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マイナビ将棋BOOKS 石田流破り 左美濃 徹底ガイド |
[総合評価] A 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 上級〜有段向き |
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【著 者】 八代弥 | ||||
【出版社】 マイナビ | ||||
発行:2014年2月 | ISBN:978-4-8399-5059-0 | |||
定価:1,575円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
▲石田流vs△左美濃の解説書。 石田流は、現代振飛車党の先手番のエースである。▲中飛車や▲角道オープン四間飛車などが台頭してきているものの、石田流が大きな武器になっていることは間違いない。 一方で、後手の石田流対策は両手で数え切れないほどあるが、序盤で△8五歩と伸ばしていく形は減少傾向にある。さまざまな急戦早石田や、角交換での升田式石田流などがあるし、棒金などの居飛車急戦も効果が薄れているため、早く△8五歩と伸ばす価値がないという認識だ。 早い攻めがないなら、居飛車は玉を固めたいが、居飛車穴熊には組みにくい。その中で、比較的安全に堅く組めて、ある程度の攻撃力もある左美濃作戦が注目を集めている。 本書は、そのような▲石田流vs△左美濃の戦いを詳しく解説した本である。 書名は「石田流破り」となっているが、視点はほぼ公平。石田流側が有利になる変化も多く解説されており、「一方に肩入れした必勝作戦」というわけではない。 各章の内容を、チャートを添えながら紹介していこう。 第1章は、▲石田流本組vs△左美濃。「本組」とは、▲7六飛+7七桂+9七角の形をいう。「攻めの理想形」ともいわれ、石田流側がまず目指したい形だ。 第1節は△8五歩と伸ばした形での▲石田流本組で、この型の基本形。後手は△6三銀型にして7四を受けてから△3二銀と左美濃に組む。▲5六銀には3四をケアするために△2四歩とする。先手が2手必要なタイミング(▲9七角〜7七桂など)で後手は銀冠に組み替えていく。 この型では、△9二飛から千日手狙いで揺さぶっていく佐藤流が有名。 第2節は△8四歩で保留した形。△8五歩と伸ばしてもリスクが高いのなら留めておこう、という考え方。もし先手が本組にしてくれるなら、端桂から仕掛けが成立する。ただし、先手にある程度石田流のセンスがあるなら、△8四歩型に▲7七桂とはしてこないだろう(その場合は第2章の▲7七角型など)。 ▲7八飛型から▲6五歩の仕掛け(p43〜)はこの形特有の有力筋なので、後手を持つ人は本節をしっかり読んで対策を考えておくこと。 第2章は、▲石田流7七角型vs△左美濃。「7七角型」とは、▲7六飛+7七角の形のこと。 第1章の本組に比べて、▲7七角の1手で戦闘準備が完了する。また、跳ねたら戻れない▲7七桂型と違い、▲7七角は柔軟性があるので持久戦にも対応可能だ。 後手の飛先保留(△8四歩型)には、第1章第2節の本組ではなく、本章の▲7七角型で来る可能性が高い。▲石田流vs△左美濃の本流の戦型なので、本章で考え方をしっかり学ぼう。先を見越した駒組みのセンスも必要となる。 なお、△8四歩で保留していても、▲7七角を見たらすぐ△8五歩と伸ばすのを忘れないように。いつでも戦いが始まるので、反撃態勢を整えておきたい。ほとんどの場合で銀冠に組む余裕はない。 第3章は、▲3九玉型。▲2八玉の1手を保留し、▲8八角型で動きを見せてくる。低い構えで、藤井システムのような攻めを狙っている。 まともに相手をすると先手の角筋が厳しいので、後手は△5五歩で角道を二重に止めてから銀冠に組むのがオススメ。なお、さらに銀冠穴熊に組み替える構想もあるが、ややリスキーだ。 第4章は、居飛車が右銀を保留する作戦。 対石田流では通常、△6四歩〜6三銀の形を作って7四の地点を受けることが多いが、この作戦では後手は4〜7筋の歩を突かず、低い構えのまま一目散に左美濃に囲う。7四のケアは△8四飛のみで済ます。 右銀の使い道は後から決めていく。狙いの一つは、戦いを起こさずに銀冠穴熊への組み替えだ。 先手の構えは、第1章〜第3章と同様に、本組/▲7七角型/▲3九玉型の3つに大別される。 本書の左美濃作戦は、現在もプロで盛んに戦われている戦型で、互いに容易に撃破することは難しい。ただし、石田流が相手に玉を固めさせにくい作戦であることを考慮すると、その中でも左美濃は比較的簡単に堅く囲える作戦だ。急戦石田流や角交換型の升田式が一段落している現状では、石田流対策の主役となっていく戦型だろう。 先手で石田流を得意としてる人と、後手で2手目△3四歩としている居飛車党には必読の一冊だ。(2014Jul10) ※誤字・誤植等(初版第1刷で確認): p126下段 ×「3三桂なら…」 ○「△3三桂なら…」 |