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■中飛車粉砕!超速▲3七銀戦法のすべて

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中飛車粉砕!超速▲3七銀戦法のすべて
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マイナビ将棋BOOKS
中飛車粉砕!超速▲3七銀戦法のすべて
[総合評価]
A

難易度:★★★★☆

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:B+
有段者向き

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【著 者】 長岡裕也
【出版社】 マイナビ出版
発行:2020年1月 ISBN:978-4-8399-7135-9
定価:1,694円(10%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
第1章 超速▲3七銀に進むまで 16p
第2章 後手急戦型 86p
第3章 後手美濃囲い型 86p
第4章 後手△4四銀型 30p

・【コラム】(1)将棋めし (2)小学生名人戦

◆内容紹介
振り飛車の主力戦法、中飛車。アマチュアの人気も高く、これに手を焼いている居飛車党の方も多いのではないでしょうか。

そこで本書の登場です。ゴキゲン中飛車に対して最も優秀な対抗策といわれている「超速▲3七銀戦法」について余すところなく解説した一冊です。

著者は序盤研究の大家として知られる長岡裕也五段。駒組みの手順からプロの最新の攻防まで、わかりやすく解説しています。

この本を読んで、きちんと理解できれば対中飛車必勝でしょう。


【レビュー】
△ゴキゲン中飛車vs▲超速3七銀の戦術書。

▲超速3七銀戦法が流行し始めたのが2010年。当初から非常に有力な△ゴキゲン中飛車対策と見られていた作戦だが、ゴキ中側も様々な抵抗をして、すでに10年が経過した。

まだ戦いは続いているが、プロ間では2019年の中盤あたりから、△ゴキゲン中飛車の採用率が急に下がっているように思える。この数年の価値変動の中で、各戦型の相対的な評価が変わったことも影響しているが、一番の要因は「△ゴキゲン中飛車が▲超速に苦しんでいる」ということだと思われる。

本書は、△ゴキゲン中飛車のさまざまな対応に対して、▲超速3七銀戦法の最有力な変化を解説した本である。


各章の内容をチャートを添えながら紹介していこう。



第1章は、「超速▲3七銀に進むまで」


超速▲3七銀は、▲6八玉型のままで▲3六歩〜▲3七銀と繰り出していくという指し手をたどるが、そこに至るまでに後手からの変化がある。

・初手は▲2六歩が増加。2手目△3二飛戦法を封じる意味がある。(※もちろん、飛先を連続で突けば、△ゴキゲン中飛車自体を封じることもできる)
・超速の形になるまでに、後手の変化球がいくつかあるが、
−「囲いを急ぐ△6二玉」(▲4八銀のタイミングで△6二玉)は「(振り飛車側の)攻めが軽いので押さえ込むことができる」(p14)。
−「超速封じの△6二玉」(▲6八玉のタイミングで△6二玉)は、「強く攻め合えば先手が有望」(p19)。



第2章は、「後手急戦型」

・超速は、▲6八玉型で▲3六歩〜▲3七銀〜▲4六銀を急ぐ。
・▲3六歩で飛のコビンが開くので、後手から△5六歩の仕掛けの筋は常にある。

後手が居玉、または△7二玉型の低い形での△5六歩が成立するかどうかが本章のテーマ。(後手がもっと深く囲う形は第3章で扱う)




△7二玉まで囲い、▲7八玉を待ってからの△5六歩は、のちの△7六飛が王手になる。
・「超速対策として、後手の有力な選択肢」(p38)。
・結論としては、「難しいものの三つの有力な選択肢があり先手が指せる展開」(p80)。


・「△3二金は△3二銀と比べ玉は薄くなるが、2、3筋の傷を消して速攻狙い」(p80)。


第2章の結論としては、「難解だが居飛車が指せる」となるが、後手が猛攻して先手がギリギリ凌ぐような展開もあるので、中飛車側としても実戦で試してみる価値は十分あると思う。




第3章は、「後手美濃囲い型」

・第2章の、後手が居玉や△7二玉型で△5六歩と仕掛けるのは玉が薄くて大変なので、本章ではまず美濃囲いまで囲い切る。

△3二金が先の場合、▲4五銀の仕掛けには強い半面、中央は薄い。
・超速初期の2010年〜2016年くらいは、△3二金型が主流だった。
・後手の5筋歩交換に対し、飛を捕獲に行く順は「難解ながら先手が好んで指す変化ではない」(p118)が、「▲7七銀から中央を制圧し、先手が指せる」(p123)。


△4二銀型は、中央に厚く、二枚銀急戦には強い半面、△4二角や△2二角と引く手がなく、先手は▲4五銀の仕掛けがやりやすい。
・また、手堅く▲5八金右から二枚銀でじっくり指したり、▲6六歩〜▲6七銀で5筋を強化してから3筋を攻めるのも有力。


超速封じの△4四歩(菅井流)は、▲3七銀のタイミングで△4四歩と突き、▲4六銀には△4五歩と突いて、銀を目標とする狙い。
・△3二銀型には、▲3四銀△5六歩に▲3三銀成の踏み込みが成立する。
・△3二金型には、▲3四銀△5六歩での踏み込みは無理筋だが、手を戻して居飛車が指せそう。




第4章は、「後手△4四銀型」。いわゆる「銀対抗」で、▲3六歩で超速の気配を感じたらスルスルと銀を上がり、▲4六銀に△4四銀の対抗が間に合うようにする。

・初期のころは相穴熊に進むことが多かったが、現在は▲7八銀からの二枚銀急戦が多い。
・2013年の『長岡研究ノート 振り飛車編』(長岡裕也,マイナビ)の時代を比べて、振り穴を目指す作戦も激減した。
・二枚銀急戦は『戸辺流 こだわりのゴキゲン中飛車』(戸辺誠,マイナビ出版,2019.01)が詳しいが、その出版後にアップデートがあり、二枚銀側が指せそう。
・後手は居玉で△7二銀を急げば、二枚銀をいったんは阻止することができる。ただし、先手は端歩で様子を見て、端の位が取れるなら持久戦へスイッチし、端を突き合うなら▲9七角の筋を生かして二枚銀に出られる。



〔総評〕
△ゴキゲン中飛車vs▲超速の本はいくつも出版されているが、各戦型がホットな時期に出されたものも多く、その戦型にどのような結論が出ているか(そして実戦に現れなくなっていったのか)があまり一般に知られていないものも多い。本書では、各戦型の結論(に近い部分)を詳しく記してあり、これまでの本のアップグレード版という位置づけといえる。

なので、本書だけを読むのでは効果が不十分で、過去の本と併せて読むことで互いの知識を補完し、マスターに近づくことができるだろう。


△ゴキゲン中飛車vs▲超速の本 (レビュー出来ていない本も多い…すみません)

●第1章「超速▲3七銀に進むまで」関連
2014-04 決定版!超速▲3七銀戦法(第1章),畠山成幸,マイナビ
2011-12 ゴキゲン中飛車の急所(第2章),村山慈明,浅川書房
…など

●第2章「後手急戦型」関連
2016-09 振り飛車最前線 ゴキゲン中飛車VS超速▲4六銀戦法(第4章),杉本昌隆,マイナビ出版
2014-04 決定版!超速▲3七銀戦法(第1章),畠山成幸,マイナビ
2013-10 久保の中飛車(第7章),久保利明,日本将棋連盟発行,マイナビ販売
2013-01 中飛車の基本 【ゴキゲン中飛車編】(第1章),鈴木大介,浅川書房
2011-12 ゴキゲン中飛車の急所(第2章),村山慈明,浅川書房
…など

●第3章「後手美濃囲い型」関連
2014-04 決定版!超速▲3七銀戦法(第1章〜第3章),畠山成幸,マイナビ
2013-10 久保の中飛車(第4章〜第7章),久保利明,日本将棋連盟発行,マイナビ販売
2013-01 中飛車の基本 【ゴキゲン中飛車編】(第1章),鈴木大介,浅川書房
2012-09 菅井ノート 後手編(第1章〜第2章),菅井竜也,マイナビ
2012-07 最新定跡村山レポート(第2章),村山慈明,マイナビ
2011-12 ゴキゲン中飛車の急所(第2章),村山慈明,浅川書房
…など

●第4章「後手△4四銀型」関連
2019-01 戸辺流 こだわりのゴキゲン中飛車,戸辺誠,マイナビ出版
2016-09 振り飛車最前線 ゴキゲン中飛車VS超速▲4六銀戦法(第1章),杉本昌隆,マイナビ出版
2014-04 決定版!超速▲3七銀戦法(第4章〜第5章),畠山成幸,マイナビ
2013-10 久保の中飛車(第8章),久保利明,日本将棋連盟発行,マイナビ販売
2013-07 長岡研究ノート 振り飛車編(第1章),長岡裕也,マイナビ
2013-01 中飛車の基本 【ゴキゲン中飛車編】(第1章),鈴木大介,浅川書房
2012-09 菅井ノート 後手編(第4章),菅井竜也,マイナビ
…など


本書を読むことで、2020年1月時点での現状は、全体的に△ゴキゲン中飛車側に手詰まり感があることが分かってしまうのだが、実戦的には大変な局面もいくつもあるので、後手を持つ人は「これなら何とかやれる」という変化を探してほしい。



※誤字・誤植等(初版第1刷で確認):
p129下段 「△5四竜には▲2四成銀で2筋の突破が受からない」という箇所が、どの変化が不明。第19図から△5四龍とはできないし、参考図から△5四龍は話が合わない。
p145下段 ×「△6八角成あるが」 ○「△6八角成があるが」
p180上段 ×「△3四歩に▲4四角は…」 ○「△3四歩に▲4四角右は…」



【関連書籍】

[ジャンル] 中飛車
[シリーズ] マイナビ将棋BOOKS
[著者] 長岡裕也
[発行年] 2020年

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