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■最新定跡村山レポート

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最新定跡村山レポート
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マイナビ将棋BOOKS
最新定跡村山レポート
[総合評価] A

難易度:★★★★☆

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
有段向き

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【著 者】 村山慈明
【出版社】 マイナビ
発行:2012年7月 ISBN:978-4-8399-4377-6
定価:1,575円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
第1章 相矢倉 ・△9五歩型と△8五歩型
 ├(穴熊を牽制する△9五歩)
 └(飛車先を伸ばす△8五歩)
46p
第2章 中飛車 ・ゴキゲン中飛車vs超速▲3七銀
 ├(△4四銀型を目指す△4二銀)
 └(自然に玉を囲う△6二玉)
48p
第3章 角換わり ・先後同型と専守防衛型
 ├(先後同型にする△7三桂)
 └(主流の待機策△3三銀)
30p
第4章 横歩取り ・中座飛車と浮き飛車
 ├(△8五飛-4一玉型vs▲新山ア流)
 ├(△8五飛-5二玉型)
 └(△8四飛)
64p
第5章 実戦編 ・震災当日の一局 対郷田真隆九段戦
・初めてゴキゲン中飛車を指す 対佐藤紳哉六段戦
27p

◆内容紹介
プロの最新定跡「序盤は村山に聞け!!」

最近のタイトル戦を初めとする重要な対局で現れた戦型は矢倉、中飛車、角換わり、横歩取りの4種であるといっても過言ではありません。
本書は「序盤は村山に聞け」といわれるほどの定跡通として知られる村山慈明六段が現代将棋を代表するその4つの戦型についてプロの最新定跡を詳細かつ丁寧に解説したものです。
普段の将棋でライバルに一歩先んじたい方、またプロの最先端の将棋をより深く理解したい方に、必読の一冊です!


【レビュー】
定跡最前線の解説書。

表紙オビに「作戦負けしない男」とある通り、村山は最先端の変化に非常に詳しい。2006年以降、これまでに3冊の最前線書を記しており、本書は4冊目となる。

これまでは、一冊の中でかなり多くの戦型を扱う傾向があったが、本書では相矢倉▲4六銀-3七桂、△ゴキゲン中飛車vs▲超速、角換わり腰掛け銀、横歩取り△3三角の4戦型に絞られている。


各章の内容をチャートを添えて紹介していこう。

第1章は、矢倉▲4六銀-3七桂戦法。現代では、途中で阿久津流急戦矢倉に変化する余地はあるものの、43手目の▲1八香まではほぼ一直線に進む。ここで、先手の居飛穴を牽制する△9五歩か、あえて居飛穴に組ませる△8五歩に分かれる。

△9五歩を選んだ場合は、2002年登場の宮田新手▲6五歩から、▲3五歩から仕掛けて後手が△3七銀と玉頭を開拓する手が本章のメイン。この変化は、羽生vs渡辺でNHK杯で2回(2011年3月、2012年3月)戦われており、その将棋の最終盤の検討までギッチリ行われている。また、▲5五歩からの仕掛けも谷川新手(2012年1月)の登場で見直されつつあり、研究課題となっている。

△8五歩を選んだ場合は、先手は居飛穴を目指す。この変化は、先手の仕掛けが通るかどうかが焦点になっており、先手が一方的に攻める展開になるものの、結論はまだ出ていない。



第2章は、ゴキゲン中飛車vs超速▲3七銀戦法。現状のゴキ中対策は、「猫も杓子も超速」の状態だ。10ヶ月前に出版された『速攻!ゴキゲン中飛車破り』(中村太地,MYCOM,2011.09)では、後手の玉型と△3二金/△3二銀の違いが詳細に検討されていたが、時代の移り変わりは速く、本章では「銀対抗型の相穴熊」と「菅井流△4四歩」に絞られている。(中村本の変化は全て居飛車良しになったのだろうか?)

「銀対抗型の相穴熊」は、常に評価が揺れ動いている状態。書籍や文献によっては、「居飛車良しの結論が出た」と書かれていたこともあるが、いまだ結論は出ていないようだ。

相穴熊までは一直線で、袖飛車(▲3八飛)の仕掛けを見越してどのように構えるかが一大テーマ。なお、ゴキ中党で、本書の仕掛けられ方に自信がない方は、『ゴキゲン中飛車対超速 銀対抗相穴熊 対袖飛車の研究』(mus-musculus,個人出版/電子書籍,2012.06)を比較検討してみてください。

「菅井流△4四歩」はまだ歴史が浅く、2011年11月15日が公式戦初登場。部分的には「歩越し銀には歩で対抗」であるが、先手玉が不安定なうちに▲4六銀に働きかけ、銀を引っ張り込んで捌こうという意図がある。ただし、一時的に角道が二重に止まっているという欠点もある。こちらも一時期「決定版が出た」という記述を見かけたが、まだ指されているようだ。



第3章は、角換わり腰掛け銀。

同型からの仕掛けは、▲2二歩の富岡流が決定版となり、現在は指されていない。富岡流の詳細は、『豊島将之の定跡研究』(豊島将之,MYCOM,2011.01)の第5章を参照。本書では、最終決定版の変化のみを解説している。

同型がダメなら、後手は形を変えるしかない。2010年や2011年の竜王戦七番勝負で現れたような、飛や金を動かして少しずつ形を変えながら待つ作戦も注目株ではあるが、本章では「専守防衛型」を扱う。△7三桂を跳ねずに、△3三銀▲4八飛からあえて▲2五桂と跳ねさせる。「専守防衛型」といいつつ、△7五歩から反撃し、6七で飛を切る形がメインテーマ。代表的なのは、▲羽生△渡辺(2011年9月王座戦第1局)、▲羽生△森内(2012年4月名人戦第2局,同6月名人戦第6局)など。



第4章は、横歩取り。一時期は新山ア流に押されて廃れかかっていたが、△5二玉型の中原囲い(松尾流)の発見から選択肢が広がり、さらに△8四飛型も見直されたことで研究対象が大きく広がっている。先手側が▲8七歩を打っていることを生かして、▲6八銀型の中原囲いで後手陣より堅いことを主張したり、後手も単純に中原囲いにしないなど、新たな動きが出てきている。

また、新山ア流も本章で大きく扱っており、結論が出たとまではいえないようだ。『横歩取り必勝ガイド』(稲葉陽,マイナビ,2012.02)で「千日手になるかも」と喚起された△1五角▲2五飛△3三角は、先手が打開する変化が載っている。

横歩取りは、本書の主要4戦型の中では、もっとも工夫の余地がある戦型かもしれない。



本書では、これまでのマイナビ棋書と比べて、算用数字のフォントが若干幅広になっているため、棋書に慣れている人ほど違和感があるかもしれない。ただ、読み進めていくと違和感はだんだん薄れるので、些細な問題のようだ。

今回は、10年、20年の長きにわたって戦われた戦型が多く、非常に深いところでの検討が多かった。相居飛車のページが多く、アマでの出現率は低いので、今回は「プロ将棋観戦ガイドブック」としての意味合いが強い。現在のA級やタイトルホルダーは居飛車党率が高いので、高段戦をよく観る人にはオススメの一冊。


※誤字・誤植等(初版第1刷で確認):
p117参考11図 ×「▲2六歩がない+後手の持駒が角歩二」 ○「▲2六歩がある+後手の持駒が角歩」
p128 「以降、第26図では△7五歩が主流となった」 誤植ではないが、ちょっと意味がつかめない。直前までは、この変化が先手良しになることを述べているので、その流れからすれば「以降、第26図では△7五歩が指されなくなった」のような、後手がネガティブな表現になると思われるが…
p184 ×「第78図以下の指し手@」 ○「第78図以下の指し手」 (「第78図以下の指し手A」が存在しない)



【関連書籍】

[ジャンル] 
総合定跡書
[シリーズ] 
[著者] 
村山慈明
[発行年] 
2012年

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