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マイナビ将棋BOOKS 最強アマ直伝! 勝てる将棋、勝てる戦法 |
[総合評価] B 難易度:★★★☆ 〜★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)B レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 上級〜有段向き |
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【著 者】 今泉健司 | ||||
【出版社】 マイナビ | ||||
発行:2014年4月 | ISBN:978-4-8399-5134-4 | |||
定価:1,663円 | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||
・【コラム】(1)今泉さんの真実 (2)G中飛車? (3)今泉さんが中飛車を指す理由 |
【レビュー】 |
▲中飛車の戦術書。一部は▲向飛車も扱う。 本書は今泉健司四段(2018年8月現在)がアマ時代に著したもの。 今泉は、奨励会三段で二度次点を取っていたが、当時はフリークラス編入制度がなく、1999年にいったん奨励会を退会。アマとして活躍し、竜王戦6組でもプロも連覇するなどして、2007年に新設された三段編入試験に合格して、再度三段リーグを戦うが、4期以内に昇段できずに再び退会。またアマに戻って活躍し、今度は2014年にプロ編入試験を受験し、見事合格した。 本書は、今泉がまだプロ編入試験を表明する前に、「最強アマ」として、自信が「勝ちやすい戦法」とする▲中飛車を解説したものである。 「はじめに(まえがき)」によれば、▲中飛車(+▲向飛車)は、自分の意思で戦型を決めることができ、「勝ちやすい局面」を目指すことができる、とのことである。 各章の内容を、チャートを添えながら紹介していこう。 |
第1章は「角交換型」で、角交換型の先手中飛車。 初手▲5六歩から先手中飛車に構え、先手から角交換して、手損にはなるが、確実に5筋歩交換を行う。また、居飛穴などの堅い囲いを阻止できるメリットも大きい。コツとしては、「駒組みに入ったら、なるべく位負けしない」(p23)こと。 第2章は「相中飛車編」。アマでは中飛車党同士がぶつかることも多く、頻出の戦型といえる。途中までは同型で進むことも多く、どのタイミングで「マネ将棋」から離れるかがポイント。 第2章第1節 △4四歩型 ・角交換のタイミングに注意。 ・角道を止めるのは、自玉を相手より堅くできるとき。 ・一方的に攻めると勝ちやすい。 第2章第2節 △6四歩型 ・基本的に角道を止めない。 ・同型から三間飛車に振り直す。 ・△6四歩は7筋の受けを作る意味がある。 第2章第3節 △3五歩型 後手がさらにマネ将棋を続ける場合、角交換〜7筋歩交換〜▲5四飛が有力。 第3章は「対一直線穴熊」。対▲中飛車の構えはいろいろあるが、少ないリスクで堅く囲えるため、本書でも「最大の難敵」(p68)とされている。持ち時間の短いアマ将棋ではなおさらだ。 第3章第1節 美濃囲い編 一直線穴熊を阻止することはできないが、「美濃囲いでも手段を尽くせば先手指せる」(p87)。ただし、「手段を尽くす」のは相当に大変。ガチガチに囲われる前に、▲6五銀から速攻を狙おう。 第3章第2節 相穴熊編 いくつかの作戦があるが、本節では3筋交換型に絞っている。今泉が(当時)最有力視している作戦。 p94からの▲3九金は、他書ではあまり良くないといわれたものもあるが、今泉の研究では「先手も指せる」。▲5九金が研究手で、拠点を作ってから玉を固める方針。 第4章は「左穴熊の戦い」。中飛車左穴熊が単行本に初登場したのは、わたしの記憶が確かなら『相振りレボリューション』(杉本昌隆,2010)だが、紹介レベルだった。単行本で本格的に解説されたのは、本書が初めてといってよいだろう。比較的初期から流行期に書かれたものなので、左穴熊の狙いやポイントが分かりやすい。 第4章第1節 vs三間編 ・左穴熊の初期型では、▲5六飛で後手の3筋交換を防ぐ。 ・手損は気にしない。例えば、▲2六飛で△2四歩を突かせて、△2四飛を消す手筋は手損になるが、形の得の方を優先する。 ・手詰まりにならないよう、いろいろなところで手を付けられる可能性を残しておく。 ・ただし、速めに▲5六飛は軽すぎて、手厚い形(△4四銀型など)に弱い。 →この対策として、菅井流の改良形で、3筋を受けない(すぐに▲5六飛と浮かない)という発想が出てくる。 ・2筋・3筋は▲3八銀でカバーする。 第4章第2節 相穴熊編 押さえ込まれ形になりにくいので、さほど怖くない。 第4章第3節 vs向飛車編 向飛車もそれほど怖くはない。手損を気にせずに▲2八飛と戻って受ければ、右銀の活用が楽になる。 第5章は「向かい飛車編」。▲中飛車とセットで、初手▲5六歩に△8四歩から後手が早く飛先を決めてきたときに、変化球として出せる戦法だ。この形は升田流向飛車ともいう。 いろいろ変化はあるが、△4二玉に角交換から▲7五角といきなり動くのが今泉のオススメ。 第6章は「次の一手」で、今泉の実戦から、中終盤の実戦的な好手を出題。本書のメインコンテンツである▲中飛車・▲向飛車とは関係ないものもある。 〔ピックアップ〕 第1問 △3二飛戦法 第2問 ▲中飛車に飯島流引き角は使えないかも? 第21問〜第30問 「今泉さんしか指さない」シリーズ。自陣を超重視する。 第31問〜第36問 苦戦時の戦い方 第37問〜第40問 「苦い思い出」シリーズ 第41問〜第46問 「気持ちよく決まった」シリーズ 網掛けで解答の裏透け防止ができているのは◎。 〔総評〕 ▲中飛車を得意戦法としている人にとっては、相手の様々な対抗策に対する有力作戦が記されているので、大いに参考になるだろう。レビュー時で出版から4年半経過しているが、まだまだ実用的で使いやすいと思う。分量的に惜しくもBとしているが、読みやすくて頭に入りやすいので、オススメできる一冊。 ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p147棋譜 ×「▲5六飛」 ○「▲5六歩」 |