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■はじめてでも勝てる将棋入門

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はじめてでも勝てる将棋入門
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はじめてでも勝てる将棋入門
60分でわかる!
[総合評価] A

難易度:★

図面:見開き3〜6枚
内容:(質)A(量)B
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
入門〜初心向き

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【著 者】 神吉宏充
【出版社】 PHP研究所
発行:2011年2月 ISBN:978-4-569-79445-7
定価:1,155円(5%税込) 175ページ/19cm


【本の内容】
第1章 駒の種類と動かし方 歩の動き/香車の動き/桂馬の動き/銀将の動き/金将の動き/金将・銀将の動きの特徴/角行の動き/飛車の動き/王将の動き/置き場所で変わる駒の能力/駒の表と裏/歩・香・桂・銀は金になる/馬・竜の動き 20p
第2章 将棋のしくみ 9x9の戦場/駒が成るには?/駒の住所 筋と段/駒の取り方/駒を取ってみよう!!/「成る」ってすごい!!/駒の強さ 34p
第3章 取った駒を打つ 取った駒の使い方 16p
第4章 将棋の勝ち負け 「詰み」とは?/アタマとハラとオシリ/王どうしが接近すると……/二歩は禁止/打ち歩詰めは反則/引き分け 28p
第5章 対局してみよう 駒の並べ方/対局を始める/イメージでおぼえる/棒銀戦法/中飛車戦法 22p
第6章 必殺!鬼殺し 鬼殺し戦法の指し方/新・鬼殺し(その1)/新・鬼殺し(その2) 47p

◆内容紹介
将棋界のエンターテイナーが将棋のイロハを楽しく解説。神吉流なら、駒の並べ方・動かし方、攻めと守りのワザを読むだけでマスター!


【レビュー】
将棋の入門書。

神吉は今年(2011年)に現役を引退したが、「棋界のエンターテイナー」として知られ、テレビの将棋特番などでは相変わらず強い存在感がある。その一方で、10年前から保育園で5歳児に将棋を教えるなど、普及にも努めている。

本書は、そんな神吉が書いた、将棋をまったく知らない子どもでも対局できるような入門書である。

レイアウトは〔右図〕のようになっている。
 ・文章はすべてルビ付き
 ・2色刷り(黒+なぜか紫)
 ・図面は見開き3〜6枚
 ・矢印を多用
 ・駒が少し立体的に見えるような影付き



本書の大きな特徴は、「進級制」を採っていること。30級からスタートし、ある一定の条件を満たせば、本を読み進めていくだけで7級まで認定するというものだ。このシステムによって、「もう1つ昇級するまでやってみようかな」という気持ちになりやすく、途中で挫折しにくくなる。

なお、7級は「誰かと対局するのに、十分な実力」(裏表紙折り返し)ということだ。つまり、本書は「ルールをまったく知らない状態」から「対局できるようになる」までお膳立てすることを目指しているのである。

各章の内容を、進級の条件で列記してみた。

 30級:将棋がどんなゲームか分かったら

第1章 駒の種類と動かし方
 29級:歩香桂金銀の動きを覚えたら
 28級:角飛玉の動きまで覚えたら
 27級:置き場所によって駒の能力が変わることが分かったら
 26級:成り駒の動きまで覚えたら


金銀の動きは初心者にはなかなか覚えにくいものだが、本書では「自分の覚えやすい形をイメージする」ことを推奨。例として「金はウチワ」「銀は人が手足を伸ばしている」など。もちろん、別の入門書に書かれているような「銀はゾウ」「金は手」などでもかまわない。

第2章 将棋のしくみ

 25級:駒の位置を符号で言えたら
 24級:相手の駒を取れたら
 23級:ルールどおりに駒を取る練習をクリアしたら
 22級:成/不成のどちらが得か分かったら
 21級:両取り状態で、どちらを取るのが駒得か分かったら


第3章 取った駒を打つ
 20級:駒得できるように持ち駒を打てたら

第4章 将棋の勝ち負け
 19級:易しい1手詰を解けたら
 18級:二歩と打歩詰めを理解できたら
 17級:相入玉と千日手を理解できたら


第5章 対局してみよう
 16級:初形を並べられたら
 15級:初形から矢倉囲い、美濃囲い、穴熊囲いを組めたら


この章は、なかなか脳内だけではついていけないと思うので、盤と駒を使って繰り返し練習してみよう。

第6章 必殺!鬼殺し
 14級:鬼殺しを5手目まで覚えたら
 13級:角交換して飛銀両取りに▲5五角と打てたら
 12級:▲7八飛と回る手が分かったら
 11級:7三で清算して優勢だと分かれば
 10級:玉の早逃げが分かれば
 9級:新鬼殺しで▲7三桂成と捨てる手が分かれば
 8級:5手目△6四歩を破る順が分かれば
 7級:4手目△6二金対策がイメージで分かれば →
「誰かと対局するのに、十分な実力」

入門書で教える戦法は棒銀や四間飛車が多いが、本書ではなんと「鬼殺し」を採用。戦いが始まるまでの手数が短いのと、「まずは駒組みとか考えず、楽しくやってみよう!」ということのようだ。

本章では鬼殺しの戦いを1手ずつ図面をつけて解説。棋譜が読めなくても特に問題はない。岐れの局面で「優勢」の理由が詳しく書かれていないのが惜しい。


両取り以外の手筋の解説はほとんどなく、「キッチリ強くなりたい」という人にはあまり向いていない本だが※1、「とにかく指せるようになりたい」という人や、「子どもが指せるようになってほしい」という人には絶好の一冊だと思う。


なお、本章での「新鬼殺し」は、『新鬼殺し戦法』(米長邦雄,山海堂,1993)とは別物で、鬼殺し対策である「4手目△6四歩」と「4手目△6二金」を打ち破る方法。特に△6二金対策は斬新で、5手目▲2六歩!からヒネリ飛車のような形にする。『神戸発 珍戦法で行こう』(島本亮,MYCOM,2006)に載っていた「浮雲」(第4章第6節など)と似た発想だ。

もちろん、簡単に破ってしまえる訳ではなく、これからの勝負となる。先手は形を決めてはいるものの特に手損はない一方で、後手は△6二金という悪形を指しているわけだから、十分バランスは取れていそうだ。特に、相手の4手目を見てから後出しができるのは大きい。

初心者がこれで勝てるかどうかはともかく、鬼殺しには「▲7七桂と跳ねたらあとは行きっぱなしのハメ手」のイメージがあったので、これは相手の油断も誘えて面白そうだ。「鬼殺しだと、バカにすんな!」と、心理的に平常心を保ちにくい効果もある。上級者も一見の価値ありだ。(2011Jul13)


※誤植・誤字等は特にありませんでした。(第1版第1刷で確認)
※1 ^ キッチリ強くなりたい人には、たとえば『佐藤康光の将棋を始めよう』(佐藤康光,日本放送出版協会,2008)などがオススメ。



【関連書籍】

[ジャンル] 
入門書
[シリーズ] 
[著者] 
神吉宏充
[発行年] 
2011年

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