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■横歩取り△8五飛戦法

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パワーアップシリーズ
横歩取り△8五飛戦法
[総合評価] S

難易度:★★★★☆

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)S
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:B+
有段向き

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【著 者】 中座真
【出版社】 日本将棋連盟
発行:2001年2月 ISBN:4-8197-0365-X
定価:1,500円 303ページ/19cm


【本の内容】
  「横歩取り△8五飛戦法」とは?   2p
第1章 基礎知識編
(▲9六角超急戦)
・△8五飛戦法に組むまで
・△5二金→(1)▲2七馬 (2)▲3六馬 (3)▲9六馬
34p
第2章 対▲5八玉型の攻防 ・対▲5八玉型の主な手順
(1)▲3七桂→(a)△8六歩 (b)△9四歩 (c)△1四歩
(2)▲3六歩→△2五歩
(3)▲1六歩→(a)△7三桂 (b)△5四歩
(4)▲4八金→△8六歩
(5)▲4六銀→△7五歩
116p
第3章 対▲6八玉型の攻防 ・対▲6八玉型の主な手順
(1)▲3七桂→
 (A)▲3三角成
 (B)▲4六歩
  →(a)△8六歩 (b)△7五歩
   (c)△5四歩 (d)△5五飛(松尾新手)
(2)▲3五歩
91p
第4章 対▲8七歩保留型の攻防 ・△8五飛戦法に組ませない指し方
(1)▲9六歩
(2)▲4八銀
(3)▲3三角成
(4)▲8七歩
43p
  参考棋譜 中座の実戦棋譜解説=5局 10p

◆内容紹介
横歩取り定跡に創意工夫を加えた「中座流△8五飛戦法」は、後手番戦法の切り礼として大流行し、圧倒的な勝率を上げている。玉が堅く、多彩な攻撃パターンをもつ本戦法は、(1)△3三角戦法 (2)中原囲い (3)中座新手△8五飛を組み合わせ、大駒と左右の桂、そして歩を巧みに使う新感覚の空中戦。

本書は中座流を創始した著者が、基本から最新の研究手順まで、△8五飛戦法の攻防のすべてを一挙に公開した画期的な一冊。


【レビュー】
横歩取り△8五飛戦法の定跡書。

横歩取り△8五飛は、本書の著者である中座四段(当時)が1997年に初めて指した作戦。当初はキワモノ扱いだったが、その優秀性が広く認められるようになり、一時は大ブームを巻き起こした。

その後、新山ア流の登場で絶滅寸前まで追いやられたが、後手の玉の位置の工夫や△8四飛型の再評価により、横歩取り全体が混沌とした状態になってきたことから、△8五飛戦法も有力策の一つとして、登場から約20年経った現在でも生き残り続けている。

本書が出版されたころの状況は、以下の通り。

・△8五飛型が登場してから約3.5年。
 −後手の形は常に△8五飛+中原囲い。
 −先手は玉型は、中住まいor▲6八玉型のどちらか。
・当時の最新形は、
 −松尾新手△5五飛は登場していたが、まだ日が浅い。
 −山ア流(広い意味で角交換型全般)は登場していたが、まだ日が浅い。


・まだ現れていないものは、
 −▲3五歩に△同飛と取る発想
(本書では、角交換から▲4六角があるからダメ、とある)
 −▲4八銀〜▲3七桂の新山ア流
(※p299のコメントには、原型らしきものの登場が示唆されている)
 −先手の中原囲い
 −▲7七角型
 −後手の様々な囲い方
 −△8四飛の再評価


…などである。



各章の内容を、チャートを添えながら紹介していこう。(※チャートが非常に長くなったため、このページでは簡易版チャートのみを表示しました。完全版チャートは、簡易版の上のリンクをクリックしてください)


まず、本編に入る前に、「まえがき」の後、「もくじ」の前に、「横歩取り△8五飛戦法とは?」がある。ここでは、戦法の特徴とともに、6つの攻め筋が簡単に紹介されている。この「攻め筋」を知っておくことは、横歩取り△8五飛を指す上で非常に重要になってくるので、しっかり読んでおこう。ちなみに、6つの攻め筋は以下のとおりである。

@△8六歩▲同歩△同飛で横歩を狙う
A△7五歩▲同歩△同飛で7筋を狙う
B△5四歩〜△5五歩で中央を狙う
C左右の桂を跳ねて中央を狙う
D角交換〜△4四角で先手の飛を押さえて7・8筋を狙う
E△2五歩で先手飛車を押さえる



第1章は、基礎知識編。△8五飛型に組んだとき、後手の飛と玉が間接的に斜めの同一ラインに入ることを咎めようと、角交換から▲9六角と打つ筋がある。これを解決しておかないと、△8五飛戦法は成立しないことになる。

なお、この超急戦は、初号局以外では本書以降もほとんどプロの実戦に現れず、後手良しの結論になっている。

ただし、かなりきわどい変化を含んでいるので、アマなら、先手がハメ手的に使うのもアリかもしれない。▲9六角急戦を解説した本としては、本書が一番詳しいと思う。

第1章チャート完全版



第2章は、▲5八玉型。もっともオーソドックスな陣形で、プロの実戦も一番多い。

▲5八玉型は、左右のバランスが良く、飛の打ち込みには強いが、中央の攻めには弱い。ただし、左右の銀により、ある程度中央を強化することは可能。また、▲7八金が浮きやすく、銀桂が移動すると下段がスカスカになることもある。

右の金銀は、▲3八金-▲4八銀型と、▲3八銀-▲4八金型の2種類あり、どちらも一長一短。

p49の基本形から△8六歩と仕掛けても、後手優勢にならなかったため、後手は端歩を突いて仕掛けを一手待つことになる。突くべき端歩は△9四歩か、△1四歩か。本書の結論は、△9四歩で待つのは芳しくなく、含みの多い△1四歩型の方がより有望となっている。

第2章チャート完全版



第3章は、▲6八玉型。▲3八銀-▲6八玉の2手で囲いが完成し、瞬間的には大駒の打ち込みに強い。ただし、▲7八金との連携が良い半面、中央は薄く、左銀を中央の強化に使えないという弱点もある。▲6八玉型は柔軟性・発展性に乏しく、先手の作戦の選択肢は少ない。

進展性がないとはいえ、後手があまりもたもたしていると、一瞬の安定感を生かした攻めがあるので、後手は積極的に戦いを挑む展開になりやすい。

第3章チャート完全版



第4章は、▲8七歩保留型。

△8五飛型は、▲8七歩に△8五飛と引くのが形である。歩を打たれる前に△8五飛と引くと、▲7七桂〜▲8五歩と抑えられる筋があり、好ましくない。▲8七歩保留は、そもそも△8五飛にさせたくない、という対策となる。

なお、当時は山ア流の原型のようなものは登場しているが、多くのアマが気になる「先手が▲2三歩から強襲する筋」は本書ではほとんど解説がない。角交換型の基本定跡は、『谷川の21世紀定跡(2) 横歩取り△8五飛戦法編』(2002.03)や『横歩取り道場 第一巻 8五飛阻止』(2002.07)などを参照してほしい。

第4章チャート完全版




本書は、△8五飛が出てから一定量の局数が戦われ、タイトル戦でも登場して、基本形といえる変化が出来上がった状態で出版されている。当然、月日の流れとともに大幅に更新された部分がたくさんあるが、横歩取り△8五飛の基本形をしっかりと書き遺した大作であるといえよう。(2016Sep19)



【関連書籍】

[ジャンル] 
横歩取り
[シリーズ] 
パワーアップシリーズ
[著者] 
中座真
[発行年] 
2001年

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