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■戸辺流 こだわりのゴキゲン中飛車

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戸辺流 こだわりのゴキゲン中飛車
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マイナビ将棋BOOKS
戸辺流 こだわりのゴキゲン中飛車
[総合評価] A

難易度:★★★★
図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜有段向き

【著 者】 戸辺誠
【出版社】 マイナビ出版
発行:2019年1月 ISBN:978-4-8399-6839-7
定価:1,663円(8%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
第1章 超速▲3七銀 対 △4四銀型
〜△7二銀基本編
第1節 シンプルな仕掛け▲4五桂
第2節 ▲2九飛型からの仕掛け
第3節 ▲9六歩・▲2九飛型からの仕掛け
56p
第2章 超速▲3七銀 対 △4四銀型
〜△7二金応用編
第1節 ▲9六歩・△9四歩型からの仕掛け
第2節 △1四歩カウンター
第3節 新しい仕掛け▲4五桂+▲3八飛
28p
第3章 超速▲3七銀 対 △4四銀型
〜持久戦・穴熊編〜
第1節 相穴熊 〜基本となる手順〜
第2節 相穴熊 〜△6二飛型〜
第3節 相穴熊 〜角交換型〜
第4節 対▲6八金型穴熊
28p
第4章 先手中飛車 対 △4二銀急戦 第1節 ベースになる考え方
第2節 対△5四歩の反発 〜△7三桂急戦〜
第3節 対△5四歩の反発 〜△5三銀右型〜
第4節 対△7四歩・△7三銀急戦
38p
第5章 先手中飛車 対 角道不突き急戦 第1節 対△6四銀+左美濃 〜基本版〜
第2節 対△6四銀+左美濃 〜進化版〜
第3節 対△7三桂・△1三角型
第4節 対△7三桂 〜工夫版〜
第5節 対△7二飛急戦
28p
第6章 先手中飛車、角交換型   34p

・【コラム】(1)本を活用した上達法 (2)音楽とスポーツ (3)新構想はうっかりから? (4)加瀬師匠と一門

◆内容紹介
ここ数年、プロの振り飛車の主力戦法として君臨し続けているのが中飛車です。

特に先手中飛車は居飛車を含めたすべての戦法のなかでも1、2を争う高勝率となっています。

もちろん、居飛車からもいくつもの有力な対策が生み出されてきていますが、それを上回る研究を振り飛車側が出し続けているためです。

そんな振り飛車党の研究を牽引する棋士の一人が戸辺誠七段。中飛車を主戦場として、毎局細かい工夫を凝らし、常に新しい手順を模索し続けています。

そして本書はその戸辺七段の最新研究を惜しみなく披露したものです。

後手編では対超速の二枚銀急戦から穴熊まで
先手編では△4二銀急戦から流行の角道不突き、さらには角交換型まで網羅しています。
中飛車のスペシャリストの「こだわり」が詰まった一冊。

中飛車党の中飛車党による中飛車党のための本といっていいでしょう。

ぜひ本書をマスターして最新の中飛車を指しこなしてください。


【レビュー】
△ゴキゲン中飛車vs▲超速と、▲中飛車の戦術書。

本書は、中飛車を得意とする戸辺誠七段が、△ゴキゲン中飛車と▲中飛車でのオススメ作戦を解説する本である。

・「中飛車を指す上で知っておいてほしい基本の手順から、とっておきの研究手順まで」
・(戸辺にとっての)「ベストアルバム」
・「まずはしっかり玉を囲ってから主導権を渡さずに戦う」がこだわりポイント。

△ゴキゲン中飛車では、超速▲3七銀戦法に対して△4四銀対抗が戸辺のオススメ。先手の速攻がなく、玉をしっかり囲える、というのが理由。第1章では△7二銀の美濃囲い、第2章では△7二金型、第3章では持久戦を扱う。

▲中飛車では、さまざまな作戦を扱う。第4章は△4二銀急戦で、後手は飛先を決めず、△4二銀〜△3三銀から中央を狙ってくる。第5章は角道不突き作戦の銀対抗で、持久戦調になる。第6章は角交換型で、以前からある指し方に新研究を織り交ぜている。


各章の内容をチャートを添えながら紹介していこう。

第1章は「超速▲3七銀 対 △4四銀型 〜△7二銀基本編〜」
・△ゴキゲン中飛車vs▲超速に対して、△4四銀の銀対抗で、いったん居飛車の急戦を止める。
・居飛車は二枚銀を繰り出して右桂を跳ね、中飛車は△5一飛〜△3二金と陣形を整えて待つ。
・仕掛けは▲4五桂跳ねから。タイミングによって狙いが変わる。

(1) シンプルな仕掛け ▲4五桂
・銀対抗から単に▲4五桂と跳ねる。ベースとなる仕掛け方。

(2)▲2九飛型からの仕掛け
・▲2九飛と引いてから▲4五桂と仕掛けるのが先手の工夫で、捌いた後の△3七角が飛車取りにならない。
・▲2九飛には△1四歩が必修の一手となる。こうしておくと、先手の飛先交換に△2三歩の一手ではなくなり、他の選択肢ができる。

(3)▲9六歩・▲2九飛型からの仕掛け
・▲2九飛に加え、さらに9筋の交換も入れてから▲4五桂と仕掛ける。
・桂交換後の第二次仕掛けの中で、9筋の突き捨てが入る。桂歩の入手を見越している。
・後手は、第2節の「▲2九飛に△1四歩」ではなく、△2二角が秘伝手。事前の当たりを避け、▲4五桂にはすぐ△3三桂とぶつけることができる。
・「2筋の歩の交換は許すものの、先手からのスムーズな仕掛けを消して、穏やかな流れに持ち込む考え」(p73)
・△2二角に対して、居飛車は2筋の歩を交換して▲2六飛と引き、次に▲3五歩〜▲4五銀と仕掛けることになる。

※2019/2/9追記: 2/6〜7の王将戦第3局(▲渡辺明△久保)が、第1章第3節とかなりよく似た展開になりました。(仕掛け前後がちょっとだけ違います。▲1六歩と△6四歩の交換が入ったため、中終盤の味が違いました。具体例としては、p45の変化で▲3四飛としたときに、△6四歩が存在しているため9筋まで飛の横利きは直通していないので、本書のように▲9四桂は入りません。)

※2017/2/17追記: 2/13のマイナビ女子オープン▲磯谷△里見香でも、上記▲渡辺明△久保戦と同じ展開になりました。▲3九飛に△5六歩▲同歩△5四桂が新手とのことです。(部分的にはp32やp35に同じ手筋が載っています)




第2章は「超速▲3七銀 対 △4四銀型 〜△7二金応用編〜」
・「玄人向けだが作戦の幅が広がる」として、戸辺のオススメ。
・基本的な指し方は第1章と同じ。
・△7二金型にすることで、中央がやや厚くなり、木村美濃への組み替え時のスキが少ない。
・△6三銀型に組み替えれば、どこかで△6五歩と突ける。

(1)▲9六歩・△9四歩からの仕掛け
・第1章第3節と同様の、9筋を絡めた仕掛けが怖いが、安全に「金美濃〜木村美濃」へ組めるのが大きい。

(2)△1四歩カウンター
・9筋の歩を受けずに、△6四歩から囲いの充実を急ぐ。
・この場合、▲1六歩+▲2八飛型で▲4五桂の仕掛けがあるが、先手が2筋歩交換をしてきた瞬間に△1四歩と突いて、カウンターが狙える。
・ちなみにコラム(3)によれば、この指し方は「うっかり」から誕生したそうだ。

(3)新しい仕掛け ▲4五桂+▲3八飛
・先手が9筋の位を取り、△6二銀に▲4五桂と仕掛ける。
・続いて▲3五歩△同歩と突き捨ててから▲3八飛。



第3章は「超速▲3七銀 対 △4四銀型 〜持久戦・穴熊編〜」
・持久戦を感じたら、一目散に穴熊へ。
・▲8六角vs△4二角のラインが急所で、角のポジション争いになる。

(1)相穴熊 〜基本となる手順〜
・△8二飛と締めたら、△4二角と引いておけると中飛車が指しやすい。
・居飛車は穴熊を目指す前に▲8六角が重要な一手。

(2)相穴熊 〜△6二飛型〜
・▲8六角に対して、△6二飛から6筋で戦いを狙う。
・後手だけ先に穴熊のハッチが閉まっているので、早い動きが可能。

(3)相穴熊 〜角交換型〜
・▲8六角に対して、△7一金〜△5一飛と整えてから△4二角とぶつけるのも有力。
・左金は穴熊にくっつけすぎないように注意。
・バランスを取ってジワジワ動く。

(4)対▲6八金型穴熊
・先手が▲6六歩を突かずに、低い穴熊を目指す作戦。
・後手は9筋の位を取って、頃合いを見て5筋の歩を交換する。



第4章は「先手中飛車 対 △4二銀急戦」。
・後手が飛先を△8四歩で保留し、△4二銀と上がる。
・△3三銀〜△4四銀として、中飛車の左銀を使いにくくする狙い。

(1)ベースとなる考え方
・戸辺のオススメは、△4二銀に▲6八銀と上がる。
 (角が浮くので、△5四歩でまずいんじゃないの?⇒それは第2節以降で。)
・▲5七銀〜▲5六銀と「銀対抗」させるのが狙い。
・さらに二枚銀を作らせないよう、▲4六歩〜▲4五歩で居飛車の左銀を追い返す。

(2)対△5四歩の反発 〜△7三桂急戦〜
・▲6八銀は角への紐が切れるので、△5四歩と5筋の位に反発されるのは当然考えられる。
 (わたしも「▲6八銀を上がる前に▲7七角が必要」と教わった)
・いったん5筋の位は奪還されるが、後から5筋の位を取り返せるので戦える。
・△7三桂からの急戦は攻め足が早いので、隙を作らないように。

(3)対△5四歩の反発 〜△5三銀右型〜△5三銀右型
・△5三銀右から、菱形舟囲いで中央を守ってくる形。
・5筋の位はなくなったが、局面が落ち着くので、しっかり陣形を整えよう。
・▲6六銀が好ポジションになる。

(4)対△7四歩・△7三銀急戦
・△5四歩の反発をしないなら、超速ライクの形も後手の有力策。
・ただし、△ゴキゲン中飛車のときとは1手の違いがあるので、先手が早く動くと△5二金右が間に合わない。



第5章は「先手中飛車 対 角道不突き急戦」
・後手が角道を突かない作戦。
・△3一玉型左美濃から急戦を狙う。
・振り飛車から角交換で捌くことができない。

(1)対△6四銀+左美濃 〜基本版〜
・先手は▲5五歩を保留して、▲6六銀の銀対抗が戸辺のオススメ。
・しかし漫然と組むと、先手が作戦負けとなる。

(2)対△6四銀+左美濃 〜進化版〜
・戸辺のオススメは、1筋の歩を受けずに駒組みを進め、▲6六銀+穴熊にすること。
・美濃囲いと違って、▲4六歩+▲3六歩から穴熊の遠さを生かして攻めることができる。

(3)対△7三桂・△1三角型
・△3一玉型左美濃+△7三桂+△1三角が流行の形。
・△7三桂は▲7七角をどかすのが狙い。
 (▲8八角なら8筋歩交換の仕掛け、▲6八角などなら△3四歩と角道を通す)
・先手は穴熊に固めてカウンターを狙う。

(4)対△7三桂 〜工夫版〜
・後手が△1五歩を省略して急戦で来た場合、▲6六銀で急戦を止めるのが戸辺のオススメ。
・▲6六銀は本書のさまざまな戦型で現れ、戸辺自ら「万能」としている。
 (▲6六銀は重いと感じる棋士もいるようだ)



第6章は「先手中飛車、角交換型」
・後手が5筋位取りを許したくない場合。
・先手は▲7七角〜▲2二角成と、手損でも自分から角交換して、▲8八銀〜▲7七銀から5筋の歩を交換するのが比較的新しい指し方。
 (いわゆる「前田流」。前田祐司七段が指し始めたとされる)
・5筋の歩が切れていると攻撃陣を組み立てやすい。



〔総評〕
本書の仕掛け方は、居飛車にとってかなり有力視されている指し方なので、居飛車・振り飛車のどちらを持つにしても参考になると思う。本書では「銀対抗で居飛車の早い仕掛けをいったん押さえ、玉をしっかり囲ってから戦う」という考え方が一貫しており、少し違う局面になったとしても応用しやすい指し方だといえるだろう。

第1章〜第3章の△ゴキゲン中飛車編は、この指し方で変化をある程度絞り込むことができるはずなので、△ゴキ中での指し方に迷いがある人は一読の価値がある。

第4章〜第6章の先手中飛車編は、後手の新しい作戦がいろいろと現れているためか、むしろこちらの方が工夫が多く見られるように思えた。中にはなかなか危なそうな橋を渡っていく変化もあるため、指しこなすのはある程度の経験値が必要かもしれない。ただし、いずれも自陣に憂いがなければ強気に攻めることを意識すればよいだろう。

どの章にしても、中飛車が課題としている居飛車作戦に対して、一つの指針とソリューションを示しているといえるだろう。中飛車を指していて、特定の作戦への対応に苦慮している人は目を通しておきたい一冊だ。


※誤字・誤植等(初版第1刷で確認):
p24 ×「△1四歩と突いておくが急所の一手」 ○「△1四歩と突いておくのが急所の一手」
p116上段 ×「△4四歩のよう展開が予想され」 ○「△4四歩のような展開が予想され」
p196上段 ×「△5四歩と守れた形は…」 ○「△5四歩と守られた形は…」
p199下段 ×「良いポディションに来ている…」 ○「良いポジションに来ている…」



【関連書籍】

[ジャンル] 中飛車
[シリーズ] マイナビ将棋BOOKS
[著者] 戸辺誠
[発行年] 2019年

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