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マイナビ将棋BOOKS 早分かり 角道オープン四間飛車 定跡ガイド |
[総合評価] B 難易度:★★★★☆ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:B 解説:B 読みやすさ:B 有段向き |
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【著 者】 所司和晴 渡辺明/推薦 | ||||
【出版社】 マイナビ | ||||
発行:2014年4月 | ISBN:978-4-8399-5095-8 | |||
定価:1,663円 | 256ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
△角道オープン四間飛車の定跡書。 角道オープン四間飛車は、その名の通り、角道を止めずに戦う四間飛車のことである。ノーマル四間飛車は4手目△4四歩と角道を止めてしばらく角交換をさせずに戦うのに対し、角道オープン四間飛車は4手目△4二飛といつでも角交換ができる形で戦う。 元々は、角交換した後に向飛車に振り直すパターンが多かったことから、「△2手損角交換向飛車」とも呼ばれていた。その後、四間飛車のまま戦う場合も増えたために「△角交換四間飛車」と名を変え、さらに角交換せずに戦うケースもあることから「△角道オープン四間飛車」と呼ばれるようになっている。 本書は、まだまだ発展途上にある角道オープン四間飛車の戦いについて、現状での定跡らしきものを解説した本である。 以前にレビューした『早分かり 相矢倉定跡ガイド』(2013.12)と同様に、本書ではそれぞれの戦型で最も本筋と考えられている手順に絞り込まれているため、各節の定跡手順は基本的に一本道となっていて、その道から変化する手順のみを変化手順として解説するスタイルを採っている。そのため、各節のチャートは他の定跡書のようなツリー形状にはならず、櫛歯状になっている。 各章の内容をチャートを添えて紹介していこう。なお、少しでも見やすくなるように、本筋とされる手順には薄水色の背景を付けてみた。 序章は、角道オープン四間飛車の基本について。 この戦法は先手でも指すことはできるが、本書では△四間のみを扱う。さらに、次のように大きく四つに分けることができる。第1章・第2章は後手からすぐに角交換する形、第3章〜第5章は角道を開けたまま美濃囲いに組む形、第6章は△7二玉まで囲って▲6五角の筋を消してから石田流に振り直す「4→3戦法」、第7章は先手が早く2筋を突き越す形になる。 第1章は、後手からすぐに角交換する形での、▲7七銀型。カベ銀を直して、1手で陣形が安定するのが魅力。半面、将来銀冠に組むことは難しくなる。ただし、玉型は矢倉で固定ではなく、銀立ち矢倉での玉頭位取りや、場合によっては穴熊への組み替えもありうる。 第1節は、後手が玉の囲いを優先し、のちに△2二飛と向飛車にして、△4四銀型から3筋で動いていく。この攻防は、のちの章でも似た形が何度か出てくる。 第2節は、△4四歩として、先手の▲4六歩-4七銀型を阻止する。この形は、向飛車にしたときに△4四銀と活用できないが、逆棒銀はありうる。 第3節は、△3五歩として3筋に位を張る。先手の右桂の活用を封じ、▲4七銀型には4筋から動いていく。ただし、仕掛けのタイミングは難しい。 第2章は、後手からすぐに角交換する形での、先手が銀冠を目指す形。▲7七銀型と違って途中の形が不安定だが、▲7七角を狙っていける。 第1節は、△8二玉の瞬間に▲4六歩と突く形。第1章の▲7七銀型と同じように、先手はできるだけ▲4六歩型を作りたい。 第2節は、争点がないうちに素早く銀冠にして玉の安定を図る作戦。後手としては、先手玉が安定するまでの手数を利用して、立石流にするのが有力策。 第3章は、すぐに角交換しない形での、▲5八金右とまず舟囲いを完成させる形。囲いが安定し、▲4七銀にヒモが付く半面、3九や4九などに隙はある。 第1節は、△3三角と上がり、先手から角交換させる作戦。一瞬2筋が無防備になるが、ギリギリ大丈夫。そこを無事通過すれば、△ゴキゲン中飛車vs▲丸山ワクチンのような将棋になる。 第2節は、美濃囲いを完成させてから角交換する形。▲8八同玉と取られてスムーズに左美濃に囲われてしまうが、互いに銀冠を目指していい勝負。 第4章は、すぐに角交換しない形で、▲3六歩と後手の石田流を阻止する形。 第1節は、▲3六歩を見て角交換する作戦。飛のコビンが空いているので、角交換を▲8八同玉とは取れない(王手飛車がある)。飛先交換はされるが、藤井流△3一金で対抗する。 第2節は、▲3六歩を直接咎めようと△3二飛とする手。先手も2筋交換して力戦模様になる。 第5章は、すぐに角交換しない形で▲5六歩とする作戦。対ノーマル四間飛車なら、右銀のスムーズな活用を目指して自然な手。ただし角交換型では常に△3九角の打ち込みに注意が必要となる。 第1節は、「角交換に5筋を突くな」という格言通りに、5筋を突いてきたのですぐに後手から角交換する形。先手は慎重な駒組みが要求されるが、左美濃に組んで工夫すれば互角の勝負。 第2節は、先手が5筋を突いたので、△3五歩から石田流を目指す手。5筋を突いていると▲4六歩とはしづらい。▲6六歩で石田流を阻止すれば、今度は突いた6筋を争点にしていく。 第6章は、43戦法。「よんさんせんぽう」と読み、『振り飛車4→3戦法』(戸辺誠,マイナビ,2013.03)で詳しく解説されている。 通常は後手では4手目△3五歩からの石田流は成立しないが、43戦法では△4二飛〜△6二玉〜△7二玉で▲6五角の筋を消してから石田流に振り直すことができる。手損ではあるが、逆に先手に多く指させて陣形を浮き上がらせるとも考えられる。 第1節は、▲2五歩と自然な手。以下、升田式石田流の戦いに。▲升田式と2手違う影響をどう生かすか? 第2節は、▲2五歩を保留しての▲4六歩。後手が石田流にしてくるなら、▲4六歩は自然な構え。▲2五歩保留なら、△2五桂〜△1四角の筋もない。よって後手が初志貫徹の△3二飛なら先手が少し得だが、今度は4筋が争点になってくるおそれはある。 第7章は、先手が2筋を早く突き越す形。ごく自然な手だが、すぐに▲2四歩と行けるケースはほとんどないため、角交換系の振飛車全体で減少傾向にある。どうしても▲2五歩型に限定したい場合に選びたい。 第1節は、後手がまず△3三銀型を作ってから向飛車にする形。2筋の逆棒銀や△2五桂ポンを警戒する展開になり、持久戦になりがち。やや後手が作戦勝ちしやすいか。 第2節は、角交換後にすぐに向飛車に振って、△3三銀or△3三桂の含みを残す形。先手はすぐに▲7七角と牽制するのが有力。角交換振飛車なのに、すぐに角を打ち合ってそのまま駒組みが進む。 角道オープン四間飛車はまだ歴史が浅く、本筋とされる変化は今後どんどん変化していく可能性が高い。ただし、現在の本筋に含まれる考え方やワンセットの攻め筋は、本筋が変わっていっても常に意識の中に置いておくことになるため、無駄になることはない。 特に△3五歩▲同歩△同銀に▲7七角のラインで角を打つ筋や、▲4六歩型を目指す考え方などはしっかりマスターしておきたい。 多くの内容を詰め込まれている半面、本文のつながりが分かりにくくて読みづらいかもしれない。前から順番に読んでいこうとするとしんどいので、まずはこのページのチャートの水色部分を並べて全体像をつかみ、気になる変化がある部分から精読していくのが良いだろう。(2014Jul17) ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p176下段 ×「工夫すれは」 ○「工夫すれば」 p185上段 ×「▲2三角成△同銀▲同飛成」 ○「▲2三角成△同金▲同飛成」 |