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■新鋭居飛車実戦集

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新鋭居飛車実戦集
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新鋭居飛車実戦集 [総合評価] B

難易度:★★★★

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)C
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
上級〜有段向き

【著 者】 西尾明 大平武洋 村中秀史
【出版社】 毎日コミュニケーションズ
発行:2008年5月 ISBN:978-4-8399-2860-5
定価:1,449円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
第1章 西尾明五段 ・新戦法を相手にする―対中村亮介四段戦
・自分らしい一局―対横山泰明四段戦
・力戦矢倉を戦う―対木村一基七段戦
・名人に初勝利―対森内俊之名人戦
【コラム】最近の傾向
 
第2章 大平武洋五段 ・急戦か持久戦か?―対長岡裕也四段戦
・昇段の一番―対長沼洋七段戦
・脇システムの戦い―対勝又清和六段戦
・矢倉でも1手損?―対佐藤秀司六段戦
【コラム】大きく指す
 
第3章 村中秀史四段 ・相穴熊の戦い―対久保利明八段戦
・四間飛車銀冠との戦い―対千葉幸生戦
・森下システムの戦い―対佐藤紳哉五段戦
・4六銀3七桂と戦う―対先崎学八段戦
【コラム】私と矢倉
 

・【コラム】最近の傾向(西尾明)/大きく指す(大平武洋)/私と矢倉(村中秀史)

◆内容紹介(MYCOMホームページより)
本書は居飛車党本格派よる自戦記集です。著者の3人はいずれも将来有望な若手棋士で、森内名人、久保八段、木村八段など、一流棋士と戦った将棋を解説しています。
戦型は対振り飛車と、矢倉を中心とした相居飛車です。「研究」と題したページでは、実戦に現れなかった流行の序盤や、中終盤の重要な変化を詳しく解説しています。
若手棋士がどのような考え方をして居飛車を指しているのかが、よくわかる一冊となっています。


【レビュー】
居飛車党の若手棋士の自戦記集。

先行して発売された『新鋭振り飛車実戦集』(MYCOM,2008.02)、後発の『関西新鋭棋士実戦集』(2008.07)と併せ、「若手棋士自戦記集」三部作の中巻にあたる一冊。本書は居飛車党3人のオムニバス形式で、1人あたり4局、計12局の自戦記になっている。

自戦記に挟む形で、著者が気になる局面をより詳しく検討する「研究」コーナーは、本書でも健在。1局につき1〜2回挿入されており、各棋士の「おまかせ」ながら、他の2冊に比べて統一感が取れている。

著者の紹介をしておこう。
西尾明(にしお・あきら)五段:(Wikipedia
 
2003年4月四段昇段。本書出版後、竜王戦では順調な実績を上げ、2013年9月現在は2組在籍。なお、順位戦はC2に留まっている。また、東工大に合格(中退)している。『よくわかる角換わり』(2011.08)を執筆。
大平武洋(おおひら・たけひろ)五段:(Wikipedia
 
2002年4月四段昇段。ガールズバンド「ZONE」の熱狂的ファンで、TV番組「トリビアの泉」で紹介されたこともある。本書が発売された年度の順位戦でC1に昇級。
村中秀史(むらなか・しゅうじ)四段:(Wikipedia
 
2004年10月四段昇段。本書発売の1年半後、勝ち星規定で五段昇段、さらに1ヶ月後に竜王戦規定で六段へと連続昇段。順位戦はC2。



棋士別の対局内容と感想を列記してみよう。

〔西尾〕
(1局目)▲西尾△中村亮,2008-02-18,2手目△3二飛(4手目△6二玉)
  研究1 先手の対策−△3二飛に対して
(2局目)▲西尾△横山,2007-08-28,△四間飛車藤井システム
  研究1 面白い詰み筋−△6九銀で△5七桂成とした場合
(3局目)▲西尾△木村,2005-09-15,力戦矢倉▲阿久津流急戦
  研究1 幅広い中盤戦−△8七歩で△6七歩とした場合
(4局目)▲西尾△森内,2007-02-21,角換わり腰掛け銀
  研究1 後手の対応−▲4三歩に対して△同玉
  研究2 難解な終盤戦−▲8八同金以降の変化

[棋風]「定跡とは関係なく一から作り上げていくような将棋が好き」(p43)
 →3局目で、先手ながら5筋交換の急戦矢倉を採用しているところに棋風がよく表れている。
・(1局目の印象)細かい手から優位を拡大し、そこから相手に無理攻めさせて息切れさせ、最後は確実に仕留める
・(2局目)p33の△4五桂▲6六金前後の綱渡りのような変化が面白い。安全勝ち狙いから、局面の流れに応じて一手勝ちを読み切る強さを感じる。
・(3局目)矢倉のねじり合いに強い
・(4局目)「名人が相手とはいえ同じ相手に3連敗する訳にはいかない」(p61)
     相居飛車の中終盤のねじり合いに強い
〔大平〕
(1局目)▲大平△長岡,2006-09-12,△四間飛車藤井システム
  研究1 急戦も有力−▲5五角からの決戦
(2局目)▲大平△長沼,2006-09-19,△ゴキゲン中飛車▲丸山ワクチン
  研究1 序盤の駆け引き−△7二金に対して
(3局目)▲勝又△大平,2006-03-31,矢倉脇システム
  研究1 一気に終盤戦−▲4八飛で▲1五歩の変化
(4局目)▲佐藤秀△大平,2007-02-27,矢倉▲森下システム〜▲4六銀-3七桂
  研究1 昔の定跡では?−△6四角で△9五歩

[棋風]「相手の得意戦法を受けて立つ」(p150)
 →後手番矢倉が2局あるところに注目。2手目△8四歩で「矢倉でも角換わりでも(▲中飛車でも)やってらっしゃい」と、渡辺竜王や郷田九段に似ているところがある。
(1局目)▲2四歩の突き捨てが好タイミング
(2局目)有利の中盤で悪手連発、不利になってからの耐え方に見どころあり
(3局目)歩使いが上手い
(4局目)中終盤のねじり合い
「相手の得意戦法を受けて立つ」(p150)

〔村中〕
(1局目)▲村中△久保,2005-10-12,△四間飛車 相穴熊
  研究1 じっくり攻める−△3五同歩の変化
(2局目)▲村中△千葉,2006-05-30,△四間飛車3二銀型▲居飛車穴熊
  研究1 振り飛車側の序盤−基本図から△3二銀の展開
  研究2 どう仕掛けるか−▲4六歩に代えて▲5五歩の仕掛け
(3局目)▲村中△佐藤紳,2005-06-14,相矢倉▲森下システム
  研究1 森下システムvs雀刺し−▲5五同銀に△9六歩
(4局目)▲先崎△村中,2006-04-12,相矢倉▲4六銀-3七桂
  研究1 8筋の突き捨て−△8六歩を▲同銀と取ると
  研究2 受けか攻めかの実戦心理−▲1五歩に△7五歩

[棋風]大局観に優れている感じ(自分の大局観を反省する記述もあったが)。特に、一見良くなさそうな交換やスルーしそうな仕掛けに「何かありそう」とアンテナが反応する。
(1局目)相手の重い銀と自分の馬を交換するのが俗手の好守。駒の効率のバランスを正確に見極めている。
(2局目)やや少数派の△四間飛車3二銀型持久戦に対する居飛車の仕掛け方、四間側の反撃の仕方が参考になる。白熱の終盤戦も見どころ。
(3局目)村中は森下システムの愛用者。本局では、仕掛け前のごく自然?な矢倉入城を咎める機敏さを見せた。
(4局目)本書唯一の著者の負け棋譜。本局の中盤以降は大局観が乱れている。



●総評
三部作の中では、一番まとまりが良い。全体の難易度がそろっており、突出した個性はないものの、非常に読みやすく、また並べやすかった。

本書は居飛車党の視点で書かれており、戦型は対抗形(居飛車側視点)、矢倉、角換わりが取り上げられているので、特に飛先を突き捨てるタイミングに注目して並べるとよいだろう。

難点としては2つ。一つ目は、「居飛車実戦集」でありながら、横歩取り・相掛かり系は扱われていないことと。ただし、これは矢倉・角換わり系とはかなり感覚の違う将棋なので、これらが得意な棋士を別途取り上げるのが良さそうだ。

二つ目は、本書の著者3棋士が現時点であまり目立った活躍をしていないということ。出版からすでに5年経過しているので、そろそろブレイクして本書の価値を上げてほしいところだ。(2013Sep09)


※誤字・誤植等(初版第1刷で確認):
p13 ×「堂々と△8二玉されて」 ○「堂々と△8二玉されて」
p20 ×「一直線の攻め合いなり」 ×「一直線の攻め合いなり」
p141第8図 ×「△2九飛、▲9六歩」 ○「△3九飛、△9六歩」



【関連書籍】
 『
新鋭振り飛車実戦集
[ジャンル] 
自戦記
[シリーズ] マイコミ将棋ブックス
[著者] 
西尾明 大平武洋 村中秀史
[発行年] 
2008年

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