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■四間飛車道場 第二巻 右4六銀

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四間飛車道場 第二巻 右4六銀
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東大将棋ブックス
四間飛車道場 第二巻 右4六銀
[総合評価]
A

難易度:★★★★☆

図面:見開き6枚
内容:(質)A(量)A
レイアウト:B+
解説:A
読みやすさ:B
有段向き

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【著 者】 所司和晴
【出版社】 毎日コミュニケーションズ
発行:2001年12月 ISBN:4-8399-0610-6
定価:1,200円 222ページ/19cm


【本の内容】
第1章 右4六銀の駒組み 第1節 右4六銀の駒組み 8p
第2章 箱入り娘右4六銀 第1節 箱入り娘対5三歩型
第2節 箱入り娘対5四歩型
50p
第3章 舟囲い右4六銀 第1節 舟囲い急戦
第2節 舟囲い準急戦
66p
第4章 4一金型四間飛車 第1節 △3ニ飛型
第2節 △3ニ金型
第3節 △3ニ銀引型
58p
第5章 左美濃右4六銀 第1節 3筋取り込み型
第2節 5五歩突き型
34p

◆内容紹介(MYCOMホームページより、一部割愛)
ブックス四間飛車道場の第二巻は、古くからプロアマ問わず最も人気ある戦法の四間飛車をとりあげています。藤井システムの登場により、勢いを取り戻した四間飛車。左美濃、居飛車穴熊の旗色が悪くなったいま、居飛車側の対策として急戦が見直されています。本書は著者が渾身の研究を尽くした箱入り娘を中心に、右4六銀戦法の最新定跡を徹底解説した本書は急戦党、四間飛車党ともに必読の一冊です。


【レビュー】
対△四間飛車の▲右4六銀戦法の定跡書。

対四間飛車の戦い方はいろいろあるが、急戦も有力。特に四間飛車△4三銀型(+△5二金左を早く上がっている形)には、右銀を▲5七銀〜▲4六銀と繰り出して▲3五歩と仕掛ける「右4六銀戦法」が有力で、急戦定跡の基本ともいえる。

ただし、この戦型は『急戦!振り飛車破り(3) 徹底右4六銀』(1992.03)で所司自身が解説しているが、「当時はうまくいった仕掛けが新しい受けに遭って通用しなくなった」(p222)ような変化があり、一筋縄ではいかなくなった。(第3章参照)

そこで、▲6八金寄と「箱入り娘囲い」を作ってから仕掛けるのが、本書での新研究となる。四間側も、急戦に強い△4一金型で待機するなど工夫を見せるし、さらにそれに対して先手も(藤井システムで壊滅したはずの)左美濃+▲右4六銀が出てくるなど、様々な工夫がみられている。


本書の内容を、チャートを添えながら紹介していこう。



第1章は、「右4六銀の駒組み」。後続の第2章〜第5章の内容を概説している。

・四間飛車△4三銀型(+△5二金左を早く上がっている形)には、右4六銀戦法が有力。
・右4六銀戦法は、『急戦!振り飛車破り(3) 徹底右4六銀』(1992.03)で所司自身が解説している。
・ただし、「当時はうまくいった仕掛けが新しい受けに遭って通用しなくなった」(p222)ような変化がある。(第3章)
・そこで、▲6八金寄と「箱入り娘囲い」を作ってから仕掛けるのは、本書での新研究(第2章)。後手の反撃を甘くし、飛を5筋に回る含みを持つ。後手が△4三銀-△5二金左型のときに有力。
・ただし、四間側が一段金だと効果が薄い。(第4章)
・四間飛車△4一金△8二玉型には左美濃+右4六銀も有力。(第5章)



第2章は、「箱入り娘右4六銀」。右金を▲6八金寄と寄せ、金2枚を縦に連結する。所司の新研究(当時)で、本書のメインコンテンツとなる。

・6九金にヒモが付くことで玉の堅さが増す。
・▲5八飛と転回できる。
・ただし、箱入り娘は一般的に「手が付くと(崩壊が)速い」囲いともいわれる。

また、後手が通常より1手余分に指す必要があるため、この戦型は大きく2つのパターンに分かれる。
(1)は△5三歩型で、△1二香or△6四歩or△4二金で待つパターン。
(2)は△5四歩型で受けるパターン。▲5五銀と出る変化がなくなるが、▲5五歩と突く変化が生まれる。

どちらも難解で、簡単に居飛車良しとはならないが、「ガンガン攻めたいけど、舟囲いの耐久力には不安がある」という人にはオススメの作戦。箱入り娘は一時的な堅さは結構高い。例えばp25の△5七桂!は、▲5八金右型の舟囲いでは決め手級だが、箱入り娘では攻め合いに出ることができる。

なお、利点ばかりではなく、逆に箱入り娘の形が生きない展開もあるので気を付けよう。



第3章は、「舟囲い右4六銀」。▲3五歩の仕掛け後に、すぐ▲3四歩と取り込む。以下は、
(1)▲3八飛から決戦になる順
(2)▲3五歩〜▲3七銀と銀の立て直しを図る順
に分かれる。有力ではあるが、本書ではあまり上手く行かないという結論。

急戦!振り飛車破り(3) 徹底右4六銀』(1992.03)のころは、この舟囲い急戦がかなり有力だった。同時期発行の『羽生の頭脳 1 急戦四間飛車破りPart1』(1992.04)もほぼ同じ見解。しかし、p70第5図の△4三角の受けが発見されて「先手不満」に見解が変わったとのこと。

逆に△四間飛車を指す人にとっては、この変化は必修となる。



第4章は、「△4一金型四間飛車」。後手が左金の動きを一段金のまま保留し、玉の入城を急ぐ。左金を左辺の受けに柔軟に使いやすく、急戦に対しては受けやすい形である。

(1)△3二飛型
・△4三銀-△4一金型のときは、▲3五歩に△4二金!が後手の最強手段。
・▲3四歩△同銀▲3八飛の仕掛けはうまくいかない。
・仕掛けてから箱入り娘(第2章での先手の工夫)にしてもメリットがない。
・先手は、▲3四歩△同銀▲3五歩からの準急戦を目指す。

(2)△3二金型
・後手は、金上がり保留を生かして△3二金もある。
・金の守備力が強く、急戦が難しい。
・先手は▲4六銀-3七桂-2六飛型にして、持久戦を狙いたい。後手の待ち方次第では仕掛けることもできる。

(3)△3二銀引型
・さらに後手は、△4三銀を△3二銀と「出戻り銀」にすることもできる。
・右4六銀戦法が△4三銀型を狙ったものなので、△3二銀型には▲3五歩の仕掛けが成立しない。
・やはり先手は▲4六銀-3七桂-2六飛型から仕掛けを狙う。



第5章は、「左美濃右4六銀」。攻撃力と玉の堅さがあって、非常に優秀な戦法ではあるが、いつも無条件にできるわけではない。

・△8二玉-△4一金型(第4章での後手の工夫)には、左美濃に組み替えてからの▲4六銀が有力。
・△7一玉型のときは、対左美濃の布陣を敷かれるので、組み替えてはいけない。
(※△7一玉型で△8四歩を突かれると、藤井システムの陣形でなくても、左美濃は中終盤で玉頭戦にされて苦しくなる。



【総評】
わたしはよく△四間飛車に対して、本書第5章のような「▲3六歩で急戦を見せてから左美濃にして▲右4六銀」を指しているので、本書の内容は非常に参考になった。

※▲3六歩に(△7一玉のまま)△5二金左とされたときの指し方がこれまで分からなかったが(左美濃にすると玉頭攻めの体勢を作られて危険)、それこそ第2章の「箱入り娘+▲右4六銀」で行けばよいということが本書を読んで分かった。(p10に「一段金の構えは急戦に強い意味があり、あえて△5二金左とはしない」とある)

また、第3章の「舟囲い+右4六銀」の知識は、最初は『四間飛車破り 5七銀右戦法』(1988)で覚え、その後『羽生の頭脳 1』(1992)で止まっていた時期があるので、見解が更新されたことはちゃんと知っておくべきだと思った。

なお、本書の後も「△四間飛車vs▲急戦」を解説した本は多数出版されているが、実は右4六銀を専門的に解説した本は本書で最後になっていて(2018年現在。『四間飛車の急所(1) 進化の謎を解く』(2003.12)で少し触れられているが、「箱入り娘型」についてはノータッチ)、▲右4六銀戦法の決定版的な存在になっている。

後手の形の違いによって仕掛け方が変化する▲5七銀左戦法に比べて、右4六銀はシンプルな仕掛けが可能なので、他書でこの戦法を知って「得意戦法にしてみたい」という人は、ぜひ本書を精読してみよう。

また、「たまに右4六銀をやられるんだけど対応が分からない」という四間飛車党も要チェックの一冊。

(2021Jan09)


※誤字・誤植等(第1刷で確認):
p100上段 ×「この手で▲3四同歩は」 ○「この手で▲3四歩は」
p199上段 ×「C図は前ペーからの続き」 ○「C図は前ページからの続き」



【関連書籍】

[ジャンル] 四間飛車vs急戦
[シリーズ] 東大将棋ブックス
[著者] 所司和晴
[発行年] 2001年

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