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■最強棒銀戦法 決定版

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最強棒銀戦法 決定版
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スーパー将棋講座
最強棒銀戦法 決定版
棒銀の必勝バイブル
[総合評価] A

難易度:★★★☆

図面:見開き4枚
内容:(質)A(量)B
レイアウト:A
解説:A
読みやすさ:A
中級〜有段向き

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【著 者】 飯塚祐紀
【出版社】 創元社
発行:2008年7月 ISBN:978-4-422-75112-2
定価:1,260円(5%税込) 224ページ/19cm


【本の内容】
第1章 相掛かり棒銀 ・原始棒銀(単純な成功図/正しい受けの形)
・本格的な相掛かり棒銀
├(1)▲6六角型(一手得で角交換させる)
│ ├1.△8二飛
│ └2.△6六同角
├(2)▲4五歩型(持久戦調で主張点を先に作る)
│ ├1.後手がおとなしく指すと
│ ├2.後手早繰り銀の速攻
│ └3.△7三角型で先手の理想形を阻止
└(3)▲3五歩型(歩越し銀にしない狙い)
・復習問題=8問
74p
第2章 矢倉棒銀 (1)急戦型(二枚銀)
(2)飛車先不突き型(飛車先不突き棒銀)
(3)持久戦型(△スズメ刺しvs▲棒銀)
・復習問題=8問
76p
第3章 対振り飛車棒銀 ・△四間飛車対▲棒銀
├(1)△6五歩型
└(2)△5一角型(△5五歩突き捨て)
・復習問題=8問
68p

◆内容紹介
棒銀戦法は基本的に二段構えの攻撃法である。まず単純に銀を突進する第一次の攻撃。そこで得た成果を再投資して、第二次の攻撃を開始する。この第二次からの攻撃に、初心と上級の差が出てくる。本書は実用に徹し、第一次から第二次の攻めまでを徹底的に解説した、上級者も実戦で使える棒銀のバイブルである。原始棒銀、矢倉棒銀、対振り飛車棒銀まで、棒銀での勝ち方がこの一冊でわかる。著者の研究成果の集大成。


【レビュー】
棒銀戦法の解説書。

棒銀は、よく初心者へオススメされる戦法である。「まずは棒銀を覚えよ」ということで、入門書にも原始棒銀での突破の仕方がしばしば書かれている。しかしよく考えてみると、そもそも相掛かりや角換わりを後手番で受けようなどという人は、すでに有段者と思って間違いない。さらに、初級者同士でも飛車先突破に成功することはまれで、多くは銀交換後の二次攻撃が必要となってくる。実は、棒銀とは結構上級者向きの戦法なのだと思う。

本書は、中級クラス以上から使える本格的な棒銀戦法を解説していく。

第1章は相掛かり棒銀。初級者向きの原始棒銀は最初の8pのみ。まず相棒銀での先手の単純な成功例(飛車先突破)と、後手の正しい受け方(浮き飛車△8四飛+△3三角)を簡単に解説。

現在プロで指されている相掛かり棒銀は、飛車先突破が狙いではなく、「原始棒銀に対して後手の受け方が限定されている→じっくり指して駒組み勝ちを狙う」がメインの指針だ。プロでは先手が銀冠から持久戦にすることも多いが、アマが指しこなすのは難しい。本書では、どちらかといえば積極的に良さを求めていく指し方で、特に▲4五歩型が「プロでも比較的新しい指し方」(p30)だそうで、有力だ。しかし「比較的新しい指し方」なら「決定版」とはいいづらいような気も…。

とにかく、プロで流行の相掛かり棒銀を、アマでも指せるように解説している点は◎。

第2章の前半は二枚銀急戦。▲4六銀・▲6六銀と二枚の銀を出て、左銀は5筋の強化(△6四角に▲5五歩を用意)、右銀は▲3五歩から角銀総交換を狙う。通常の棒銀よりも銀交換には成功しやすいので、交換成功後が基本図となっており、そこからのさまざまな第二次攻撃の仕掛け方、それと後手の反撃(△4九角)に対する正しい受け方が解説されている。「銀交換してからどうすればいいか分からない」という人には、かなり参考になるだろう。

第2章中盤は飛車先不突き棒銀。先手が飛車先不突きの▲2七歩のまま、右銀を▲2六銀と繰り出し、端攻めを狙う。▲1五銀△1四歩に▲同銀と取ってしまう筋や(私が初級者時代に読んだ本では、「▲2六銀と引いて次に▲1五歩を狙います」と書いてあったが、本書では推奨されていない)、▲2六歩を入れていくタイミングが参考になる。

第2章後半は、△スズメ刺しに対する▲棒銀。もともとスズメ刺しが廃れたのは、棒銀による反撃が速いからとされている。本書では、その棒銀での反撃の仕方を具体的に解説していく。

第2章の3戦法は、実はいずれも20〜30年ほど前に流行ったものであり、現在はあまりプロで指されていない。しかし完全に対策ができて廃れたというわけでもなく(プロ的にはそうかもしれないが)、特にアマでは今でも非常に有力な戦法になりうると思う。

【参考棋書】
 ・二枚銀急戦⇒『
急戦でつぶせ ヤグラがなんだ』(田中寅彦,MYCOM,1987)
 ・飛車先不突き棒銀⇒『
スーパー矢倉戦略』(田中寅彦,竅iえい)出版社,1983)
 ・スズメ刺しvs棒銀⇒『
これが矢倉だ《スズメ刺し》』(桐谷広人,MYCOM,1986)

第3章は△四間飛車対▲棒銀。これまでの居飛車棒銀とは、似て非なる戦法だ。玉頭を攻めているわけではないので、とにかく銀が遊び駒にならないように気をつける必要がある。後手の対策は(1)△6五歩 (2)△5一角〜△5五歩の突き捨てで、やや古めの指し方ではある(しかし今でもかなり有力)。現在主流の△5一角〜△6二角〜△4三金型や、棒銀対策シフトの決定版とされる△4二金型は検討されていない。これらは他に詳しくて難しい棋書がたくさん出ているので、そちらを参照のこと。

面白いのは、わずか1ヶ月前に出版された『四間飛車がわかる本』(野秀行,浅川書房,2008.06)で、四間飛車側の指し方として推奨されている△6五歩型を本書で破っているところ。いったいどちらが正しいのか、確かめたい人は見比べてみてください(笑)。
△四間飛車vs▲棒銀、▲7七桂まで
ひとつ例を挙げれば、本書p162〜と野本p140〜がほぼ同じ局面の解説で(9筋の歩の突き合いの有無が違うが、影響なさそう)、本書p174第15図の1手前で【右図】になる。これが野本p149とほぼ同一局面。ここで本書では△9五歩を本線とし、ここから終局までを解説。もちろん先手勝ち。野本も同じ手順が振飛車の第一感としているが、居飛車が完璧に対応すれば先手良しとして、途中で解説を打ち切っている。△9五歩の結論は同じだ。そして野本では△5五歩〜△2七角から馬を作り、棒銀を遊ばせて長期戦を狙うのが本線としているが、その変化は本書ではスルーされている。

ちなみにこの変化は、『
久保流四間飛車(上)』(久保利明,1997)p54では簡単に後手良しとなっているが、その結論は本書で覆されている。また、『四間飛車道場 第五巻 棒銀』(所司和晴,2002)、『四間飛車の急所(3) 急戦大全【下】』(藤井猛,2004)や『四間飛車破り【急戦編】』(渡辺明,2005)ではほぼスルー。


全体的に、単なる指し手を羅列したような解説ではなく、いたるところに上達の心得が散りばめられているのがうれしい。また、棒銀戦法のコツを上手く言語化できていると思う。読んでいてあまり疲れないし、特に本書が対象としている2級〜二段前後の人に対してかなり的確な解説になっている。

棒銀戦法の本は、級位者向けのものか、逆に有段者・高段者向けのプロ将棋を研究したようなものが多く、意外と本書のレンジを狙ったものが少なかった。本当に棒銀を得意戦法にしようと思っている人にはオススメの一冊である。(2008Oct19)

※初版の誤植…
(1)p4 目次の「第3章○対振り飛車棒銀─111」 (誤)111 (正)155
(2)p102 タイトル (誤)飛車先歩突き型 (正)飛車先不突き型 全然意味が変わってしまいます(汗)
(3)p212-3 (誤)△5五歩 (正)△5四歩



【関連書籍】

[ジャンル] 
棒銀
[シリーズ] 
スーパー将棋講座
[著者] 
飯塚祐紀
[発行年] 
2008年

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