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■豊島の将棋 実戦と研究

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豊島の将棋 実戦と研究
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マイナビ将棋BOOKS
豊島の将棋 実戦と研究
[総合評価] B

難易度:★★★★

図面:見開き4〜6枚
内容:(質)A(量)B
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
(棋譜解説編はB)
上級〜有段向き

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【著 者】 豊島将之
【出版社】 マイナビ
発行:2014年1月 ISBN:978-4-8399-5048-4
定価:1,575円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
【構成】 池田将之

第1局 田村康介六段戦 「逆転で開幕局を制する」
第2局 青野照市九段戦 「後手番角換わりの戦い」
第3局 藤井猛九段戦 「角交換型振り飛車に屈する」
第4局 南芳一九段戦 「南流を撃破」
第5局 森下卓九段戦 「角換わり右玉を撃破」
第6局 中川大輔八段戦 「異筋の飛車打ちが決まる」
第7局 安用寺孝功六段戦 「無理攻めをとがめる」
第8局 畠山成幸七段戦 「一瞬のピンチ」
第9局 北浜健介七段戦(千日手局) 「残り2戦」
第10局 北浜健介七段戦(指し直し局) 「最終盤の逆転」
第11局 杉本昌隆七段戦 「2年連続の昇級を決める」

・棋譜解説=2局(第70期C級1組順位戦から)
・【コラム】(1)研究法 (2)リラックス法 (3)西遊棋1 (4)西遊棋2 (5)電王戦1 (6)電王戦2 (7)あとがきに代えて

◆内容紹介
勢いに乗る旬な棋士たちの、実戦の読みと研究を余すところなく描く
SUPER自戦記シリーズ第5弾!

本書は第71期順位戦B級2組で9勝1敗で見事「1期抜け」を果たした豊島将之七段がその熱戦を自ら解説するものです。藤井九段、森下九段、杉本七段といった強敵と戦った全10局を収録。豊島七段の読みの鋭さ、研究の深さを感じることができます。

また、序盤で少し悪くしても、中盤でミスをしても、最後は勝ってしまう。端的に言えば豊島七段の「強さ」も感得できるはずです。

頂点に向かって今まさに駆け上がっている豊島七段による、研究を交えた自戦解説、棋力向上に役立つことは間違いありません。
その「強さ」を本書で吸収して、ぜひ日々の将棋で実践してください。


【レビュー】
豊島将之七段の自戦記本。SUPER自戦記シリーズの第5弾。

豊島は関西若手筆頭ともいえる棋士で、20歳でタイトル挑戦(王将戦)を果たしている。基本的に居飛車党ながら、どんな戦型でも指しこなす。弱点が少なく、「豊島?強いよね。序盤、中盤、終盤、隙がないと思うよ」という、佐藤紳哉六段の迷言(笑)が彼の強さを端的に表している。

2012年度の第71期B級2組で昇級を果たし、現在B級1組に在籍。SUPER自戦記シリーズを著したこれまでの棋士の中では、最上位である。

本書は、豊島のB級2組順位戦(2012年度)の全10局+αを自戦記で振り返る本である。

豊島はオールラウンダーであるが、本書では基本的に居飛車を持っていることが多い。今期は相手が変化してくることが多かったが、自分から趣向を凝らすことはあまりなかった(相手から「まともにやったら敵わない」と思われているのかも?)。「選択肢が複数あるときは、最も真っ直ぐな順を選ぶ」という傾向がある。

「序盤、中盤、終盤、隙がない」という評であるが、本書の将棋では序中盤を相手にうまく指されて苦戦していることも多い。何とか差がつかないように付いていき、最後に逆転するという展開は、若いときの羽生を髣髴とさせる。

ただし、豊島がよく並べた実戦集として書かれているのは、『谷川浩司全集』シリーズ(谷川浩司,MYCOM,1989〜2005)(p80)や『森下の四間飛車破り』(森下卓,MYCOM,1996)であり、羽生の実戦集は出てこなかった。本書を並べてみた限りでは、光速の寄せ(谷川)や厚みで押す展開(森下)にはなっていなかった。



それでは、各局の内容を簡単に紹介していこう。本書では第71期B級2組順位戦が千日手局も含めて全局掲載されている。棋譜解説部は前期の第70期C級1組なので、省略させていただく。



第1局 vs田村康介六段,2012.06.21
 戦型:▲四間飛車穴熊△左6四銀
   ・矢倉模様からの変化球。
   ・陽動振飛車含みの6手目△4二銀〔右図〕に反応した。
   ・自然な指し手を続けたつもりが、いつの間にか不利に。後手の決め方が危険で、逆転した。
  [定跡講座]矢倉模様から後手の変化球(3p)
  [中盤の急所]△8八飛の変化(1p)
  [中盤の急所]取らせてもよい駒(1p)
  [終盤の解明]一手争いの終盤(2p)
  [終盤の解明]チャンスを逃す(2p)
  [終盤の解明]△3二金の変化(1p)




第2局 vs青野照市九段,2012.07.19
 戦型:角換わり腰掛け銀△6五歩型
   ・互いに手待ちで駒の配置を調節する将棋。
   ・61手目▲3七金〔右図〕が青野の工夫。

  [定跡講座]▲3六歩の意味(1p)
  [定跡講座]△6五歩型について(1p)
  [定跡講座]下火だった△6五歩型(3p)
  [定跡講座]渡辺流△5二金(1p)
  [中盤の急所]期待の△6四角(1p)




第3局 vs藤井猛九段,2012.08.16
   この期の豊島の唯一の敗局。
 戦型:角交換四間飛車
   ・少しずつ指しにくい展開から時間を消費してしまったが、一直線になって後手に勝機のある形勢に。しかし時間切迫のため、競り負けた。

  [序盤の研究]早い△8五歩の訳(2p)
   ・▲8八飛を牽制している。
  [終盤の解明]▲4五桂の変化(1p)
  [終盤の解明]後手の逸機(1p)




第4局 vs南芳一九段,2012.09.13
 戦型:△南流〜四間飛車
   ・右玉を含みにした戦法。詳しくは『南の右玉』(2011)を参照。

  [序盤の研究]南流について(1p)




第5局 vs森下卓九段,2012.10.04
 戦型:角換わり△右玉

  [序盤の研究]森下好みの雁木(1p)
   ・後手が角換わり腰掛け銀を拒否して、雁木を目指す作戦。森下が1990年代によく指していた。書かれている本はあまりない。
  [序盤の研究]先手側の玉形(2p)
   
・右玉に対する先手の玉形の歴史。
    銀矢倉
    →穴熊への組み替え▲8八銀型
    →穴熊への組み替え▲8八金型
    →本譜は「穴熊への組み替え▲8八金型+▲7八銀〜▲4七金」〔右図〕が豊島の工夫。
  [中盤の急所]▲2四歩の攻めが正解か(2p)
  [中盤の急所]△3三銀なら大変な将棋(1p)




第6局 vs中川大輔八段,2012.11.15
 戦型:横歩取り△8四飛-5二玉型
   ・▲4五歩〔右図〕と伸ばされて作戦負け。勝負形になって逆転したものの、先手の陣形の優秀性を認識した一局。

  [定跡講座]さまざまな横歩取り(2p)
  [定跡講座]最近の△5二玉型(1p)




第7局 vs安用寺孝功六段,2012.12.13
 戦型:変則居飛車△右玉
   ・今期右玉は3局もあった。
   ・本局は後手の無理仕掛けを咎めて快勝。

  [序盤の研究]△6五歩なら大変な形勢

   ・△8五桂〔右図〕の仕掛けが無理気味。



第8局 vs畠山成幸七段,2013.01.10
 戦型:横歩取り△8五飛-4一玉型vs▲3八銀-6八玉型
   ・▲森内△渡辺(竜王戦7,2004)と途中まで同じ。前例の多い形から丁寧に指して完封目前だったが、1手のミスで冷や汗をかくことに。

  [定跡講座]さまざまな△8五飛対策(8p)
 
  ・▲7七角+中住まい
   ・▲中住まい+▲3七桂を急ぐ
   ・▲3八銀型中住まい
   ・旧山ア流
   ・▲3五歩-角交換型
   ・▲3五歩-王手飛車定跡
   ・新山ア流
   ・新山ア流対策
  [定跡講座]▲6八玉型(3p)
   ・▲4六歩以前
   ・▲4六歩vs△5四歩
   ・松尾流△5五飛
  [終盤の解明]▲4二となら後手の負け筋(2p)




第9局 vs北浜健介七段,2013.02.07
 戦型:△ゴキゲン中飛車▲丸山ワクチン
   ・千日手局。

  [定跡講座]▲9六歩以前の丸山ワクチン(1p)
  [中盤の急所]前例では先手良し(1p)
   ・▲羽生△久保(王将戦4,2008)がベース。本譜は後手が修正手順〔右図〕を見せた。




第10局 vs北浜健介七段,2013.02.07
 戦型:横歩取らず△8五飛
   ・千日手指し直し局。
   ・後手(豊島)の無理攻めに手厚く対応され、一時は入玉模様で敗勢に。しかし深夜の一分将棋で先手に緩手が出て逆転。

  [序盤の研究]△5二玉と9筋の交換(1p)〔右図〕
   ・
▲鈴木環那△里見香奈(女流王座戦,2012)がベース。
   ・横歩取らずはもはやただの力戦ではなく、研究対象の一つとなっている。
  [終盤の解明]▲3九飛なら後手の負け(1p)



第11局 vs杉本昌隆七段,2013.03.07
 戦型:横歩取り△8四飛-5二玉型
   ・▲3五歩と伸ばす形で▲4六歩〔右図〕が新構想。

  [定跡講座]▲3五歩と突かせても大丈夫という考え(1p)
 
  ・従来は▲3六歩の瞬間が後手の仕掛けのタイミングだった。
  [終盤の解明]最後の関門(1p)




さて、本書とは直接関係ない件について。第71期順位戦(2012年度)の昇級者は9人いたはずだが、どうやらこの5冊で打ち止めのようだ。

 B級1組
  行方尚史八段
  久保利明九段
 B級2組
  藤井猛九段
  豊島将之七段 → 『豊島の将棋 実戦と研究
 C級1組
  稲葉陽六段 → 『稲葉陽の熱闘順位戦
  村山慈明六段
 C級2組
  菅井竜也五段 → 『菅井ノート 実戦編
  阪口悟五段 → 『阪口悟の順位戦昇級のキセキ
  斎藤慎太郎四段 → 『最強最速の将棋

出版されなかった4人は、若手じゃないから断ったのかな…(´・ω・`) 村山六段は出しても良かったのでは。(2014May23)



※誤字・誤植等(初版第1刷で確認):
p35下段 ×「△5九飛と打って」 ○「△5九銀と打って」



【関連書籍】

[ジャンル] 
自戦記
[シリーズ] 
マイナビ将棋BOOKS SUPER自戦記シリーズ
[著者] 
豊島将之
[発行年] 
2014年

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