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バンチコミックス けだもの 将棋指す獣 全4巻 |
[総合評価] B+ (1巻時点) 絵:B+ ストーリー:A 構成:A キャラ:B+ |
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【著 者】 市丸いろは/原作 左藤真通/作画 瀬川晶司/監修 | ||||
【出版社】 新潮社 | ||||
発行:2018年11月〜 | ISBN:978-4-10-772127-3 | |||
定価:670円(8%税込) | 208ページ/cm |
【本の内容】 |
〔1巻〕 (1)弾塚光 (2)可能性0% (3)アマ天竜戦、開始 (4)家族の絆 (5)アマ天竜・決勝戦(前編) ◆内容紹介 〔1巻〕 弾塚光、女性。元奨励会三段。プロ棋士を目指す。将棋の世界は厳しく、アマチュアからプロに上り詰めた人間はごく僅か。まして女性でプロになった者は皆無……であったが。 ――将棋ブームの到達点はここにあり!女性初のプロ棋士誕生ストーリー、満を持して始動!! “ケダモノ”と呼ばれた女性の、清廉なる一手が盤上にいま花開く。 〔2巻〕 アマ天竜の決勝戦で咆哮する“ケダモノ”、弾塚光。そこへ現れたのは、現在、奨励会三段リーグに在籍している唯一の女性・菊一文子。菊一の瞳には、光に対する異常なまでの敵愾心が宿る。2人の出会いは、いつだったのか――? 幼きライバル同士の真剣勝負は、まさしく明暗を分け、今に至った。だが、過去は過去。弾塚光は今日も将棋を指す、……勝ち続け、プロになるために。 〔3巻〕 三段リーグ編入試験に挑むため、弾塚光は師匠探しを始める。やがて峰田省三九段の門下に入ることを許され、兄弟子となった若手強豪のプロ棋士・樋口兼光六段と相見える! ――そして、遂に始まる三段リーグ編入試験。会場の前に佇んでいたのは、ある小学生棋士だった……。 〔4巻〕 【敵は、最強小学生。】永遠に続く対局(ものがたり)の先へ――女性プロ棋士誕生ストーリー、完結。三段リーグ編入を企むケダモノ、弾塚光。編入試験序盤にあっさり3連勝し突破は簡単に見えたが、礼儀正しい小学6年生の男の子・西村翠が立ちはだかる。デジタルネイティブの怪物との戦いは、深夜にまで及び……。 |
【レビュー】 |
元奨の女性がアマからプロ棋士を目指す将棋マンガ。 〔あらすじ〕 アマ将棋大会の東京都予選に突如現れた地味メの女性が、圧倒的な強さで元奨三段を倒した。彼女は、「アマ全国大会で優勝して三段リーグ編入を目指す」と言う。 〔主な登場人物〕 [弾塚光(だんづか・ひかり)] 22歳、♀。メガネ、三つ編みおさげ、トレーナー、ジーンズ、スニーカー装備の地味メ系女子。広島弁(?)を話す。(愛媛出身だった) 狭い四畳半(?)のアパートで独りで暮らし、将棋漬けの生活を送っているようだ。デブ猫を飼っている。生活費はゲームのデバッガーのバイトで凌いでいる。 相手の手を殺し続ける棋風を、峰田は「ケモノなどではなく、ケダモノだ」と評した。 将棋に没入すると周りは見えなくなり、5種類のアラーム音が鳴っていても全く気付かない。逆に将棋以外ではいろいろ抜けている。 元奨・三段だが、三段リーグには参加せずに退会している。 [峰田省三(みねた・しょうぞう)] プロ棋士、♂、九段。ゴリラのようなイカツイ顔で、しかも顔がでかい。 [加賀見廉(かがみ・れん)] 37歳、♂、元奨。アマからのプロ編入を目指す。「女は将棋に向いていない」という偏見がある。 [赤烏真(せきう・まこと)] プロ棋士、♂。「天竜」位を9連覇中で、「天才」「現代将棋の申し子」と称される。どちらかといえばイケメンポジション。 光とは知り合いのようだが…? [大月京介(おおつき・きょうすけ)] 23歳、♂。新人の将棋記者。記者として光を追っかけている。 〔寸評〕 ・最初がいきなり主人公のタイトル戦のシーンから始まったので、「これ出落ちか?(早期に連載終了の)まずいパターンか?」と心配になった。どうやら、主人公はプロになるし、めちゃめちゃ強くなるようです。(夢オチでなければ) ・実質的には、アマ大会の東京都予選からスタートする。 ・最初のシーンを敢えて読者に見せて…ならいいんですが。 ・絵にクセがあるが、迫力もある。主人公・光や、赤烏、大月あたりは好感度のある造形になっているが、やや汚めに描かれているキャラもいて、好き嫌いが分かれそう。市丸さんは『ミリオンジョー』のころからクセは強かった。 ・原作の佐藤さんも『アイアンバディ』を描いており、個人的にはこちらの絵の方が好感度が高いと思いますが、本作では原作のみです。 ・将棋の盤面はしっかり描かれており、将棋ファンは当然楽しめます。 ・一方、形勢や読みなどの細かい部分は少なく、雰囲気で読めるので、将棋が分からなくても大丈夫。 ・アマからプロになるルートについては、ちゃんと理解したほうが良いでしょう。作中にちゃんと解説があります。 〔総評〕 1巻を読んだ時点での感想です。 「元奨三段がアマで再起してプロを目指す」という設定が、男女の違いはあれ、たまたま(?)同時期に連載している『リボーンの棋士』と重なります。が、両者はかなり違う点があります。 『リボーンの棋士』では、主人公が三段リーグを実力で突破できず、年齢制限で退会しており、「将棋の実力の壁」にぶつかってからの再起となっていますが、本作では主人公が三段リーグを経験せずに「何らかの事情で」退会しており、現時点で実力の底が見えていません。タイトル経験者と同レベルの棋力を示唆している描写もあります。 最初は、里見香奈(現・女流棋士)を想定しているのかと思いましたが、違うようです。主人公の謎(闇?)が非常に多く、どうなっていくのか分かりません。 オビ裏の推薦文の一つに「『月下の棋士』+『3月のライオン』÷2」という表現がありますが、主人公が無双を続けそうな感じが『月下の棋士』、一応主人公を精神面でサポートしそうなキャラがいる点が『3月のライオン』ライクなのかな。ただ、雰囲気は両者とはまるで違っています。謎の多さから、どちらかと言えば『しおんの王』の空気を感じました。 いまのところ、好きなのは『リボーンの棋士』、気になるのは本作『将棋指す獣』というイメージです。(2018Nov11) |