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NHK将棋シリーズ 佐藤康光の将棋を始めよう |
[総合評価] A 難易度:★〜★☆ 図面:見開き3枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:S 読みやすさ:A 初心者〜初級向き |
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【著 者】 佐藤康光 | ||||
【出版社】 日本放送出版協会 | ||||
発行:2008年8月 | ISBN:978-4-14-016165-4 | |||
定価:1,050円 | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||
・【コラム】先手と後手の決め方/千日手/持将棋 |
【レビュー】 |
初心者・初級者向けの将棋入門書。 本書は駒の動き方から解説した入門書であるが、同時に「将棋の本当の基本」を解説した「脱・初心者の本」でもある。一冊を通じて、「超初心者のうちから正しい大局観を身に付けてほしい」という思いを感じる。 第1章は将棋のルールを基本から説明。駒の動ける場所を図面に色を塗って解説しているのは普通だが、本書の場合は後手の立場での利きのもその場で図解しているのがいい。さらに、一段金の良さや一段銀の悪さなどもその場で視覚的に表している。また、「成銀」「成桂」「成香」などのネット表記「全」「圭」「杏」に触れているのも現代的で良い。 第1章の後半では、将棋の基本的な操作である「駒の取り合い」の話になるが、この時点で早くも「駒の価値」について触れる。駒の価値を点数化するのは、初級向け以上の本ではときどき見かけるが、入門書で駒の動きを覚えた直後に教えるのは初めて見た。個人的には、これは大ヒットだと思う。初心者がよく陥る勘違いの一つが、「無茶な駒の交換」だからだ。これを早い段階で知っていないと、なかなか悪い癖が抜けず、中級者クラスでも「大きな駒損をして飛車を成る」ということをしてしまう(昔のわたしσ(^-^;)です)。この「駒の価値」の解説は、章が変わっても点数表を再掲しながら何度も解説されており、著者が最もマスターしてほしい原則なのだな、と思う。 第1章の最後で、ようやく棋譜の読み方(さすがにこれを覚えないとこれ以上棋書を読めない)と詰みの概念が出てくる。棋譜の読み方で、初心者にはかなり分かりにくい「5八金右」などの補足記号も丁寧に解説してある(わたしが初心者の頃はここでつまづきました)。また、有段者には常識でも初心者には意外と読み方が分からない漢字(例:不成(ならず))などにはしっかりとルビが振ってある。 第2章前半は、陣形の作り方。囲いの紹介は普通だが、中央ではなく端のほうに囲ったほうが良い理由について書かれている入門書を見たのは初めてかもしれない。また、「形勢判断の4要素」についても触れている(これについては、本書のラストでもう一度復習がある)。形勢判断の4要素は、マスターすれば一生使える一方、教えてもらわなければいつまでたっても気づかない。 第2章中盤は、「数の原理」について。将棋には「数が多ければ破れる」という大原則があるが、これについて詳しく解説。ただし、これも第1章で「駒の価値」をちゃんと理解できているからこそだ。 第2章の後半は、駒の原則的な手筋について。さすがにこれは入門書一冊ではなかなか書き切れないところなのでシンプルにまとめているにとどまっているが、金銀の特性とそれを生かした使い方、さらに「カベ駒」の修復について触れているのは特筆。 第3章は終盤の話。冒頭p187の「得な手7か条」(「7か条」は私が勝手に付けました)が秀逸。 「得な手とは、次のような手です。 (1)相手の玉を詰ます(寄せる)手 (2)相手の駒を取る手 (3)駒を交換して駒得する手 (4)駒を成る手 (5)敵玉を薄くする手 (6)自玉を堅くする手 (7)自分の駒を働かせる手」 常にこれらを意識して指せば、あっという間に初心者を脱出して強くなるだろう。 入門書の解説としては、最高レベルだと思う。実際に初心者が読んだとき、思惑通りに強くなるかどうかは正直分からないが(それはどの入門書でも同じ)、少なくとも「ルールはあやふやながらも実戦を何度か指したことのある人」「そして、強くなってライバルに勝ちたいと思っている人」にはかなり有効な本だろう。 本書では、「定跡」は一切出てこない。そのため、初手からテキストに従って指し手を進めたい「暗記タイプ」の人には使いづらいかもしれない。しかし、原理・原則をこの一冊でマスターできるので、今後どの棋書を読んでも容易に理解できるようになると思う。物理や数学が好きな理系タイプにオススメ。もっとも、文章は理屈っぽい感じではなく、むしろ丁寧で読みやすいので、多くの初心者の人に読んでほしいし、すでに駒の動きくらいは知ってるという人にもオススメしたい。 初心者・初級者の段階で本書に出会えた人はラッキーです。(2008Nov09) |
【他の方のレビュー】(外部リンク) ・かめちゃんの今日の出来事 別館 ・My Life Log ・将棋の棋書レビュー ・Amazon.co.jp: カスタマーレビュー |