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マイコミ将棋BOOKS よくわかる振り飛車穴熊 |
[総合評価] A 難易度:★★★ 〜★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 中級〜有段向き |
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【著 者】 佐藤和俊 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2011年5月 | ISBN:978-4-8399-3895-6 | |||
定価:1,470円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
振り飛車穴熊の総合指南書。「よくわかるシリーズ」の第2弾。▲四間飛車穴熊と▲三間飛車穴熊を解説。 2010年夏、広瀬が振飛車穴熊を駆使して王位を奪取したことで、にわかに振り穴ブームが到来している。最近までずっと、「振り穴は急戦には強いが、相穴熊では飛車先の歩が伸びている分だけ居飛車有利」という定説があり、トップ棋士が振り穴を指すことはほとんどなかったが、現在では若手やA級棋士にも採用されている。 ただし、目新しい手法が出現して従来の定説が覆った訳ではない。一応、「広瀬流」の駒組みはあるが、「振り穴を知り尽くした、強い人が使えば、十分に戦える」という状況になったくらいである。ちなみに広瀬は居飛穴を持っても強い。 本書は、現在流行中の振飛車穴熊について、級位者〜初段くらいにも分かるように解説した本である。 同シリーズの『よくわかる中飛車』(藤倉勇樹,MYCOM,2010)と同様、各節には次のような難易度表示がしてある。 ★1 かなり易しい。(4〜5級) ★2 まだまだ易しい。(3〜4級) ★3 ちょっと難解。(2級〜3級) ★4 ぐっと難解。(1級〜初段) ★5 有段者向け。(有段者向け) まずは各章の内容をチャートを添えて紹介していこう。結構盛りだくさんである。 第1章は、四間飛車穴熊。基本的に全て▲四間飛車で、後手番はなし。 初っ端は、△居玉棒銀の受け方。級位者で非常に多い攻め方だ。単純だが、対応を誤ると潰されかねない。基本的な対応は、(1)▲7八銀型で迎撃、(2)▲6七銀〜▲7八飛で迎撃、の2種類だ。なお、自陣は穴熊まで組めていない状態なので、普段美濃囲いしか使わない人にも応用できる。 次は対急戦。居玉棒銀から発展した「△3一銀型舟囲い+棒銀」、本格的な「舟囲い△5三銀型棒銀」、「山田流型ナナメ棒銀」の3種類に対応する。p50〜51の捌き方は、知っていなければまず指せないところ。逆に言えば、居飛車党で持久戦が苦手な人は、相手が捌き方を知らないことを祈って(汗)山田流型を採用するのもアリだろう。 3つ目は玉頭位取りと銀冠。 もともと、振り穴は玉頭位取りの圧力をかわして低く構えているので、玉頭位取りは「お客さん」である。とはいっても、序中盤を下手に指すと終盤の玉頭攻めは厳しい。4筋からの反発と、▲6六銀型からの攻めを覚えておけばバッチリだ。最近の本ではあまり解説されていないので、本書で学習しておこう。 銀冠の方は、先に発売されている『四間飛車穴熊の急所』(広瀬章人,浅川書房,2011.04)でも詳しく解説された。同一局面の解説もあるので、詳しく知りたい人は見比べてみよう。本書では、単純穴熊(3x3の四角穴熊)が良くない理由は、p69でサラッと書かれている。 4つ目は相穴熊。こちらは『四間飛車穴熊の急所』よりも先行している。ややこしい戦型のようだが、「プロの間ではシステム化されている部分も多い」(p132)ので、互いにある程度の知識があれば一目散にテーマ局面へ進むのである。 まず、△5四歩を突かずに一直線に居飛穴を目指す順の咎め方を解説。その後はメインである△5四歩からのオーソドックスな居飛穴にページが割かれる。▲5八金型と▲5九金〜▲4九金左型との違いが細かいので注意したい。2010年夏の王位戦で大活躍した「広瀬流」(4筋に位を取って5筋から手を作る)にも触れられている。 〔メモ〕 「△1二香を見たら▲5六銀が基本」(p107) 最後は、対矢倉。有段者ではまず見かけないが、級位者では矢倉しか囲いを知らないケースもあり、ときどき出てきそうだ。一見、与しやすそうだが、以下のような手ごわい側面もある。 ・引き角を予知したときに、▲6七銀-▲5八金左型が間に合うように駒組みする。 ・対銀冠で有効だった▲6六銀〜▲5五歩は無効。引き角で6四が守られているため。ただし、別の手段がある。 第2章は、三間飛車穴熊。四間穴熊に比べて定跡化が進んでおらず、手が広いため、本章では「いろいろな形からさばきの手筋を紹介」(p148)していく。 まずは対急戦、対持久戦(左美濃、相穴熊)。美濃のときと同様、△7三桂に▲8八飛が大事な一手で、これだけは必修だ。また、「先手三間には居飛穴」がほぼ常識化しているので、相穴熊の習熟はマストになる。 次は「後手番用作戦」。△三間飛車から△6四銀▲6六銀と上がり合って、△4五歩〜△4二飛とする。矢倉流中飛車とほぼ同じ筋である。先手の対応によって、5筋から攻め込んだり、3筋に転戦したり、形が崩れたと見て相穴熊に移行したり、対応は七変化になる。 3つ目は石田流。石田流は攻撃陣を高く構えるため、バランスを取って美濃囲いにすることが多いが、状況によっては穴熊も有力。本節では穴熊の他に、補足講座として超急戦、升田式、4手目角交換、4手目△5四歩、4手目△6二銀も解説している。 第3章は、終盤講座。穴熊特有の終盤戦の特徴を解説。この章は見開き完結型のレイアウトになっている。 難易度は★1〜★5だが、基礎講座部分は★1〜★2で、特に難しくはないだろう。佐藤の実戦解説が★3〜になっている。書いてある内容は、以下の通り。 ・穴熊の詰めろのかかりにくさを、片美濃などと比較 ・ゼットの生かし方、ゼットを自ら壊さない ・ゼットの作り方の例 ・詰めろがかかる前に受けるのがコツ ・穴熊の急所の升目 第1章〜第2章を読む前に、まず第3章を読んでおくのがオススメ。 全体的に、級位者から有段者まで幅広く対応した構成になっている。 級位者が通読するのは難しいと思うので、気になる戦型だけ読めばよいだろう。ゴキゲン中飛車と違って、序盤の落とし穴はほとんどないので、細かい手順より雰囲気重視でよいと思う。 有段者にもオススメだ。大流行が続いているゴキゲン中飛車と違い、振飛車穴熊はそもそも棋書の数がかなり少ない。本書でまず全体像をつかむのが良いだろう。(2011Jun18) ※誤植・誤字等(第1版第1刷で確認): p172 ×「第11以下の指し手@」 ○「第11図以下の指し手@」 なお、「第11図以下の指し手A」は見当たらない。 |