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第60期将棋名人戦 | [総合評価] D 難易度:★★★☆ 図面:見開き2〜3枚 内容:(質)B(量)C レイアウト:B 解説:B 読みやすさ:B 中級以上向き |
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【編】 毎日新聞社 | ||||
【出版社】 毎日新聞社 | ||||
発行:2002年7月 | ISBN:4-620-50480-7 | |||
定価:1,890円(5%税込) | 191ページ/19cm |
【本の内容】 | |||||||||||||||||||||||||
【名人】丸山忠久 【挑戦者】森内俊之 (奪取)
・盤側の記(加古明光)=9p |
【レビュー】 |
名人戦の観戦記。 「激辛流vs鉄板流」という、当時はかなり地味な印象を受けた第60期名人戦。とはいえ、今期は横歩取り△8五飛や四間飛車藤井システム、さらに丸山の得意戦法である角換わり腰掛銀など、急戦調でスピーディーな将棋が多かった。そのためか、あまり競り合いの将棋にはならなかった感じだ。 第1局は丸山の敗因不明で、森内の完勝。 第2局は、いったん丸裸になった玉に次々と金銀を打ちつけ、あっという間に分厚い陣形を築いた森内の受け技は見事だと思った(その後、形勢は二転三転するのだが)。 第3局は丸山がやや苦しい展開からまさに名人技の飛車捌きを見せ、勝ちになったかと思われたところで痛恨の頓死。名人戦史上に残る頓死と書かれたが、金底の歩を龍で取られて、その1歩がぴったり足りて詰むので、これはうっかり見落としていても不思議ではないと思う。なお、加古氏の高慢ちきな観戦記が相変わらず鬱陶しく感じる(後述)。 第4局は、第八譜での丸山のレア手筋が参考になるし、森内の寄せも見事だ。名人奪取後の森内のコメントには感動。「あきらめないでやってきて、よかったです」「同期で強い人がいっぱいいました。タイトルを取れないと思ったこともありました。地道にやってきたかいがありました」もう無冠の帝王じゃないです。 前期からレイアウトのマイナーチェンジが行われたが、今期は初めて「見開き一譜」ではなくなり、一譜あたり3ページになっている。といっても文章や図面が増えているわけではなく、行間を広げ、大きな余白を入れてページ数を増やしているだけ。4局で終わってしまったことに対してページ数を維持するための措置だろうが、はっきり言って“改悪”。かなり読みづらくなっている。なんというか、「しょぼい喫茶店のアイスコーヒー」(氷を大量に入れて量をごまかしている)みたい。読者のことを考えたなら、こんなふざけた真似はできないぞヽ(`Д´)ノ 局数が少ないのならページ数が少ないままでも良いし、それでは見栄えが悪いというのなら以前のように挑戦者のA級順位戦の棋譜を載せた方がまだマシ。 また、巻末に加古氏による「名人戦60年史」という寄稿があるが、基本的には彼の回顧録のようなもの。年表などはなし。江戸時代から木村時代(昭和20年代頃)までの概略をざっとおさらいしたあと、(彼がリアルタイムで見てないとはいえ)大山時代をほとんど吹っ飛ばしているのは、「60年史」といえるのだろうか?また、文章の流れとはいえ、朝日新聞との名人戦争奪問題で将棋連盟への不信感を書いたり、王将戦創設の話や羽生七冠達成(これも王将戦)の話に脱線したりで、「名人戦史」としてはかなり残念な出来である。 第3局の観戦記、盤側の記、名人戦60年史と、「加古節オンパレード」に閉口。名人戦に威厳を求めておきながら、観戦記で丸山名人をマルちゃん名人と呼ぶな!! 森内に「このヤロー」って何だ!? 「ほとんどの観光客は、ここで…対局が行われてるとは思いもしまい。」って、何のための地方遠征対局なの?温泉旅館での大盤解説会に浴衣客は入場拒否って何?さらにそれについてファンからほめられた…って、開いた口がふさがらない。なお、昔の加古氏はちゃんとした観戦記や文章を書いていた。いつのころからか、自分が一番偉いと思ってるような文になってしまった。 一冊の棋書としてみるならもはやEに近いが、名人戦観戦記は長年のシリーズもので資料的価値があるのでDで踏みとどめた。(2008Aug13) |