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■新 将棋は歩から

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新 将棋は歩から
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新 将棋は歩から [総合評価] B

難易度:★★☆
   〜★★★☆

図面:見開き4〜5枚
内容:(質)A-(量)A
レイアウト:A(2色刷)
解説:A-
読みやすさ:A
中級〜上級向き

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【著 者】 森けい二 【監 修】 羽生善治
【出版社】 東京書店
発行:2011年12月 ISBN:978-4-88574-433-4
定価:1,470円(5%税込) 239ページ/19cm


【本の内容】
第1章 前進の歩   22p
第2章 交換の歩   18p
第3章 突き捨ての歩   20p
第4章 垂れ歩   24p
第5章 継ぎ歩   20p
第6章 成り捨ての歩   20p
第7章 焦点の歩   20p
第8章 単打の歩   22p
第9章 連打の歩   14p
第10章 端歩   20p
第11章 その他の歩 (1)中合いの歩 (2)底歩 (3)十字飛車の歩 (4)合わせの歩
(5)控えの歩 (6)ダンスの歩 (7)死角の歩 (8)蓋歩(フタフ)
(9)突き違いの歩 (10)紐歩(ヒモフ) (11)直射止めの歩
22p
付章 練習問題 問題(1)〜(3) 7p

◆内容紹介
勝負に直結する歩使いの巧拙を棋界の奇才森けい二九段と天才羽生善治二冠が、最新の棋譜をもとにわかりやすく解説。


【レビュー】
歩の手筋を解説した本。

歩を専門に扱っている手筋本はいくつか出版されているが、その中で金字塔といえるのが『将棋は歩から』(全3巻,加藤治郎,東京書店,1970/1982/1992)である。これは、棋書史上初の歩の専門書である『将棋は歩から スピード上達法』(加藤治郎,唯人社,1949)を、1970年当時最新の局面解説を添えて、加藤自身が全面的に改訂した本だった。

将棋は歩から』で歩の手筋を学んだ人は多く、棋書の歴史の中でもまず五指に入る名著(シリーズ)であろう。ただし、出版から40年が経過し、多くの参考棋譜が現代将棋に合わなくなってきているという懸念があった。

本書は、『将棋は歩から』を森が書き直した本である。

本書のまえがき(「はじめに」)によれば、森は、真部一男とともに1970年版の『将棋は歩から』の編集を手伝ったらしく、その縁(?)で今回の改訂に取り組んだらしい。ただし、『将棋は歩から 上巻』(加藤治郎,東京書店,1970)のあとがきには、大山康晴(当時名人)と野本虎次(同四段)の名前しか出てこず、中巻・下巻にも他の協力者の名前はない。森(同四段)や真部(同三段)がどの程度関わっていたかは不明。なお、森の実戦は『将棋は歩から』全3巻の中に2局出てくる。

各章の基本的な構成は『将棋は歩から』と同じで、以下のような三段構成になっている。
 (1)概略
 (2)部分図や全体図での例の解説
 (3)実戦例
このうち、(1)と(2)は内容的には原著とほぼ同じ。加藤の雑談的なものは省かれているが、実質的な内容は変わらない。大きく違うのは(3)の実戦例で、すべて森の実戦から取材している。


原著と比較して、気がついた点を列挙してみよう。

○読みやすさは劇的に向上
原著は、棋譜がいっぺんに20手以上進んだり、解説と図面の位置が大きくずれているなど、読みにくかった。本書は基本的に見開き完結(または1ページ完結)になっているので、ページを何度も繰る必要がなく、非常に読みやすい。

△ややマイナーな歩の手筋はほぼカット
ちょっとマイナーな手筋は、手筋1種につき2pで第11章にまとめられている。確かに使用頻度はメジャー10種よりは少なそうだが、だからこそ細かい解説もほしいところだと思う。例えば、「蓋歩」は成立条件が細かく、自玉の位置によって成否が変わったりするのだ。

△あまり「現代版」になっていない
原著は1970年出版のため、題材は1960年代後半の実戦が大半。1950年以前の実戦も一部出てくる(5筋を双方が突いた相掛かりなど)が、原著でも「古い」とされていた。また、出版以降に出現した「概念」には未対応だったのが最大の難点だった。たとえば、飛先不突き(or保留)、居飛車穴熊、角交換振飛車など。

本書は第1章でそれらに触れているので、「おっ、これは期待できる!」と思ったのだが、実際には20年以上前の古い実戦が大半だった。※2(対局日が書かれているのは最初の糸谷戦だけで、なぜかそれ以降は対局者と棋戦名しか書かれていないが、廃止棋戦、対局者が故人のもの、対局者の段位などから対局時期が推定可能)

×誤字・誤植が非常に多い※1
原著も結構多かったが、本書も多い。

□実戦例が森の実戦のみ
原著は、当時のA級棋士や新鋭の将棋からさまざまな妙技をこってりと解説していた。本書では森の実戦のみ※2で、しかもB級2組の将棋が多く、解説もあっさり気味。森の著書なので、別に問題ないのではあるが…。

□監修の羽生は無関係
内容紹介には「奇才森けい二九段と天才羽生善治二冠が、最新の棋譜をもとにわかりやすく解説」とあるが、羽生はまえがき・あとがきにも一切登場せず、実戦例にも出てこない。最終ページに略歴が載っているのみ。

個人的には、羽生の名義貸しを受けるくらいなら、原著者の加藤治郎の名前をしっかり出すべきだろうと思う。(まえがきには少し載っている)


総評を。純粋に本書だけを眺めたとしたら、まずまずの良書だと思う。しかし、原著や他書と比べるとどうだろうか?

原著『将棋は歩から』は、いい意味で「全部載せ」感があって、そこには雑味も多かったが、超大盛りでお腹パンパンになって、栄養もたくさん吸収できた。
イメージ:「大皿料理専門の中華料理店」 食材は一級品。

また、わたしのイチオシの歩の手筋本『歩の玉手箱』(桐谷広人,週刊将棋編,MYCOM,1995/2003)は、「全部載せ」で、雑味が取り除かれた洗練された味で、飽きることなく食べ進められて、満足度が高かった。
イメージ:「フレンチのフルコース」 ボリュームは腹八分目以上、満腹未満。

一方、本書は、原著の美味しいところを抽出して、食べやすい加工もしたが、味付けが少し違和感がある感じだ。
イメージ:あえて言うなら「うまみ調味料が多めの加工食品

あくまでも個人の感想です。(2012Jan14)

※1 ^ 誤字・誤植(初版で確認):
p28 ×「次に▲8三金以下の詰めろ…」 ○「次に▲2三金以下の詰めろ…」
p32上段 ×「最も、玉で歩の交換…」 ○「尤も、玉で歩の交換…」 ひらがなで「もっとも」も可。
p32上段 ×「まれに表れる」 ○「まれに現れる」 「出現」の意味で使われているので。なお、本書では「表れる」で統一(?)されており、他にも多数ある。(p70(2ヶ所)、p72、p76、p134(3箇所)、p159、p161、p183など)
p37 ×「先手に取って」 ○「先手にとって」 「先手を取る」という意味ではないので。
p125 ×「沢博文八段」 ○「沢博文八段」
p125 ×「△2二歩と攻められていて」 ○「△8八歩と攻められていて」
p150 ×「杉本隆六段」 ○「杉本隆六段」
p154 「焦点の歩も、歩をタタクということでは同じで、単打の歩の仲間である」→焦点の歩の中には、タタキにならないものも多い(本書第7章でも解説されている)ので、「焦点の歩⊂単打の歩」ではない。
p158 10図 2三歩の向きが逆。
p162 ×「▲2四飛と、一つ寄って…」 ○「▲2六飛と、一つ寄って…」
p176 ×「▲1五歩△同玉▲1四歩△同玉▲1七香」 ○「▲1五歩△同玉▲1六歩△同玉▲1七香」
・他に「良く」が多用されているが、頻度を表す場合は誤用。形勢を表す場合はOK。

※2 ^ 【参考資料】各章の実戦例の題材一覧:
第1章 前進の歩
・森vs糸谷哲郎(順位戦)、2011年7月5日(対局日が明記されているのはこの将棋のみ)
・米長邦雄vs森(王将戦第3局)、1984年
第2章 交換の歩
・森vs佐藤秀司(順位戦)
・森vs長沼洋(竜王戦)
・森vs内藤国雄(順位戦)
第3章 突き捨ての歩
・森vs瀬川晶司(朝日OP)
・森vs山口千嶺(早指し選手権戦)
・森vs桐山清澄(順位戦)
・森vs杉本昌隆(順位戦)
・森vs橋本崇載(順位戦)
・森vs長沼洋(順位戦)
・森vs屋敷伸之(順位戦)
・森vs神谷広志(順位戦)
第4章 垂れ歩
・森vs橋本崇載(順位戦)
・森vs福崎文吾(順位戦)
・森vs植山悦行(全日プロ)
・森vs安恵照剛(竜王戦)
・森vs勝浦修(全日プロ)
・森vs芹沢博文(連盟杯戦)
・森vs勝浦修(順位戦)
・森vs内藤国雄(達人戦)
・森vs木村一基(順位戦)
・森vs青野照市(順位戦)
・森vs田中寅彦(順位戦)
・森vs西川慶二(順位戦)
・森vs福崎文吾(順位戦)
第5章 継ぎ歩
(実戦例なし)
第6章 成り捨ての歩
・森vs浦野真彦(順位戦)
・森vs松下力(順位戦)
・森vs加藤一二三(竜王戦)
・森vs安恵照剛(竜王戦)
・森vs丸山忠久(王将戦)
・森vs森安秀光(王位戦)
・森vs芹沢博文(連盟杯戦)
・森vs脇謙二(順位戦)
・森vs青野照市(王将戦)
・森vs桐山清澄(王将戦)
・森vs桐山清澄(順位戦)
・森vs武者野勝巳(全日プロ)
第7章 焦点の歩
・森vs脇謙二(順位戦)
・森vs杉本昌隆(順位戦)
・森vs島朗(十段戦)
・森vs糸谷哲郎(順位戦)
第8章 単打の歩
・森vs丸田祐三(棋聖戦)
・森vs神谷広志(順位戦)
・森vs島朗(十段戦)
・森vs加藤一二三(名人挑戦リーグ)
・森vs勝浦修(名人挑戦リーグ)
・森vs石田和雄(棋聖戦)
・森vs小野修一(順位戦)
・森vs森安秀光(棋聖戦)
・森vs谷川浩司(王将戦)
・森vs西川慶二(順位戦)
・森vs佐藤大五郎(連盟杯戦)
第9章 連打の歩
・森vs佐藤秀司(順位戦)
・森vs森安秀光(王位戦)
・森vs加藤一二三(竜王戦)
・森vs勝浦修(達人戦)
第10章 端歩
・森vs青野照市(順位戦)
・森vs佐藤秀司(順位戦)
・森vs福崎文吾(順位戦)
・森vs中村修(棋王戦)
・森vs森安秀光(王位戦)
・森vs室岡克彦(王位戦)
・森vs橋本崇載(順位戦)
・森vs土佐浩司(順位戦)
・森vs佐藤義則(王座戦)
・森vs長谷部久雄(天王戦)
・森vs長沼洋(順位戦)
・森vs木村一基(順位戦)



【関連書籍】
 『
将棋は歩から 上巻
 『
将棋は歩から 中巻
 『
将棋は歩から 下巻
[ジャンル] 
駒の手筋
[シリーズ] 
[著者] 
森けい二 羽生善治
[発行年] 
2011年

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