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将棋は歩から 上巻 | [総合評価] A 難易度:★★★☆ 〜★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A (横書き、2色刷) 解説:A 読みやすさ:B 上級〜有段向き |
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【著 者】 加藤治郎 | ||||
【出版社】 東京書店 | ||||
発行:1970年2月 | ISBN:4-88574-409-1 | |||
定価:480円 | 300ページ/18cm |
(愛蔵版・函) zoom |
愛蔵版 将棋は歩から 上巻 | [総合評価] A 難易度:★★★☆ 〜★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A (横書き、2色刷) 解説:A 読みやすさ:B 上級〜有段向き |
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【著 者】 加藤治郎 | ||||
【出版社】 東京書店 | ||||
発行:1982年7月 | ISBN: | |||
定価:2,400円 | 300ページ/22cm H.C.・函入り |
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将棋は歩から 上巻(再版) | [総合評価] A 難易度:★★★☆ 〜★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A (横書き、2色刷) 解説:A 読みやすさ:B 上級〜有段向き |
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【著 者】 加藤治郎 | ||||
【出版社】 東京書店 | ||||
発行:1992年10月 | ISBN:4-88574-409-1 | |||
定価:1,400円 | 300ページ/18cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||||||
◆内容紹介(「はじめに」より抜粋) |
【レビュー】 |
歩の手筋を解説した本。 将棋は歩に始まり、歩に終わる──。駒の中でもっとも数が多く、使用頻度が高いのが歩である。ただし、歩の基本性能は「前へ一つ進める」だけであり、初心・初級のうちは上手く使いこなせない。駒の性能を最大限に発揮させることが勝利への道であるが、そのためにはほとんどの場合、歩が絡んでくる。つまり、棋力が上がるほど歩の使い方が上手く、常に歩を意識しているのである。逆に言えば、歩の使い方に魅せられた人ほど、将棋に入れ込んで強くなっていくのだろう。 本書は、そういった歩の手筋と役割について、実戦例をまじえながら理論的に非常に詳しく解説した本である。 本書(上・中・下巻を併せて)は名著の誉れ高い棋書だ。歩の手筋本は良質なものがいくつか出ているが、質・量ともにトップレベルであり、さらに「元祖」ともいえる存在である。ただし、正確には本書が初めての歩の本というわけではない。『将棋は歩から』について年表にまとめてみた。 ■〔年表〕『将棋は歩から』 1940〜1945ごろ 加藤治郎(本書の著者)が「将棋世界」で「歩の使用法」を連載 ・焦点の歩、ダンスの歩、連打の歩などは加藤の命名である 1949 旧版の『将棋は歩から スピード上達法』(加藤治郎,唯人社)を出版 ・上記連載をまとめたもの、これがおそらく初めての歩の手筋本 ・上巻・中巻のあと、下巻は出版不能(出版社倒産?) 1956 『将棋・歩の道場』(加藤治郎,大阪屋號書店)を出版 ・『将棋は歩から スピード上達法』の内容を圧縮したもの、ポケットサイズ 1969 加藤治郎が日本経済新聞に「新講・将棋は歩から」を連載(計20回) 1970 『将棋は歩から(新版)』(上・中・下巻)の出版〔本書〕 ・過去に割愛した分も全て解説 ・無名の歩にも命名 ・大半の棋譜(題材)を最新版に取り替え 1972 『将棋・歩の道場』が集文館から再版される 1982 『愛蔵版 将棋は歩から』(上・中・下巻)の出版 ・箱入りの豪華本、版型も大型に 1990 『将棋は歩から(新版)』(上・中・下巻)の価格改定 ・定価480円 → 1400円 2011 『新 将棋は歩から』 ・森けい二・羽生善治による全面改訂 ■各章の内容 さて、本書の上巻では、おもに序盤〜中盤で現れる歩の手筋を扱っている。(※ちなみに中巻・下巻は中盤〜中終盤の歩の手筋が多い)歩交換に関係する手筋と、仕掛けに関係する手筋がメインだ。 第1章 前進の歩 序盤の歩の進め方について考察。 ・歩の進め方によって、戦法・作戦が変わる ・飛先の歩を保留する意味 ・駒落ちでの歩の進め方 ・終盤に歩突きが決め手になる例 第2章 交換の歩 上巻のメイン。序中盤の歩の交換は、作戦勝ちや仕掛けの成否に直結するため、プロが最も苦心・長考するところだ。そのため、本書でも半分近いページをこの「交換の歩」に割いている。 ・歩交換の3つの効果 ← 非常に重要! ・歩交換を助ける駒と戦法別の例 ・角による歩交換は直射の利がない ・角換わりで自陣角を打って歩交換して、局面を打開する ・矢倉で3五で歩交換 ・急戦矢倉で5五で角で歩交換 ・中飛車で5五で角で歩交換 ・居飛車vs振飛車で、居飛車の角が5五で歩交換 ・急戦向飛車の攻防 ・銀での歩交換 ・「前線3型」(歩内銀、歩越し銀) ← 非常に重要! ・対振飛車での銀での歩交換 ・矢倉で自玉頭の歩を銀で交換 ・桂での歩交換 ・桂による歩交換は、歩対抗型のときに行う ・金での歩交換 ・4六金戦法 ・香での歩交換 ・駒落ちでの歩交換 ※向飛車での飛交換を拒否して歩を謝る手が「控え歩」として載っており、改名案として「謝歩」を提案しているが、残念ながら現代では定着していない。 第3章 突き違いの歩 「銀バサミ」狙い。歩越し銀による歩交換に対して、常に成立するかどうか意識しておきたい。突き違いの歩の対策も検討されている。 第4章 蓋歩 主に飛で歩交換してきた手に対し、飛の退路を断って捕獲するために使う。1979年に加藤により命名されたらしい。成立する条件が複雑なので、双方とも歩交換になる前からしっかりと読んでおく必要がある。 第5章 突き捨ての歩 「開戦は歩の突き捨てから」といわれるように、仕掛け時に非常に高い確率で使う。これができるようになると、有段者にグッと近づく。 第6章 継ぎ歩 継ぎ歩は、連続で合わせ歩を行うこと。これができるともう有段者っぽい。継ぎ歩は単独では効果がなく、「十字飛車」「継ぎ歩+垂れ歩」「継ぎ歩+単打の歩の連続技」「継ぎ歩+ダンスの歩」など、複合技の一部として使われる。また、金銀を前進させるために使われることも多く、持ち歩の数によってスピードの違う様々な技に派生する。本章の実戦例は、継ぎ歩以外にもいろいろな歩の手筋の競演が見られるので、できれば盤に並べて鑑賞したい。 ■挫折しやすい? ところで、本書(特に上巻)の挫折率は割と高いと聞く。わたしも級位者時代に途中で挫折した一人である、恥ずかしながら……。理由はいくつか考えられる。 (1)級位者の即戦力になりにくい。 目次を見れば分かるように、上巻は第2章の「交換の歩」だけで半分弱のページを取っている。プロや有段者にとっては仕掛けの成否に直結するため非常に腐心するところだが、膨大な戦型の知識が必要な上に、題材の大半が1960年代以前の棋譜なので現代の戦型と合わず、級位者への即効性は薄い。特に、たびたび登場する「旧相掛かり(5筋の歩を突き合う)」や「△3四銀型四間飛車vs▲腰掛け銀」は、現代ではまず見かけることはない。そのため、冒頭から順に読んでいくと、p50〜p100あたりでサクサク進めなくなる。第5章の「突き捨ての歩」も同様だ。 また、上巻の他の手筋も高級な部類に入る物が多く、難易度が (難)上巻>中巻>下巻(易) であることは著者も中巻のまえがきで認めている。級位者の方は、中・下巻から読むのがオススメ。どうしても前から読みたい人も、思い切って第2章と第5章を飛ばし、第3章(突き違いの歩)から読もう。 旨いがカタい肉を噛み砕くには、まず丈夫なアゴと胃袋が必要だ。易しめの手筋をたくさん消化して鍛えよう。有段者の力がついてから第2章・第5章を読めば、大きな血肉となる。 (2)ある図面から次の図面までの指し手が結構長い。 20手くらい進むことがある。級位者が頭の中だけで追うのは大変。 (3)レイアウトが独特で、慣れるまで読みづらい。 東京書店の棋書は独自のレイアウトを採っている。〔右図〕 ・図面 ・棋譜の符号(『よくわかる矢倉戦法』(関根茂,東京書店,1971)で使われたものとは少し違う。本書の方が少しは読みやすいか?) ・横書き 読みやすくするための工夫(実際、慣れれば案外読みやすい)だが、組版が面倒で、さらに特許申請までしているため、他の出版社が採用せず、デファクトスタンダードになれなかった。 挫折せずに読み通せば、大きな力がつくことは保証する。一冊あたりの棋力up率でいえば、トップクラスだと思う。ただし、現代ではもう少し易しく書かれた「歩の手筋本」が他にいくつもあるので、あえて一冊目に選ぶ必要はないかも。歩を極めたい人は、もちろん必読だ。(2011Dec15) ※レイアウトが横書きのせいか、変なところが算用数字になっている。 例:「一戦」→「1戦」、「〜の一着」→「〜の1着」、「四間飛車」→「4間飛車」、「〜の一部を」→「〜の1部を」、「一方、」→「1方、」、「第一人者」→「第1人者」、「一段と」→「1段と」…など ※誤字・誤植(1970年版で確認): p8(目次) ×「(1)柱の応援」 ○「(1)桂の応援」 p40 26図 △8二飛は不要。(飛落ちなので) p123 ×「玉手飛車などをまじえ」 ○「王手飛車などをまじえ」 p162 △「一四歩、2五桂…」 ○「1四歩、2五桂…」 p238 ×「7七歩 7七飛」 ○「7七歩 7九飛」 |