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■久保の中飛車

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久保の中飛車
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久保の中飛車 [総合評価] A

難易度:★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜有段向き

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【著 者】 久保利明
【出版社】 日本将棋連盟/発行 マイナビ/販売
発行:2013年10月 ISBN:978-4-8399-4930-3
定価:1,575円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
【構成】 鈴木宏彦

第1章 超速の最新結論
第2章 ゴキゲン中飛車の基礎知識
第3章 ▲5八金右急戦
第4章 超速の出現と△3二金型
第5章 超速に△3二銀型
第6章 超速に△7一玉型の工夫
第7章 菅井流
第8章 銀対抗
・参考棋譜=14局

◆内容紹介
さばきのアーティストの名著ふたたび!!

大ヒットとなった『
久保の石田流』(2011.03)から2年半、振り飛車党のエースによる会心の一冊が完成しました。その名も「久保の中飛車」。本書ではゴキゲン中飛車の天敵といわれる「超速▲3七銀戦法」について、振り飛車側の最新対策を解説しています。

久保九段はこう言っています。「超速の狙いは銀を使った押さえ込みで、玉の堅さに関しては居飛車穴熊とは全く違う。そこに付け込む余地ありというのが当初からの私の考え方で、その気持ちは今も全く変わっていない」

△3二金型、△3二銀型、△7一玉型、菅井流、銀対抗。ここには日本全国の振り飛車党を牽引する男の渾身の研究が詰まっています。

是非手にとって「進化したゴキゲン中飛車」を体得してください。


【レビュー】
△ゴキゲン中飛車の定跡書。「将棋世界」誌に連載された「最強久保振り飛車 さばきのエッセンス」を加筆・修正し、再構成したもの。

△ゴキゲン中飛車の隆盛、▲石田流の復活。先後でその2戦法を操る振飛車党を「現代振飛車党」と呼ぶ。プロでの現代振飛車党の筆頭が久保である。久保は特に△ゴキゲン中飛車を支え、トップ棋士を相手に数々の激闘を繰り広げてきた。

一方で、△ゴキゲン中飛車に対して▲超速という強力なライバルが出現。それまでのゴキゲン対策を駆逐し、現在ではゴキ中といえばほとんどが「対▲超速」となっている。


本書は、△ゴキゲン中飛車vs▲超速のさまざまな戦型を中心に、△ゴキゲン中飛車の現状を解説した本である。



各章の内容をチャートを添えながら紹介していこう。

第1章は、超速の(出版時点での)最新結論。第4章で解説される△3二金型の続きがメインとなっていて、大きく分けると以下の4つ。

 ┬(1) 押さえ込みを図る▲5五銀右で、千日手含みの打開策である菅井新手△2四歩
 └ いったん中央を厚くする▲5八金右に対して、
  ├(2) すぐに捌いていく△5六歩
  └ △4二銀と1手様子を見て、
   ├(3) ▲7七銀に△5六歩と捌く
   └(4) ▲6六歩から穏やかな展開を目指す

超速に詳しい人や、「将棋世界」での連載をしっかり読み込んできた人は、本章を中心に読むとよい。連載を読んでいなかった人は、本章はいったん飛ばしておいて、少なくとも第4章までを読んでから本章に戻ってくるとよい。




第2章は、ゴキゲン中飛車の基礎知識。主要な戦型に入るまでの序盤の解説で、主に以下の2つ。

 ・7手目▲2四歩の早仕掛けは、先手面白くない
 ・▲4八銀からの超急戦は、右銀がカベになって先手不利

本章は、他のゴキゲン中飛車本を読んだことのある人は省略してもよいだろう。




第3章は、▲5八金右超急戦。ゴキゲン中飛車の初期から指されている激しい戦型だが、いまだ結論は出ていない。本章の内容は、『ゴキゲン中飛車の急所』(村山慈明,浅川書房,2011.12)からあまり進展はない。この戦型の最新状況は、『アマの知らない マル秘定跡』(村田顕弘,マイナビ,2013.07)を参照してほしい。(※ただし、本章の変化の先が詳しい訳ではなく、都成流▲3三香と菅井流△5七歩がメインである)




第4章は、超速vs△3二金型。先手は▲7七銀から二枚銀急戦を狙ってくるので、その瞬間に△5六歩▲同歩△同飛と捌く。対して、▲5五歩とフタをして飛を捕獲する戦いがかなり戦われた。その激闘の歴史は以下の2冊に詳しい。

 『速攻!ゴキゲン中飛車破り』(中村太地,MYCOM,2011.09)
 『最新の振り飛車対策』(深浦康市,日本将棋連盟発行,マイナビ販売,2011.10)

この「飛捕獲型」が△3二金型の命運を握っていたため、その当時ごとの結論によって△3二金型が指されなくなったり復活したりした。本章では「後手がやれる」という結論になっている。

飛捕獲ができないとなると、先手の作戦は二枚銀から▲5五銀右の押さえ込みになる。左右どちらの銀を出るかは戦型によって微妙な違いがあるので注意が必要。本章では△5四歩と打ってすぐに銀を追い返す作戦がメインとなってるが、「△5四歩はなるべく打ちたくない」が結論で、第1章のp15〜(菅井新手△2四歩)へとつながっていく。




第5章は、超速vs△3二銀型。低い構えで一瞬堅く、▲3三角成を△同銀と形良く取れるという利点がある半面、進展性はない。

美濃囲い+△3二銀型に対して、▲7七銀の二枚銀作戦はやはり強敵で、後手はこの瞬間に△5六歩▲同歩△同飛と捌く一手。ここで▲5五歩の飛捕獲には△3二金型よりもずっと条件が良いので問題ないのだが、▲6六銀からの押さえ込みに対しては▲渡辺△谷川戦(A級)での渡辺の指し回しが決定打となり、後手の打開策がない。

したがって、後手は囲いを省略し、△7二玉+△3二銀型ですぐに△5六歩と捌く。角交換後、先手の指し方が豊富にあり、後手はその全てに解を用意しておく必要がある。それがきついため、△3二銀型の局数は減っているようだが、この戦型が潰れたわけではないので、他の戦型(△3二金型など)の動向次第では復活するかもしれない。




第6章は、超速vs△7一玉型美濃囲い。片美濃囲いを作るのに通常4手かかるところを、△7一玉型で保留するので3手で済むので、1手を左銀の進出(△4二銀)に回すことができる。そのため、第4章・第5章で大きなテーマとなってきた▲7七銀からの二枚銀急戦に対して、左銀の応援が間に合う。二枚銀急戦がどうしても嫌な人は、第8章の銀対抗か本章の作戦を選択するとよい。

先手の作戦は、事実上▲4五銀からの急戦に限定される。ただし、この唯一の急戦が後手にとっては厄介で、久保としては、何らかの新対策が出てこない限り採用できない戦型となっているようだ。ただし、間口が狭い仕掛けで先手は完璧さを求められるので、アマなら採用余地があるのではないだろうか。




第7章は、菅井流△4四歩。2011年11月の▲長岡△菅井戦が1号局で、単行本初登場は『最新定跡村山レポート』(村山慈明,マイナビ,2012.07)。

「歩越し銀には歩で対抗」という格言があるが、菅井流は銀が出てくる前から歩で対抗しておき、▲4六銀にはすぐに△4五歩と反発していく。▲4六銀型で威張られるのを拒否する指し方である。これはこれで難しい戦いであり、トップレベルの実戦も何局もある。

一方、「右銀が出づらいなら左銀を出す」という羽生流の指し方もあり、菅井流の課題局面の一つとなっている。




第8章は、銀対抗型。先手の右銀の動きに合わせて、後手も左銀を繰り出し、△4四銀型でいったん超速の出足を止めるというもの。超速対策の中では比較的初期からある指し方で、単行本として初めて超速が載った『遠山流中飛車急戦ガイド』(遠山雄亮,MYCOM,2010.07)ですでに触れられている。

この戦法の評価は揺れ動いており、当初は「銀が重い形で捌きにくい」と見る向きもあったが、「玉を囲いやすい」という利点も認められている。

後手から急戦で捌くのは無理気味である一方、先手が角道を止めずに居飛穴を目指すのは欲張り気味でリスキー。ということで、銀対抗型ではほとんどの場合で先手が角道を止めて相穴熊になる。双方ともに駒組みでどういった工夫をするかがテーマとなっている。




本書は、超速に対するゴキゲン中飛車の苦闘の歴史でもある。参考棋譜14局はすべて久保の実戦だが、なんとゴキゲン中飛車側の4勝10敗。相手の大半がトップ棋士であるとはいえ、著者が持っている側の戦法を解説した本としては異例であろう。いくつもの作戦が潰されていく中で、なんとかゴキゲン中飛車を生き長らえさせようという、久保の執念が感じられる。

この3年くらい(2011年〜2013年)の△ゴキ中vs▲超速の現状がよく分かるので、「○○型が最近見かけないのはなぜ?」とか「○○型は現在どうなっているの?」という疑問をお持ちの方は必読。(2014Apr04)

※誤字・誤植等(初版第1刷で確認):
特に見つかりませんでした。



【関連書籍】

[ジャンル] 
中飛車
[シリーズ] 
[著者] 
久保利明
[発行年] 
2013年

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