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マイコミ将棋BOOKS 速攻!ゴキゲン中飛車破り |
[総合評価] A 難易度:★★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 有段向き |
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【著 者】 中村太地 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2011年9月 | ISBN:978-4-8399-3987-8 | |||
定価:1,470円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||
・【コラム】棋士の生活 |
【レビュー】 |
△ゴキゲン中飛車vs▲超速と、▲5八金右超急戦の定跡書。 内容の8割は▲超速で、残りの2割が▲5八金右超急戦。▲5八金右の方は、既存棋書に載っていないのは「渡辺新手」くらいなので、本書は実質的に「一冊ほぼ丸ごと▲超速の本」だと思ってよい。タイトルは「ゴキゲン中飛車破り」だが、基本的に公平な目線で書かれており、形勢判断の難しい局面では著者自身がどちらを持ちたいかの見解も書かれている。 各章の内容を、チャートを添えて紹介していこう。 第1章は、△ゴキゲン中飛車vs▲超速3七銀。プロ公式戦の初登場は2009年12月で、まだ2年弱しか経過していないが、いまやゴキゲン中飛車の対策は大半がこの「超速」になっている。▲6八玉型で素早く▲3七銀〜▲4六銀と繰り出し、にらみを利かす。 ●超速が載っている棋書 チャートが膨大で、非常にややこしく見えるが、ポイントは後手の玉の位置と、3二に上がる駒の種類。 ・△3二Xと上がるときの後手の玉の位置 ├居玉 (0手) ├△7二玉型 (居玉から2手) ├△7一玉型美濃囲い (居玉から3手) └美濃囲い (居玉から4手) ・△3二金 or △3二銀 ├△3二金:バランス重視。2筋を守っているので、左銀を使いやすい。 └△3二銀:堅さ重視で、強い捌きを望む。反面、陣形の進展性が乏しい。 当然ながら、後手が玉型にかけた手数分だけ、先手の手も進んでいるので、それぞれ異なる展開になる。 これらをほぼ網羅したことで、超速については現時点(2011年9月)で最強の棋書といえる。 また、結論や考え方も変化しているので注意。例えば、超速に△4四銀型で対抗するのは、持久戦にされて面白くないというのが従来の考え方だったが、「最近までこの指し方はあまり冴えないとされていたが、今は見直されている」(p164)。 なお、特に第1章は168pとかなり分量が多いにもかかわらず、節で分けられていないため、見たい局面を探すのがかなり大変。ぜひチャートを参考にしてください。 第2章は、▲5八金型超急戦。決戦型と決戦回避型に分かれる。 前半は、決戦型。現在テーマになっているのは〔下図(△2七角まで)〕で、本書では図までは一直線に進む。もちろん、図までにも多くの変化があるので、調べたい人は次の一覧を参照してください。 ●△ゴキゲン中飛車vs▲5八金型超急戦が載っている棋書 メインは、本書出版の7ヶ月前に指された「渡辺新手▲1三龍」(棋王戦第2局,2011.02.26)だが、すでに後手良しの結論が出ている。「現時点では後手が良いという認識で、先手の新手待ちの状況だ」(p189)とのこと。 後半は、後手が決戦を回避する作戦。先手の2筋歩交換に△3二金と妥協するのは、先手良し。▲5八金に△6二玉or△9四歩とする変化は、『ゴキゲン中飛車超急戦研究 第1章 【超急戦回避】超急戦を指す必要性』(山木耕路,2011.04)に載っているものとほぼ同じである。 「超急戦回避策は、基本的に後手が受け身となるためプロ間ではあまり指されていない」(p222)とのことだが、アマの実戦ではこの変化球が用いられることも多い。先手で▲5八金右を指す人は、回避策の対策も必要だ。 プロ最先端で戦われている戦型なので、鮮度の劣化も早いかもしれないが、少なくとも超速については数年後も基本ベースの確認ができるだろう。「超速が詳しく書かれた本を教えてください」と訊かれれば、今後はまず本書を薦めることになると思う。(2011Oct03) ※誤字・誤植等(初版第1冊で確認): p72 ×「プロの実戦例もあので」 ○「プロの実戦例もあるので」 |