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■2手詰 相手の手を読む新感覚トレーニング

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2手詰 相手の手を読む新感覚トレーニング
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マイナビ将棋文庫
2手詰 相手の手を読む新感覚トレーニング
[総合評価]
A

難易度:★☆

見開き一問一答
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:
解答の裏透け:A
入門者〜初心者向き

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【著 者】 村田顕弘
【出版社】 マイナビ出版
発行:2019年12月 ISBN:978-4-8399-7138-0
定価:1,474円(10%税込) 416ページ/15cm


【本の内容】
【編集協力】 池田将之

・2手詰=計200問

パート1 第1問〜第50問
パート2 第51問〜第100問
パート3 第101問〜第150問
パート4 第151問〜第200問

◆内容紹介
本書は史上初の2手詰の詰将棋本です。

「1手詰は解けるけど3手詰は解けない」という方は多いのではないのでしょうか。

1手詰と3手詰の大きな違いは相手の対応手を考える部分があるかどうかで、一番難しいところでもあります。

2手詰は相手の対応手を考える部分から練習をすることができるため、3手詰の前に解く問題集として最適といえます。


2手詰のルールはとても簡単。

問題図は自分が王手を掛けた状態から始まりますので、みなさんは相手の対応手を考え(1手目)、最後の王手(2手目)を考えて下さい。


1手詰を解き終わった方、3手詰で苦労している方、新感覚の2手詰トレーニングをお試しください。


【レビュー】
「2手詰」の問題集。

将棋を始めた入門者が、最初に覚える詰みの形が「1手詰」。1手詰で詰みの概念と形が分かるようになったら、次は「3手詰」へ進む、というのが一般的なステップアップのやり方だ。

ところが、1手詰から3手詰へのステップアップは、わずか2手増えただけだが、初心者にとっては非常に高いハードルである。相手の応手を考えた上で、自分が詰ます手も読み切る必要があるため、感覚的には何倍も読みの量が必要だと思う。とはいえ、将棋を楽しむにはこのハードルは必ず超えるべきものである。

これまで、1手詰と3手詰をつなぐ懸け橋としては、『将棋3手詰入門ドリル』(椎名龍一,池田書店,2008)のように、「まず1手詰を出題し、その形になるように3手詰の問題を考える」というやり方があった。これはこれで、非常に効果の高いやり方だと思う。


本書では、新しい切り口を提案。「すでに王手がかかった状態から始める」という「2手詰」だ。まず、王手に対して玉方が逃げるor駒を取るor合い駒するなどの対応をして、最後に詰ます。

例えば〔右図〕では▲1四歩で王手がかかっている。2筋は飛が利いていて逃げられないので、△1四同玉の一手。そこでもう1手指して詰み上がりとなる。解答は「△1四同玉▲○○」という形になる。


本書は2手詰だけを200問出題した詰将棋本で、単行本としては初の試みとなる。



〔構成・レイアウトなど〕
・見開き一問一答。
・すべての問題で、相手玉に王手がかかっている。
・問題図にはヒントなし。ただし、第60問以降では状況説明(特に問題図直前の上手い手)が付くものがある。
・難易度表示あり。
・手数表示はなし。(全問2手詰のため)
・解説部は図面2枚、解説文は約100字。
・裏透け防止は、正解手に網掛けをしてある。



〔寸評〕
・複数の応対があるとき、「いずれも正解です」と書かれているのは、3手詰め入門者(本書のターゲット層)にとってはありがたいところ。
(※複数の分岐がいずれも正解というのは、5手詰めを解くレベルなら自分で判断できるが、3手詰め初心者にはかなりハードルが高いことなのです)
⇒なお、攻め方の駒余りは詰将棋では不正解(玉方が最善の対応をしていないと見なされる)なので、複数の応対があるときは、ちゃんと駒余りにならない変化を選ぼう。後半はそれ自体がテーマになっている問題も多い。

・難易度はどんどん上がるわけではなく、易しいものと少し難しいものが行ったり来たり。
・解説には、問題図のもとになった3手詰や5手詰が紹介されていることがあり、無理なく次のステップに触れることができるように工夫されている。(ただし元の作品は結構難しいものもある)



〔各章の内容〕
パート1からパート4まで、4章に分かれているが、特に明確なテーマの違いがあるわけではなく、普通に前章の続きのような問題が出たりする。章分けは時に気にしなくて良さそう。一応、後半の方が平均的には難しい。

[パート1] 第1問〜第50問(計50問)
・第7問までは、歩で王手をかけられており、玉方は取る一手。
・第8問からは、と金で王手をかけられた局面も出てきて、ときどき玉が逃げる手も読む必要がある。
・第47問などは難易度1だが、有段者でも一瞬ウッカリしそうな詰み形で、「これ難易度1なの!?」と思った。
⇒難易度表示はあまり気にしなくて良さそう。

[パート2] 第51問〜第100問(計50問)
・盤面全体を使った問題や、中段玉で逃げ道が広そうな問題がいくつか登場し始める。視野を広くしよう。
・「四桂シリーズ」のように、桂の利きに注意が必要な問題が増えてくる。桂の利きは有段者でもウッカリしやすいので、慎重に確認しよう。

[パート3] 第101問〜第150問(計50問)
・金の犠打や王手が多くなってくる。例えば、「頭金」は詰めの基本ではあるが、本書では後半に持ってきている。
⇒これは、金は動ける範囲が広く、初心者には案外高いハードルかもしれないからだろう。連続の頭金だと、変化の数だけでいえばかなり複雑になる。
詰め上がりでの駒余りを避けた最善の受けが求められる問題が増えてくる。
⇒「詰将棋」では、同手数で攻め方の持駒が余る変化と余らない変化がある場合は、解答者は「余らない変化」を選ぶのが正解になる(複数の正解が存在することはある)。「詰むのならどちらでも同じ」ではないので、今後3手詰以上にレベルアップしていくためには必須の概念となる。これは、1手詰では出てこない概念なので、2手詰の最も大きな意義の一つだといえるだろう。

[パート4] 第151問〜第200問(計50問)
・これまでのテクニック(空き王手のときに守備駒の利きを遮断する、駒余りにならないように対応する、双玉、など)が総合的に出題される。特に駒余り回避が多い。



〔総評〕
本書の対象棋力は、「1手詰は分かるようになったが、3手詰はまだほとんど解けない人」となる。すでに3手詰が解ける人には全く不要。非常にニッチではあるが、誰もが通る道で、多くの人がつまずいた経験があるところになる。

「偶数手詰め」はこれまでになかった訳ではないが、2手詰で丸々一冊作って、1手詰と3手詰の橋渡しにしようというのは、まさに「アイデアの勝利」の一冊だった。

「2手詰」の表テーマは、「1手詰以上、3手詰未満の読みを鍛える」だが、裏テーマとして「(パズルとしての「詰将棋」特有の)“駒余り回避”の概念をしっかり習得する」があるように感じた。

表テーマは「1手詰+3手詰」の本でも鍛えられるところ(むしろそちらの方がやや優れていそう)だが、裏テーマは3手詰に取り組むときに非常につまずきやすいところで、本書のような「2手詰」の強みが出ているところなのだと思う。

3手詰の一歩前として、「1手詰+3手詰」の構成と、本書の「2手詰」とで、どちらが良いかはちょっと分からないが(もう初心者には戻れないので…)、3手詰が難しくて困っている人は、まずサンプル問題を試してみてください。文庫版サンプルは第5問まで、Kindle版サンプルは第16問まで試すことができます。


なお、3手詰では空き王手が頻出で、本書でも「すでに空き王手した局面」が多く登場する。テキストでヒントや解説が書かれていたが、空き王手した駒の元の位置を「○」で囲み、移動先まで「→」を使って視覚的に表すと、本書の対象棋力の人にとってはさらに分かりやすい工夫になったかなと思う。(二日制のタイトル戦での封じ手のようなイメージ)


(2020Jan20)



【関連書籍】

[ジャンル] 詰将棋
[シリーズ] マイナビ将棋文庫
[著者] 村田顕弘
[発行年] 2019年

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