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■第67期将棋名人戦七番勝負全記録

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第67期将棋名人戦七番勝負全記録
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第67期将棋名人戦七番勝負全記録
羽生、名人位死守
[総合評価] C

難易度:★★★★

図面:見開き2枚
内容:(質)B(量)C
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜向き

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【編】 朝日新聞文化グループ
【出版社】 朝日新聞出版
発行:2009年8月 ISBN:978-4-02-100172-7
定価:1,575円(5%税込) 239ページ/19cm


【本の内容】
【名人】羽生善治(防衛) 【挑戦者】郷田真隆
・【対戦者の横顔と七番勝負への抱負】第67期A級リーグ表/「違うカラー出したい」(羽生善治)/「ファン意識して戦う」(郷田真隆)/「波長合えば派手な展開にも」(第1局立会人・谷川浩司)/直近は郷田が勝利
 

先−後

戦型 観戦記  
第1局 ●郷田−羽生○ 相矢倉▲3五歩早突き 村上耕司 28p
第2局 ●羽生−郷田○ 相矢倉▲4六銀3七桂 28p
第3局 ●郷田−羽生○ 横歩取り△8五飛▲6八玉型 28p
第4局 ●羽生−郷田○ 相掛かり▲引き飛車棒銀△8五飛 佐藤圭司 24p
第5局 ○郷田−羽生● 横歩取り 乱戦 大川慎太郎 24p
第6局 ○羽生−郷田● △陽動振飛車 28p
第7局 ○羽生−郷田● 相矢倉▲早囲い△左美濃 26p

・名人戦を振り返って
 決着時の朝日新聞記事から=6p
 来春に向けて「一歩一歩」 将棋・羽生名人が就位式=2p
 「気持ち切らさず粘り強く」─防衛決めた羽生名人に聞く=24p
・将棋名人戦・過去の成績=2p

◆内容紹介
38歳ライバル対決、羽生名人、カド番からの生還、フルセットの熱戦を再現。


【レビュー】
第67期名人戦七番勝負の観戦記・朝日新聞社版。

第1局は相矢倉。先手が▲3七銀と上がらずに▲3五歩と突っかける形で、郷田は序盤27手目にして3時間26分の大長考(しかも昼食休憩を挟んでいる)。しかし玉側の端歩を突いた手が緩手となり、構想が瓦解、長考は実らなかった。

第2局は相矢倉▲4六銀3七桂。先手の攻め、後手の受けという展開になりやすいが、本局はなんと後手が端から先攻。これに対応(?)して、中盤で▲9六玉と上がる珍形になった。非常に難しい攻防が続き、先手が優勢を確保したものの、秒読みに追われた羽生が終盤に受け間違えて郷田勝ち。

第3局は横歩取り△8五飛。▲6八玉型に対し、△5五飛と角筋に回る「松尾新手」の進行で、2001年の第59期名人戦第7局▲谷川vs△丸山で△4五桂の桂損攻めを敢行した将棋、といえばコアなファンならピンとくるだろう。この将棋は羽生が優勢から決め損なって逆転したものの、郷田が詰みの有無を錯覚したために再逆転した。

第4局は相掛かり。▲引き飛車棒銀に△8五飛と高飛車に構える作戦で、実戦例が少ない。羽生の構想に少し問題があり、郷田も自信のない局面が続いたものの、最終盤まで互いに居玉の戦いを郷田が制した。これで後手番の4連勝になった。

第5局は横歩取り。先手が▲8七歩を打たずに▲5八玉と上がる力戦志向に対し、△8四飛と引く手が成立するかどうか、という研究最前線の将棋。封じ手直前の▲2三歩で郷田優勢が決定付けられたが、羽生もこの▲2三歩は知っていたそうで、どうしてこの局面にしてしまったのだろうか?その理由はインタビューp219にて。▲2三歩に対し、羽生は封じ手時刻を1時間も越える長考で粘りを選んだが、二枚の馬でがっちり押さえ込んだ郷田が勝ち切った。個人的には、こんなに馬をたくさん動かした将棋(馬の指し手が先手だけで25回!)を観たのは初めてだと思う。

第6局は△陽動振飛車。郷田はたまに指しているとのことだったが、週刊将棋で「一刀流」と評されている郷田が、名人位に王手をかけた対局で陽動振飛車を採用したのは意外。郷田が先手玉の矢倉入城を牽制していたのに、羽生は堂々と入城した。羽生がペースを握ったまま終盤に入ったが、羽生に勇み足があって逆転。しかし郷田も玉を逃げ間違え、再逆転で第7局へ。

第7局は相矢倉。ただし流行形ではなく、後手の郷田が左美濃の変化球。互いに3筋と7筋を角で歩交換したあと、羽生の▲4六歩の構想が秀逸で、後手にチャンスらしいチャンスはなかった。ここまで混戦で二転三転した将棋が多かったのに比べると、郷田がやや淡白なように見えた。

今回は文人の寄稿はなく、代わりに羽生のインタビュー(防衛1週間後)が倍増している。前半は七番勝負を一局ずつ振り返り、後半は羽生の将棋観や今後の大方針について。なかなか濃い仕上がりになっていて、本書の中で一番読み応えがあったと思う。

今期はがっぷり四つあり、研究の披露あり、序盤から実戦例の少ない形での構想合戦あり、などバラエティに富んだ七番勝負だった。逆転、再逆転が多かったのも印象的。それだけ複雑な将棋が多かったということだろう。(2009Nov06)


【他の方のレビュー】(外部リンク)
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【関連書籍】

[ジャンル] 
名人戦観戦記
[シリーズ] 
[著者] 
朝日新聞文化グループ
[発行年] 
2009年

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