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■久保利明の最強振り飛車戦略

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久保利明の最強振り飛車戦略
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久保利明の最強振り飛車戦略
角交換振り飛車の久保システム
[総合評価] A

難易度:★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜有段向き

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【著 者】 久保利明
【出版社】 木本書店
発行:2011年12月 ISBN:978-4-904808-03-0
定価:2,730円(5%税込) 299ページ/21cm/H.C.


【本の内容】
第1章 ゴキゲン中飛車 T 居飛車△8五歩型
 A、△5二金右
 B、△8八角成
 C、△3二金
U 居飛車△8四歩型
 A、△6四歩〜△6三銀型
 B、△7四歩〜△7三銀型
 C、超速
V 先手ゴキゲン中飛車▲5六歩型
 A、急戦型
 B、持久戦型
W 先手ゴキゲン中飛車▲5五歩型
・参考棋譜=8局
146p
第2章 新・石田流 T 石田流超急戦
 A、鈴木新手▲5六角
 B、久保新手▲7五飛
 C、▲7四歩〜▲5八玉(▲4八玉)
U 升田式石田流
 A、升田式石田流の基本
 B、升田式石田流新型
V 石田流久保システム
 A、急戦
 B、持久戦
・参考棋譜=11局
112p
第3章 その他の角交換振り飛車 T △3二飛戦法
 ・警戒する筋
 ・升田式石田流が実現
U 向かい飛車
 ・玉型を整備
・参考棋譜=3局
36p

◆内容紹介
軽快な振り飛車を得意とし、「捌きのアーティスト」と称される久保利明九段が、公式戦で多用している角交換型の中飛車と三間飛車を中心に解説。参考棋譜も収録。


【レビュー】
角交換系振飛車の定跡書。メインはゴキゲン中飛車と石田流。

久保は「捌きのアーティスト」の異名を持ち、説明するまでもなく、現代振飛車の第一人者である。そのメインウェポンは、先手番では石田流、後手番ではゴキゲン中飛車。以前は四間飛車も使っていたが(定跡書も出している)、現在のスタイルになってからのほうが持ち味が出ているように思う。

本書は、角交換形の振飛車について、比較的俯瞰的に書かれた定跡書である。


●特徴
・振飛車が後手番の戦法(△ゴキゲン中飛車、2手目△3二飛戦法)は、振飛車が手前で先後逆表記になっている。

・プロ公式戦から消えた変化について、消えた理由を詳しく書いてあることがある。
例)
 対ゴキゲン中飛車の▲5八金超急戦での▲7五角
 鈴木式早石田の△5二玉
 石田流の久保新手▲7五飛での▲4五飛
 石田流vs△棒金での▲7七桂 ...etc.

・ボリュームは多め、コストパフォーマンスはいまいち。本書の版型はA5サイズで、棋書で一般的な四六版よりも一回り大きいが、1ページあたりの情報量は他の棋書(たとえばマイナビの「よくわかる」シリーズなど)とほとんど変わらない。フォントが大きく、余白も広いためだ。なので、純粋な情報量は、一般的な棋書(四六版で222p)の1.3倍程度。ハードカバーとはいえ、税抜2,600円の価格設定は、かなり割高感がある。1,800円くらいが適正価格だろう。

・参考棋譜が22局と多め。解説は将棋年鑑よりちょっと手厚いくらいだが、本文の先を補完している。例えば、「先手良し」からでも実戦的には難しかったり、逆転の余地があったり、ということが棋譜を並べると分かる。


●他書との比較
先行して発売された他書に比べて、優れている点もあるし、明らかに劣っている点もある。

○ゴキゲン中飛車
・▲5八金右急戦: 本書は▲6五香打で終わっているが、『速攻!ゴキゲン中飛車破り』(中村太地,MYCOM,2011.09)、『最新の振り飛車対策』(深浦康市,日本将棋連盟,MYCOM,2011.10)には▲6五香打の先も書かれている。また、▲7五角が消えた理由は 『遠山流中飛車急戦ガイド』(遠山雄亮,MYCOM,2010.07)とは異なっている。
・超速: 『速攻!ゴキゲン中飛車破り』の方が断然詳しい。
・丸山ワクチン: 『よくわかる角交換振り飛車』(横山泰明,MYCOM,2011.08)の方が詳しくて分かりやすい。
・▲7八金型: 『早分かり 中飛車定跡ガイド』(所司和晴,MYCOM,2011.06)では浅かった部分が本書では詳しい。
・▲ゴキゲン中飛車: 『戸辺流現代振り飛車手筋集』(戸辺誠,MYCOM,2011.06)と比べ、一時期流行した▲6六銀〜▲7七桂で△8九角と打たせる形(p95〜p97)が詳しい。研究が進んで居飛車良しになっているので注意。

○石田流
・石田流久保新手▲7五飛: 『久保の石田流』(久保利明,日本将棋連盟,MYCOM,2011.03)で触れた「△7四歩に▲4五飛」は本書では否定。▲同飛を本線としている。
・▲7四歩〜▲5八玉(or▲4八玉): 『久保の石田流』第8章より少し詳しく書かれている。
・升田式石田流: 近年現れた「▲8六歩の仕掛け」の成否はかなり詳しく検討されている。従来の升田式とは少し違う序盤についても『久保の石田流』よりも詳しい。
・久保システム: 角道を止めて、石田流本組にできた場合の組み方。石田流復活の原動力の一つとなった「棒金対策」と「左美濃対策」について。

○2手目△3二飛
久保の石田流』第7章と、内容はだいたい同じ。4手目△4二銀は本書も記載なし。

○升田流向飛車
この戦型は『高崎一生の最強向かい飛車,』(ア一生,MYCOM,2010.03)の方が非常に詳しい。本書の内容もほぼカバーされている。参考棋譜もなし。


●総評
▲ゴキゲン中飛車と石田流全般について、最新の状況を知りたい方は「買い」。ただし、通常の定跡書2冊分のお値段なので、財布と相談してください。△ゴキゲン中飛車だけ興味があって、他書もしっかり目を通している人には、美味しい部分が少ないです。値段を無視して、内容だけを客観的に見ればAですが、個人的には2,730円分の満足感はなかったです…。(2012Jan30)


●チャート












※誤字・誤植(初版で確認):
特に見つかりませんでした。

※疑問1: →検討してくださる方は
棋書掲示板まで。
p41第9図はホントに先手優勢?△8四歩▲7七金△8五歩▲8七金△8六歩で先手がまずそうに思える。

※疑問2: →検討してくださる方は
棋書掲示板まで。
p291第8図からはホントに居飛穴に組めない?対藤井システムのように、▲2五歩には△1一玉▲2四歩△2二銀〜△2四角〜△2三歩ではダメだろうか?居玉の藤井システムと違って、第8図では先手の態勢が万全なので、そのような猶予はないということだろうか?

※参考棋譜一覧:
第1章
@ ▲行方 △久保 2002.04.09(銀河戦) △ゴキゲン中飛車vs▲7八金
A ▲青野 △久保 2002.04.25(王座戦) △ゴキゲン中飛車vs▲5八金右超急戦
(青野新手▲2二歩)
B ▲深浦 △久保 2004.11.20(A級) △ゴキゲン中飛車vs▲5八金右超急戦
(△7八銀の一局→▲7五角が消えた)
C ▲丸山 △久保 2008.03.21(棋聖戦) △ゴキゲン中飛車vs▲丸山ワクチン
D ▲屋敷 △久保 2008.05.16(竜王戦) △ゴキゲン中飛車vs▲丸山ワクチン
E ▲島 △久保 2008.05.29(王位戦) △ゴキゲン中飛車vs▲7八金
F ▲深浦 △久保 2009.01.20(朝日杯) △ゴキゲン中飛車vs▲7八金
G ▲屋敷 △久保 2009.12.18(B1) △ゴキゲン中飛車vs▲二枚銀


第2章

@ ▲久保 △森内 2001.02.12(NHK杯) ▲石田流vs△棒金
(△3三銀の森内流→棒金に▲7七桂が消えた)
A ▲久保 △三浦 2003.11.17(NHK杯) ▲石田流本組
B ▲久保 △丸山 2007.04.24(棋聖戦) ▲石田流鈴木流急戦
(本局以降、△3三銀型が消えた)
C ▲久保 △佐藤秀 2007.07.19(棋王戦) ▲石田流本組
D ▲久保 △堀口一 2008.05.22(王座戦) ▲升田式石田流
E ▲久保 △森内 2008.11.15(王将戦) ▲石田流vs△7二飛
F ▲久保 △阿部隆 2008.11.21(B1) ▲升田式石田流
G ▲久保 △井上 2009.02.06(B1) ▲石田流鈴木流急戦
H ▲久保 △佐藤康 2009.02.28(棋王戦2) ▲石田流久保新手7五飛
I ▲久保 △羽生 2010.07.04(最強戦) ▲新型升田式石田流
J ▲久保 △谷川 2010.07.22(A級) ▲石田流久保新手7五飛


第3章

@ ▲木村一 △久保 2008.01.10(A級) 2手目△3二飛→升田式石田流
A ▲堀口一 △久保 2008.11.24(NHK杯) 2手目△3二飛乱戦
B ▲島 △久保 2008.12.11(棋聖戦) 2手目△3二飛→升田式石田流




【関連書籍】

[ジャンル] 
振飛車総合
[シリーズ] 
[著者] 
久保利明
[発行年] 
2011年

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