zoom |
早分かり 石田流定跡ガイド | [総合評価] A 難易度:★★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:B 有段向き |
||
【著 者】 所司和晴 | ||||
【出版社】 マイナビ | ||||
発行:2012年5月 | ISBN:978-4-8399-4186-4 | |||
定価:1,470円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 |
第1章 △8五歩早突き型 第2章 △4二玉早上がり型 第3章 △6二銀型 第4章 端歩突き越し型 第5章 △3五歩型相振り飛車 第6章 △5四歩型相振り飛車 第7章 △4四歩型相振り飛車 ◆内容紹介 渡辺明竜王推薦!定跡伝道師・所司和晴七段が贈る早分かりシリーズ第2弾! 『早分かり 中飛車定跡ガイド』に続く、所司和晴七段による定跡ガイドです。今回はプロ、アマ問わず大流行中の「石田流」戦法について、石田流側、対石田流側の両方の立場から中立に解説しています。見開きでひとつのテーマが完結するため分かりやすく、また参考図にはすべて形勢判断が入っているので、解説を読まなくても、局面を見るだけで形勢がひと目で分かるようになっています。 これから石田流を得意戦法にしたい方も、いつも石田流の対策に悩まされている方も、一冊で定跡を覚えられるファン必読の内容です。 |
【レビュー】 |
石田流の定跡書。 石田流は、江戸時代からある戦法であるが、約40年前に「升田式石田流」で一つのピークがあった。ブームが去ったあとは、一部の棋士が細々と指していたが、約10年前に「鈴木流早石田」が発見されてからは新手の宝庫となり、大きく発展している。 本書の前バージョンである『石田流道場』(所司和晴,MYCOM,2004)から8年近くが経過して、最前線で戦われている形も大きく変わった。大きな傾向としては、次のようなものがある。 ・序盤10手以内の新手が次々と現れた ・持久戦での▲7七角が新しい捌きの形として現れた ・後手が△8五歩型でなくても升田式石田流(角交換)を目指す指し方が現れた ・後手の対策として、相振飛車が大きな存在感を見せるようになった ・相振りを意識した序盤(4手目△1四歩)も出てきた 各章の内容を、チャートを添えて紹介していこう。 まず、全体の概要は下図のようになっている。 第1章は、△8五歩早突き型。4手目△8四歩〜△8五歩と、後手が続けて飛先を突いてくる形だ。先手の角道止めから石田流本組を阻止するには唯一の作戦で、「最強の手」といわれたこともある。ただ、かつての升田式石田流だけでなく、現在では先手の様々な形に対応する必要があり、かなりハードルが高くなっている。 p48〜53では、升田式石田流の急戦定跡で、以前(例えば『真・石田伝説』(週刊将棋編,MYCOM,1992/2003)など)は先手良しだった変化が覆っている。 第2章は、4手目△4二玉。『石田流道場』ではほぼ乱戦定跡のみだったが、後手良しの結論がほぼ出ている。本章では、「先手を角道止めに限定させる作戦」として有力視されており、以前からある戦いに合流するケースが多い。その中でも▲7七角型は新しい捌きの形として注目株。本章での戦い方については、『石田流の基本 【本組みと7七角型】』(戸辺誠,浅川書房,2012.02)も参照するとよい。 第3章は、4手目△6二銀。比較的穏やかな作戦で、後手の採用率も高い。ただし、先手は角道を止めるかどうかを選択できる。止めれば第2章のような展開になるし、止めなければ△8四歩型vs升田式石田流の戦いになる。本章では、先手が角道を止めない形について解説している。 第4章は、4手目△1四歩。相振飛車を見越した作戦だ。先手が端歩を受けると、相振りになったときに端攻めが早くなってしまって、駒組み段階で先手が損をしやすい。なので、先手は端歩を詰められるのは甘受し、後手の陣形の立ち遅れを主張点とする。後手としては、相振りでも居飛車でも指しこなせる人ならば、非常に有力な作戦だと思う。 第5章は、4手目△3五歩の相振飛車。これは昔からある形で、以前は相金無双になりやすかった。最近は、金無双よりも立体的な高美濃や矢倉を目指す戦いになってきている。 また、p192からの角交換型は、つい最近、週刊将棋の相振り手筋講座(美馬和夫氏の講座)で紹介されていた。角交換から角を打ち合ったあと、△2二飛!が新しい手。この変化は初見だとかなり動揺してしまうようなので(美馬氏によれば)、先後どちらを持つにしても研究しておきたい。 第6章は、4手目△5四歩。角交換から△4五角に▲7六角の返し技を無効にさせる意味で、先手は角道を止めることになる。以前は後手は居飛車で戦っていたが、最近はほぼ相振り専用となっている。 第7章は、4手目△4四歩。やや消極的な感じはするが、穏やかな相振飛車を狙う。 10年前、わたしはある人から「4手目△4四歩?そんな手はない、大損だ」と言われたことがあるが、相振りの技術が進歩した現在では、これも十分一つの作戦として成立している。後手はスムーズに向飛車に振れることを主張点としている。 石田流は、(超速ばかりになっている)ゴキゲン中飛車と比べて、序盤からの非常に広がりが大きい。そのためか、本書では多くの変化で「これも一局」という扱いになっており、自分の調べたかった変化が「これも一局」になっていた場合は、残念に思うかもしれない。 ただ、この8年での石田流の進歩がまとめられているのは大きい。指しこなし方は他書で学び、細かい変化や検討例があるかどうかを本書で調べるとよいと思う。(2012Jun30) ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p134 ×「後手から角交換させて」 ○「先手から角交換させて」 |