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■石田流の基本 【本組みと7七角型】

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石田流の基本
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最強将棋21
石田流の基本
【本組みと7七角型】
[総合評価] A

難易度:★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜有段向き

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【著 者】 戸辺誠
【出版社】 浅川書房
発行:2012年2月 ISBN:978-4-86137-034-2
定価:1,470円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
プロローグ
第1章 石田流VS急戦
第2章 石田流VS左美濃・銀冠
第3章 石田流VS居飛車穴熊
コラム

◆内容紹介
将棋ファンのみなさんが「こんな戦法なら自分でも指してみたい」と思うような石田流はどんな石田流なのでしょう?そのように考えてみたら、「玉をしっかり囲ってから攻める」という《将棋の基本》に忠実な石田流の本ができあがりました。
相手からの乱戦は未然に防ぎ、自分からも乱戦にしない、そんな石田流です。
石田流の駒組みとして、江戸時代から指されている「
本組み」に加え、ここ数年大ブレイクしている「7七角型」の2種類を紹介します。新旧2タイプということになりますが、いずれも現代的センスをふんだんに取り入れた駒組み・さばき・指しまわしですので、多くの場面で、これまでの常識をくつがえすことになります。
居飛車の作戦は棒金や二枚銀などの急戦から、左美濃や銀冠、穴熊といった持久戦までさまざまありますが、本書はそのすべてに対応しています。石田流入門としても、自分の石田流をもう一度見直したい方にとっても、すこぶる役に立つ内容のはずです。
本書が目指したのは「将棋ファンのための石田流」です。プロにしか指しこなせないような超高度な石田流ではありません。


【レビュー】
石田流の解説書。

「石田流は攻めの理想形」──皆さんも、このように書かれた本を目にしたことがあるだろう。〔右図〕の左辺が「石田流本組み」と呼ばれる駒組みの典型的な配置である。

わたしも級位者時代に、石田流に特別な思いがあった一人だ。7六飛という、居飛車ともノーマル振飛車とも違う、特異な配置に憧れた。父には「飛が一歩も動けない」などと揶揄されたが、わたしは石田流の優秀さを信じて疑わなかったし、この形にできただけで満足していたりもした。

ただ、いざこの形になってみると、この後どのように指せばよいかわからなかった。いろいろな棋書を探してみたが、仕掛け方が載っている本はなかなか見つからない。当時は石田流が流行っていなかった(ヒネリ飛車は流行っていたが)ので棋書も少なく、そもそも「こんな理想形には組ませない」という時代だった。

本書は、石田流の駒組みのプロセスと、組んでからの仕掛け方を詳しく解説した本である。こんな本を待っていた、ありそうでなかった本である。

本書では、先手が角道を止めて駒組みするのが基本。なので、3手目▲7五歩に対して、4手目△8八角成や、△8四歩〜△8五歩と来た場合は、この形にできない。ただし、経験上は8割以上の確率でこの形を目指すことができると思う。

メインとなっているのは、「本組み」(▲7七桂型)と「▲7七角型」の2つ。「本組み」は重厚な攻め味が特徴で、「▲7七角型」は▲6五歩から角交換挑戦し、二次攻撃を行う。これらを、相手が目指そうとしている形に応じて使い分ける。大事なのは「駒組み」。相性の悪い構えを選んでしまっては、「理想形」どころか惨敗の憂き目に遭う。また、「仕掛け」「捌き」も正確さが必要だ。本書でいろいろなパターンを憶えたい。


各章の内容を、チャートを添えて紹介していこう。

第1章は、vs急戦。大別して「棒金」と「袖飛車(△7二飛)急戦」の2通りがある。

対棒金では、△8三金に▲7八飛〜▲6七金とする型が有名だが、本書では基本的に石田流本組み(▲7七桂型)で待つ。大駒の一方が捌けるなら、他方は思い切って切ることを心掛けるのがコツ。

 ・スピード棒金には、△7四歩に▲6五歩一発で勝負。
 ・二枚銀からの本格棒金には、△7四歩▲同歩△同金に▲6五歩。
 ・△8四金からの棒金には、玉頭銀を絡ませるのが有力。
 ・「後手が棒金を急ぐなら4筋を争点にする。後手が4筋をケアするなら…8筋から動く」(p49)

袖飛車急戦は、7筋で一歩交換して、銀を8三へスイッチバックさせる指し方。スピード・効率に優れている。飛が向かい合うので、互いに大捌きがある。こちらも基本的には石田流本組みで戦う。

 ・「多くの場合、▲6五歩がさばきの起点で、▲7四歩と突き出す手が切り札になる」(p100)




第2章は、vs左美濃・銀冠。対石田流では居飛穴にやや組みにくいので(第3章で扱う)、次に堅い囲いである左美濃(△3一玉型)から銀冠を目指す展開は多い。先手は▲7七角型と本組み(▲7七桂型)を選べる。

▲7七角型は、相手が左美濃以上の堅い形を目指してきたときに有効で、「軽い捌き」を身上とする。好機に▲6五歩と角交換を挑むが、単なる角交換に終わっては失敗。続けて飛or銀を捌くか、相手に妥協させるようにする。

▲7七桂型では、意外にも重厚な攻めは難しいが、単騎の桂跳ねと、高美濃からの攻撃が有効。




第3章は、vs居飛穴。対石田流では、駒が偏るため居飛穴に囲いにくい。とはいっても、やはり組んでしまえば玉が堅くて頼りになるため、使用者も多い。本章でも、先手は本組み(▲7七桂型)と▲7七角型を選べる。

本組みでは、居飛穴に離れ駒があるうちに仕掛ける。固められてからでは厳しいので、序盤を慎重に。

▲7七角型では、居飛穴側が無策の場合は存分に捌ける。後手は△8四飛〜△9四歩とケアすれば居飛穴に組めるが、この場合は角の転回から本組みに組み替えるのが良い。さらに後手が6筋を突いてこない場合は、▲7七角+▲7八金型で角交換を挑んで捌く。

また、「石田流+穴熊はバランスが悪い」とされることが多いが、後手が穴熊の場合は相穴熊も有力。著者も愛用の自慢の構想はp209から。重要なのは▲4六歩を突くタイミング。



定跡を解説するだけでなく、いろいろな場面で応用が利く手筋や考え方が随所で解説されている。本書をしっかり読めば、「石田流に組んでから困る」ということはなくなるだろう。早石田系の乱戦には強いが、持久戦の方が勝率が悪い人には特にオススメだ。これからは自信を持って角道を止めたくなる(笑)に違いない。(2012May15)

※誤字・誤植等(初版で確認):
p79 ×「以下△5二金に…」 ○「以下△4二金に…」 (本文に合わせるなら、図面の方を△5二金に修正)
p81 ×「あまりも有名だが」 ○「あまりにも有名だが」



【関連書籍】
 『
石田流の基本 【早石田と角交換型】
[ジャンル] 
三間飛車
[シリーズ] 
最強将棋21
[著者] 
戸辺誠
[発行年] 
2012年

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