くのがポイント。後手の右桂を活用する前に戦いになるので、プロでは実戦例が少なめだが、後手の勝率は高い。右の桂香は“エサ”と見ることもできるのではないだろうか?
テーマ3 中住まい▲3八金型(2)

基本図から▲5八玉△6二銀▲3八金△5一金▲4八銀△7四歩▲3六歩△7三桂▲3七桂(左図)。右桂を跳ね合う、最も基礎的な形。先手でこの構えを好む棋士も多い。▲7七角型の新しい形も解説。
テーマ4 3筋突き越し型

基本図から▲5八玉△6二銀▲3八銀△5一金▲3六歩△7四歩▲3五歩(左図)。▲3八銀-▲4九金-▲5八玉型から▲3五歩と突き出す。後手の選択肢は(1)△同飛 (2)△7三桂の2つ。(1)の△同飛は両取りを承知で激戦に飛び込む変化で、2004年ごろにかなり流行した。以下▲3三角成△同桂▲4六角△2五歩▲1六飛△3四飛▲3五歩で、さらに次の3つに分岐する。
(1)△4四飛:森内vs羽生の名人戦第2局(2004)で、「森内は▲7四歩を知っていた、羽生は知らなかった」
(2)△5四飛:羽生vs高橋(2004)の▲6六角が決定版で、以降の公式戦からは消滅。
(3)△6四飛:本筋の感じがなく、2004年以降敬遠されている。
テーマ5 中住まい▲4八金型

基本図から▲5八玉△6二銀▲3八銀△5一金▲3六歩△7四歩▲3七桂△7三桂▲4八金(左図)。▲3八銀-▲4八金-▲5八玉型がポイント。金開き(▲3八金型)よりも金銀の連結がいい。△4六桂の筋が甘いので、後手の攻め方は△8六歩に絞られる。▲3八金型との顕著な違いはp71を参照。本書執筆中に現れた最新形の紹介はp79を参照。
テーマ6 ▲6八玉型

基本図から▲6八玉△6二銀▲3八銀△5一金▲3六歩△7四歩▲3七桂△7三桂▲4六歩(左図)。▲3八銀-▲4九金-▲6八玉型で安定感がある。反面、左銀が▲6八銀とできないので、5七の地点を強化しにくい。後手の攻め筋は△7五歩 or △5五飛(松尾新手)。△5五飛は角交換後の分岐が5つあるが、本章では高橋が一番指したいという△7五歩のみを解説。谷川vs丸山の名人戦第7局(2001)で現れた、△4五桂捨て〜△4六角の筋といえば分かるだろうか?
テーマ7 居玉速攻型

基本図から▲4八銀△6二銀▲3六歩△5一金▲3七桂(左図)。いわゆる「新山ア流」で、対△8五飛戦法のエース。先手は玉の囲いを最小限で済ませて速攻する。後手は右桂の活用が間に合わない。一時期、△8五飛を絶滅危惧種に追い込んだ張本人。△7四歩▲3五歩△4四角に(1)▲3六飛 (2)▲7七角 (3)▲6六角と分岐する。(1)▲3六飛は△8五飛の成否にかかわる重要変化で、高橋もこの対策を見つけたことで「私自身……再び愛用者の一人に復活したのだった。」(p108)
テーマ8 角交換桂跳ね型

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲3四飛△3三角▲3六飛△2二銀、ここで変化して▲5八玉△4一玉▲8七歩△8五歩▲3三角成△同桂▲7七桂(左図)。いわゆる佐藤流角交換▲7七桂型で、かなり新しい部類に入る形。(すみません、別の形と勘違いしていたようです。この形はそんなに新しい形ではありません。本書では参考棋譜(18)で高橋九段が唯一先手を持った形として取り上げられており、2003年3月の実戦が解説されています。(2010Nov28追記))▲5八玉と居玉を避けただけで、右の金銀を動かさない簡素な構えで、角交換して▲7七桂と跳ね、△8五飛の行き先を問う。
テーマ9 ▲8七歩保留型

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲3四飛△3三角▲3六飛△2二銀、ここで変化して▲5八玉△4一玉▲3八金(左図)。いわゆる(広い意味での)山ア流で、▲8七歩を打たない。△8五飛戦法は、基本的に▲8七歩を打たれてから△8五飛とするので、「△8五飛自体を阻止する」というコンセプトだ。分岐は(1)△6二銀 (2)△5一金 (3)△8四飛の3つ。『横歩取り道場 第一巻 8五飛阻止』(所司和晴,MYCOM,2002)に詳しく書かれている。現在は超急戦対策ができている感じで、プロの実戦にはあまり現れないが、アマが対応するのは大変かも。先手の攻め方が分かりやすい。
テーマ10 横歩取りひねり飛車型

初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△8四歩▲2五歩△8五歩▲7八金△3二金▲2四歩△同歩▲同飛△8六歩▲同歩△同飛▲3四飛△3三角▲3六飛△2二銀、ここで変化して▲9六歩△4一玉▲7五歩(左図)。清水女流がやたらと採用するひねり飛車型。先手勝率がかなり高いが、それは後手が飛車交換に応じた(▲7五歩に△3六飛)ときの戦績が先手の7勝1敗のため。飛車交換に応じず、持久戦になればいい勝負。


また、第3章ではなんと25局もの実戦譜を紹介。もちろん、すべて高橋の実戦である(「角交換桂跳ね型」の参考棋譜(18)を除き、あとはすべて高橋が後手)。1局につき2pで解説はかなりざっくりしているが、該当する項が書かれているのが良い。まず、定跡編を読み、巻末の棋譜を並べてから、2pの実戦解説を読むと良いだろう。この戦型については、類型をたくさん並べるのが力になると思うので、この実戦譜の量は個人的には歓迎である。

本書では、単なる指し手の羅列ではなく、△8五飛を指しこなす上での急所や、高橋個人の見解が書かれているのが○。その一部を紹介すると、
 ・「先後共に、常に持ち歩二歩以上をキープするのが急所」(p17)
 ・「実は左桂の活用が一番の急所なのだ。」(p32)
 ・「〜と一般的には言われているが、私見では〜もありそうに思う。」(p35)
 ・「守れないなら守らない。」(p70)
 ・「▲4五歩・▲3五歩と五段目に歩が並ぶと、先手陣がのびのびとして指しやすくなる。」(p82)
 ・「全体的に後手も何とかやれそうに思っている。」(p87)
 ・「6二銀・5一金の形をなるべく崩さないのが受けのコツ。」(p208)

わたし自身、あまり分かっていなかったコツもいくつかあって、とても参考になった。

△8五飛の全体像と現状を知るには良書だと思う。スペシャリストの本ということで、ディープな解説を望んでいた人にとっては物足りないのかもしれない。(2010Nov25)

※誤字・誤植(初版第1刷で確認)
p3目次 ×「第3章 実戦編 145」 ○「第3章 実戦編 147」
p67 ×「前ページ第9図よりも損。」 ○「前ページ第19図よりも損。」
p110変化図 ×▲8七歩 ○▲8六歩



【関連書籍】

[ジャンル] 
横歩取り
[シリーズ] 
プロ最前線シリーズ
[著者] 
高橋道雄
[発行年] 
2009年

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