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マイナビ将棋BOOKS 最強最速の将棋 |
[総合評価] B 難易度:★★★★ 図面:見開き4〜6枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A (棋譜解説編はB) 上級〜有段向き |
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【著 者】 斎藤慎太郎 | ||||
【出版社】 マイナビ | ||||
発行:2013年12月 | ISBN:978-4-8399-4981-5 | |||
定価:1,575円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 |
第1局 中村亮介五段戦「両者1分将棋の熱戦」 第2局 佐藤和俊五段戦「20時32分からの指し直し局」 第3局 菅井竜也五段戦「5連勝同士の直接対決」 第4局 牧野光則四段戦「2番手で迎えた7回戦」 第5局 石川陽生七段戦「7勝1敗の4番手」 第6局 中座真七段戦「昇級より目の前の一局を意識」 ・棋譜解説(4局) ・【コラム】(1)当然の返答 (2)師匠 (3)詰将棋 (4)指導対局 ◆内容紹介 これぞ最強最速。俊英の最先端研究に刮目せよ! 『7連勝で昇級争いの首位に立ってからは昇級の2文字が脳裏をよぎり、気持ちを落ち着けるのが難しかった。初黒星を喫して、「これが順位戦の厳しさなのか」と感じたものである。』(まえがきより) SUPER自戦記シリーズ第四弾は、最注目の関西俊英、「屋敷伸之四段(当時)以来の10代でのC級2組一期抜け」という快挙を果たした斎藤慎太郎五段の研究と実戦を詰め込んだ一冊です。 日々定跡の更新が途絶えない現代将棋。 このSUPER自戦記シリーズでは、定跡書では分からない「現在更新中」の手順を対局者本人の解説とともに堪能することができます。 本書では、第71期C級2組順位戦から相居飛車、居飛車VS振り飛車の対抗形の将棋を幅広く収録いたしました。 序盤では関西若手の最先端の定跡研究を披露。また終盤では、読み筋や局後発見された変化を徹底解説。正着に至るプロセスを学ぶことができます。 将棋界の新星が贈る「勝てる最先端の将棋」、ぜひ手に取ってお読みください。 |
【レビュー】 |
斎藤慎太郎五段の自戦記本。SUPER自戦記シリーズの第4弾。 斎藤は関西期待の若手棋士。14歳で三段、18歳でプロ四段になり、参加1期目の第71期C級2組順位戦において9勝1敗で見事「1期抜け」を果たした。 また、詰将棋の解図能力にも長けており、詰将棋解答選手権では優勝2回など好成績を収めている。解くだけでなく、作る側にもチャレンジ中。(コラム(3)参照) 本書は、斎藤のC級2組順位戦の全10局を自戦記で振り返る本である。 斎藤は居飛車党で、好きな戦型は矢倉と横歩取り。10局を並べていくと、斎藤の棋風が伝わってくるが、「できるだけ多くの駒を効率よく使いたい」とか、「駒の損得よりも働きを重視している」というイメージになる。 書名が『最強最速の将棋』なので、速攻派かと思ってしまうが、実際には、相手からの速攻には「最強」の対応で返すが、自分から仕掛けるときはできるだけ全ての駒の態勢が整ってから。また、寄せでは安全勝ちよりもなるべく「最速」の収束を目指したい。どことなく「王道」が感じられる将棋である。 文章での自戦記は10局中6局、残りの4局は各4pでの棋譜解説となっている。SUPER自戦記シリーズ共通の仕様として、自戦記の途中で「研究」に分岐するが、これまでのシリーズに比べて、研究1回のページ数はかなり多めになっている。特に水面下の変化には多くのページを割いており、棋譜に現れない変化を詳しく見ることができる。 棋譜解説編は1局あたり4pでやや多め。一局の後半は、棋譜と解説が同一見開きにないため、棋譜並べしながら解説を見るのはページを繰る回数が多く、やや面倒。 また、千日手局は掲載されておらず、これは個人的には残念。千日手局だからといって凡局ではなく、そこに至るまでの研究の齟齬や葛藤があったはずなのだから、それも併せて知りたいのである。 それでは、各局の内容を簡単に紹介していこう。なお、自戦記編と棋譜解説編を分けず、対局順に並べ替えてみた。 |
第1局 vs勝又清和六段,2012.06.19 (棋譜解説編@) 斎藤の順位戦デビュー戦は会心譜。 戦型:相矢倉▲4六銀-3七桂、△9五歩型に▲6五歩(宮田新手) ・91手組ではない。 ・がっぷり四つの矢倉は経験豊富とのこと。 |
第2局 vs中村亮介五段,2012.07.17 (本編@) 戦型:▲石田流本組△左美濃 [序盤の研究]最近多い対策△1四歩の狙い(2p) [序盤の研究]指してみたかった形(2p) ・△8四歩のまま保留するとどうなるか? [定跡講座]△5四銀型への対策(3p) ・居飛車の課題テーマの一つ。 [終盤の解明]実戦後の研究(3p) [終盤の解明]終盤戦はとことん読む(2p) |
第3局 vs佐藤和俊五段,2012.08.28 (本編A) 戦型:△角道オープン四間飛車〜4→3戦法 ・千日手局の戦型は第2局と同じ、▲石田流本組△左美濃 [定跡講座]手損ながら有力な作戦(5p) ・4→3戦法へのいろいろな対応策。 「△3二飛〔右図〕は作戦の一つとして有力視されている」(p47) [中盤の急所]形の違いを見抜いた仕掛け(4p) ・石田流型の振飛車に対して、▲2四歩は無効であることが多いが、形によっては仕掛けることができる。お互いに気を付けたいところ。 |
第4局 vs増田裕司六段,2012.09.18 (棋譜解説編A) 戦型:矢倉▲3七銀 2手目△3二金の挑発に乗らず、相矢倉▲3七銀へ。 ▲3七銀に△6四角が普通だが、本譜は△9四歩〔右図〕の趣向を見せたため、先手が呼応して急戦調の将棋に。 |
第5局 vs上野裕和五段,2012.10.16 (棋譜解説編B) 戦型:横歩取り△8四飛-4一玉型 現在は少数派の△8四飛と△4一玉の組み合わせ。後手が早々に5筋の歩を伸ばして先手玉頭に突き捨てた〔右図〕ため、早い将棋になった。 |
第6局 vs菅井竜也五段,2012.11.13 (本編B) 戦型:▲石田流7七角型△左美濃 ▲4五銀〔右図〕が新手。4手前での▲4五銀は既出だが、▲9六歩△9四歩▲9八香△8四飛とあらかじめ受けたところに▲4五銀が菅井の新構想。 [序盤の研究]研究していた形(2p) ・斎藤の予想は▲4五銀に替えて▲4六歩で、以下ダイヤモンド美濃を想定していた。 [中盤の急所]指しきれなかった△2三銀(3p) ・新手▲4五銀は、△3四歩の取りになっている。後手は二択で、△2三銀か、本譜の△2三玉か。 ・先手が想定していた読み筋はここで解説。 [終盤の解明]最後の勝負手(4p) ・先手にはあえて飛金両取りをかけさせる勝負手があった。 |
第7局 vs牧野光則四段,2012.12.18 (本編C) 戦型:矢倉▲4六銀-3七桂△8五歩型→銀損定跡 本譜の序盤は定跡手順が続くため、自戦記というよりも矢倉の概要や定跡を解説する内容になっている。 p110の△3六歩〔右図〕が後手の新手。本譜では成功したとは言えなかった。 [中盤の急所]やや強引に見える仕掛け(3p) ・銀損定跡の△4五歩に替えて、△8六歩▲同歩△9五歩と仕掛ける順について。 [中盤の急所]互いに別の読み筋(6p) [終盤の解明]作ったような不詰(3p) ・詰まされると思っていた変化が、絶妙の合駒で逃れられることが判明。 |
第8局 vs村中秀史六段,2013.01.08 (棋譜解説編C) 斎藤の唯一の敗局。終盤で一時は斎藤の勝ちになっていたが、1分将棋の中で寄せを誤った。 戦型:横歩取り△8四飛-5二玉型 |
第9局 vs石川陽生七段,2013.02.12 (本編D) 戦型:△角交換四間飛車▲玉頭位取り〜地下鉄飛車 ・本譜では先手が▲2五歩を保留したため、▲2六歩vs△2四歩型〔右図〕になった。 [序盤の研究]▲2五歩型(5p) ・▲2五歩△2二飛▲4六歩に逆棒銀は? ・▲2五歩△2二飛▲3六歩に△4四銀〜△3五歩は? ・▲2五歩△3五歩〜△3四銀は? [序盤の研究]自然な△3三桂(2p) [中盤の急所]後手陣に厳しく攻め込む変化(3p) [終盤の解明]少しの違いが勝負を分ける(2p) ・後手が先に角を渡したことで形勢が逆転した。 |
第10局 vs中座真七段,2013.03.05 (本編E) 戦型:横歩取り△8五飛-4一玉型▲7七角型中原囲い [序盤の研究]序盤のさまざまな変化(9p) ・本譜で▲1六歩〔右図〕を急いだ理由について。代わる有力手▲5九金の変化と、▲1六歩以下の想定手順を解説。 [終盤の解明]終盤の詰みに関する変化(5p) |
居飛車党の方は、シリーズ1冊目の稲葉版と併せて読んでみよう。同じ居飛車党でも棋風の違いがあり、特に優勢なときの勝ち方や、不利になった時のチャンスの求め方に注目して並べてみるとよいだろう。(2014Mar28) |