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■急戦でつぶせ ヤグラがなんだ

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週将ブックスオレンジシリーズ(15)
急戦でつぶせ
ヤグラがなんだ
[総合評価] A

難易度:★★★☆
    〜★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)B
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:B
上級〜有段向き

【著 者】 田中寅彦
【出版社】 毎日コミュニケーションズ
発行:1988年5月 ISBN:4-89563-522-8
定価:883円 228ページ/18cm


【本の内容】
第1章 二枚銀急戦矢倉 ・二枚銀急戦矢倉の狙い筋
 (駒組みの手順/△4二角型/△5三角型/△6四角型/△9五角〜△7三角型/8筋不換型/難敵△6三銀型)
・二枚銀急戦矢倉の実戦
 (児玉-東戦/堀口-森内戦/島-田中戦)
・児玉流カニカニ銀
 (カニカニ銀の駒組み/児玉-脇戦/児玉-田中魁戦/児玉-阿部戦/児玉-桜井戦/児玉-小野修戦/後手番のカニカニ銀(高橋-児玉戦))
74p
第2章 米長流急戦矢倉 ・米長流急戦矢倉の狙い筋
 (飛先不突き矢倉の発展/駒組みの手順/早囲いを避けて/先手の米長流)
・居角急戦型の実戦
 (この形がルーツ/田中寅-米長戦/中原-米長戦/小野修-谷川戦/森下-米長戦/有吉-米長戦)
・4四銀型の実戦
 (対早囲い(中村-米長戦)/中原-米長戦/有吉-谷川戦の変化/▲3七銀型/中村-中原戦/有吉-谷川戦/青野-米長戦)
・先手米長流の実戦
 (米長-有吉戦/羽生-土佐戦/▲4五位取り型/米長-塚田戦/米長-有吉戦)
・米長流の対策
 (▲4六角型/駒損より厚み/有吉-富岡戦/▲3八飛型/田中寅-石田戦/中原-米長戦/後手番の対策)
84p
第3章 6二飛戦法 ・6二飛戦法の狙い筋
 (6二飛戦法のルーツ/駒組みの手順/▲1五角型)
・6二飛戦法の実戦
 (中村-神谷戦/神谷-青野戦/田中寅-青野戦/有吉-高橋戦/田中寅-島戦/高橋-谷川戦/有吉-谷川戦/中村-塚田戦/羽生-森内戦)
32p
第4章 矢倉中飛車 ・矢倉中飛車の狙い筋
 (矢倉中飛車の種類/駒組みの手順/居角の受け)
・5七銀型の対策
 (▲5七銀型の登場/角交換の攻め/力をためる/桂頭を狙う)
・矢倉中飛車の実戦
 (南-桐山戦/小野修-高橋戦)
32p

◆内容紹介(表紙より)
現代将棋は速度が勝負。過激な攻めのトラ彦が急戦矢倉崩しの最新戦法を大公開。スピードあふれる戦い方でヤグラなんかブッつぶせ!


【レビュー】
急戦矢倉の戦法解説書。

急戦矢倉とは、相矢倉模様の駒組みの中で、互いにガッチリした矢倉囲いを構築するのではなく、一方が簡素な囲いから仕掛ける戦法の総称である。多くは強い攻撃力(破壊力)を持つ半面、玉型が貧弱なのでカウンターを喰らうリスクも高い。急戦矢倉の場合、先手が5手目▲7七銀or▲6六歩と角道を止めて持久戦を目指すのに対し、後手が仕掛けを狙うパターンが多い。

本書は、数ある急戦矢倉のうち、「二枚銀」「カニカニ銀」「米長流急戦矢倉」「6二飛戦法」「矢倉中飛車」を解説した本である。

本書の戦法解説は、下記のような三段構えが基本になっている。(章によっては一部割愛されている)

 (1)概説 : 戦法のルーツ、戦法が登場した背景、考え方・思想
 (2)基礎講座 : 駒組みの手順、狙い筋、相手の代表的な対応手順
 (3)応用・発展 : プロの実戦解説

この三段構えで戦法の歴史を追っていくので、戦いの意味が非常に分かりやすい。逆に、網羅型の定跡書ではないので、辞書的な使い方は難しい。

各戦法について、図面を使って説明していこう。

二枚銀戦法
●第1章 二枚銀急戦矢倉

本章で扱うのは「二枚銀戦法」と「カニカニ銀」。

二枚銀戦法は矢倉模様から5手目▲7七銀とし、以下矢倉城を作らずに右銀も▲4六銀と前線に繰り出す。狙いは▲3五歩△同歩▲同銀〜▲2四歩からの銀交換、または角銀総交換。攻めの銀と守りの銀の交換は攻め側が得だし、角交換は陣形の上ずっている後手の方が打ち込みが多いというのが戦法の趣旨。左銀が▲6六銀と上がるのは、△6四角の反撃を抑えるため。

カニカニ銀の一例
カニカニ銀は、左図が一例。狙いは飛角銀銀桂を集中させた中央突破。後手が全力で中央を守れば、薄くなった他の筋(2筋、3筋、8筋など)へ飛を転戦したり、角をぶん回したりすることも。居玉で一段金のため大駒の打ち込みに強く、多少駒損でも大きく捌ければ良し。

二枚の銀が中央に向かって出るのは二枚銀戦法とよく似ているが、まったく別物の戦法だと思った方が良いだろう。
米長流・急戦型
●第2章 米長流急戦矢倉

米長流急戦矢倉は、基本的には後手の戦法で、持久戦を目指す先手に対し、低い構えから急襲していこうというもの。大別すると2種類ある。

左図は米長流の原型で、金銀4枚を低く構えて、飛角桂で軽く仕掛けていく。軽すぎるようだが、急所にヒットすればそのままKOできるし、陣形が低いので思い切って大駒を切ることが可能。

具体的には、左図から△6五歩▲同歩△8六歩▲同歩△6五桂が基本の仕掛け。以下▲6六銀△8六飛▲8七歩△8一飛としておき、機を見て△7五歩(▲同歩なら△8六歩▲同歩△同飛が十字飛車狙い)とすれば攻めがつながる。
米長流・本格急戦型 もう1つは左図の本格急戦型で、原型から二枚の銀が前進している。原型よりも玉は薄くなっているが、それを厚みのある攻撃陣で補おうというもの。

左図から△5五歩▲同歩△6五歩▲同歩△8六歩▲同歩で、
 (1)△5五銀▲5六歩△6六歩▲5七金△6五桂
 (2)△6五桂▲6六銀△6四銀〜△5五銀左
 (3)△6五桂▲6六銀△5五銀
などの筋を状況に応じて使い分けていく。

わたしは「米長流」といえば、こっちの形しか知りませんでした。お恥ずかしい。(゚-゚;A)
6二飛戦法
●第3章 6二飛戦法

6二飛戦法は、左図のようにカニ囲い+△5三銀右+△6二飛の形が特徴。左図から△6五歩▲同歩△同飛▲6六歩△6一飛と一歩持って、△6四銀〜△7四歩〜△7三桂と活用。

(1)玉型はカニ囲いがベスト、角道を通して戦う
(2)△6四銀としてから△7四歩。あわてて△7四歩を突くと、▲4六角が受けづらい。
(3)△6五桂が両取りになるなら△6五歩から攻める、それ以外は△8五桂で銀をずらして6筋を攻める。△7五歩▲同歩△8五桂という仕掛けもある。

右四間飛車(腰掛銀)と似た攻め筋であるが、6二飛戦法は5筋〜7筋も絡めて攻めていける。個人的には歩をたくさん使える6二飛戦法の方が好みに合う。ただし5筋も戦場になると、自玉も近いので注意が必要だ。
矢倉中飛車
●第4章 矢倉中飛車

第3章までの戦法は比較的新しい戦法(少なくとも1980年代初頭に飛先不突き矢倉が流行りだしてから生まれた戦法)だが、矢倉中飛車はもっと昔からある。急戦だけでなく、持久戦での作戦勝ちも狙いの一つなので、さまざまな形に変化する。

金矢倉は5筋を金一枚で守っているので、そこを狙っていく。破壊力があるが、玉飛接近形が最大の弱点。

左図から△5五歩▲同歩△同飛〜△5一飛〜△5四銀と好形を目指す。



急戦を仕掛ける側が良くなる順ばかりではなく、プロの実戦解説には対策(案)も出てくる。公平な視点で書かれているのも良し。

本書に載っている戦法は、現在ではほとんど「消えた戦法」になっている。詳しくは『消えた戦法の謎』(勝又清和,MYCOM,1995,2003)を読むとよいが、戦法自体がつぶれてしまったというわけではなく、現在でも特に攻め好きの方なら十分使えると思う。

急戦矢倉を基礎から解説している本は案外少なく、本書は貴重。出版から20年経過しているが、最後まで面白く読むことが出来た。急戦矢倉を使いたい人、逆に急戦矢倉に困っている人は一読の価値あり。(2009Oct31)

※誤植(第2刷で確認):
 p218 参考C図:×▲3八飛 ○▲2八飛



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【関連書籍】

[ジャンル] 
矢倉
[シリーズ] 
週将ブックスオレンジシリーズ
[著者] 
田中寅彦
[発行年] 
1988年

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