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最強将棋21 四間飛車穴熊の急所 |
[総合評価] S 難易度:★★★★ 図面:見開き4枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:A 上級〜有段向き |
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【著 者】 広瀬章人 | ||||
【出版社】 浅川書房 | ||||
発行:2011年4月 | ISBN:978-4-86137-030-4 | |||
定価:1,470円(5%税込) | 222ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||
◆内容紹介 |
【レビュー】 |
四間飛車穴熊の定跡書。対急戦と、対銀冠を解説。 四間飛車穴熊が本格的に指されるようになって、早40年近くが経つ。対急戦には好成績を挙げたものの、居飛車が玉を固める作戦が主流になってくると、四間穴熊が苦戦するようになってきた。特に相穴熊では、「玉型が同等なら、飛車先が伸びている分だけ居飛車有利」が定説となり、ここ20年ほどはトップ棋士での四間穴熊採用はほとんどなくなっていた。 その状況に風穴を開けたのが本書の著者・広瀬である。広瀬は四間穴熊を使って勝ちまくり(ただし相居飛車も結構指せる)、2010年夏には王位を奪取。千日手2局を含む8局中、6局を四間穴熊で戦い、「四間穴熊はプロトップでもやれる」ということを実証した。それ以来、トップ棋士でもときおり四間穴熊が採用されているが、まだ大流行には至っていない。 本書は、四間穴熊の定跡と、指し方の思想・考え方を記した本である。 本書に載っているのは、対急戦と対銀冠。その他の強敵である対銀冠穴熊と対居飛穴(相穴熊)は続編で解説されることが予告されている。 各章の内容を、チャートと図面を添えて紹介していこう。 第1章は、対急戦。この章では基本的には四間穴熊は後手。美濃囲いの場合は、居飛車の仕掛け直前で待つ形が難しいため、1手多く指せるからといって▲四間飛車が有利とも限らないが、▲四間穴熊では1手が確実に玉を固めるプラスの手となるため、ほとんどの場合は得になるとのこと。 基本的には△3二銀型で待つ。△4三銀型にした場合の例も多く載っているので、先後どちらにも参考になるだろう。対棒銀の場合のみ、△3二銀型では捌けないので△4三銀型にする。銀をどちらにするかの見極めは、基本的に「4筋が守られているかどうか」で判断すればよい。 第1型はスピード角交換。穴熊が未完成で8三に隙があるので、▲4五歩から角交換を狙ってくる。これは対美濃囲いではまずありえない仕掛けだ。△同歩▲3三角成△同銀▲6五角(両成り)が居飛車の理想だが、うまくいかない。 第2型は斜め棒銀。△3二銀型なので、▲3五歩に△4五歩であっさり振飛車良しなのは、美濃のときと同様。 第3型は山田定跡タイプ。美濃のときと違って、△6一金が浮いているので途中から要注意だ。 第4型は鷺宮定跡タイプ。△4三銀と相手をすると苦しくなるが、△7一金と固めてポンで捌ける。基本的に△4六歩と突けるのならOKというわけだ。 第5型は棒銀。本章の中では最も要注意だ。▲5七銀が4六を守っているので、カウンターが通用しにくい。対棒銀だけは△4三銀と上がって、左金も繰り出してきめ細かく戦う必要がある。穴熊党は苦手な展開かもしれないので、丁寧に読みこなそう。逆に居飛車党は、研究次第でやれそうな戦型だ。 第6型はスピード棒銀。左銀の▲5七銀左を省略し、▲6八銀型のまま戦おうというもの。通常の棒銀より1手早いので要注意だが、△4六歩と突ける形なので案外捌きやすい。 最後の第7型はスピード斜め棒銀。▲5八金右を省略して、山田定跡タイプの仕掛けを行う。1手早い分、△8二銀と締まれてないので、角交換後に▲6五角の両成りが生じる。「居飛車の秘策」(p96)であり、あまり他書に載っていないようなので、この型のマスターは重要だ。 第2章は、対銀冠。急戦では玉型の差でなかなか勝ちづらいと考えた居飛車は、自分も玉を固めようとした。本章でテーマになっている銀冠は、現在でもプロでよく指されている形である(プロはみんな銀冠が好きらしい)。 本章では基本的に四間穴熊が先手。急戦がないことを確認できれば▲6七銀と上がってよいので、第1章とは整合が取れている。 第1型は、昔よく指されていた「単純穴熊」。「四角穴熊」ともいう。堅さは抜群で、居飛車が攻めてきてくれればカウンターで勝てるのだが、1つだけ、しかし(少なくともプロ的には)致命的な「欠陥」があるというのだ。それは、 「単純穴熊は自分からは何もできないのである!」(p123) ということ。居飛車が△4四歩と角道を止めてくれれば、▲6五歩〜▲6六銀と攻めの形を作れるが、居飛車が角道を止めずに固めて待機すると、四間穴熊からは何もできない。こうして単純穴熊は消滅したという。かくして、少なくとも先手番では「攻めを確保」することが必要になる。 ただし、この第1型では、あとで重要になってくる「▲6六銀型から▲5五歩」や「△8六歩▲同歩△7五歩」などの攻め筋をマスターできるので、飛ばさずに読んでおきたい。 第2型〜第3型は「現代穴熊」の基本。現代穴熊とは、「▲4六歩〜▲4七金〜▲3九金〜▲3六歩」の形をいう。その特徴は、「本質は守りをあとまわしにして攻めに手をかけること」「伸ばした歩が攻めの火種になる」(いずれもp138)。また、条件次第では▲3七桂(俗称「パンツ脱ぎ穴熊」)も辞さない。 現代穴熊なら、▲3八飛の袖飛車に備えて△4四歩が必要な手となるので、▲6五歩と突くことができ、攻めの確保が成立する。 また、▲6六銀型から5筋歩交換〜▲5七銀〜▲5六銀で真の理想形が完成するため、居飛車は理想形を阻止しようとする。 その戦いを書いたのが第4型〜第6型。特に第6型は広瀬の推奨手順だ。 △四間穴熊については、第6型のあとの「後手番の場合は?」で触れている。1手の差で居飛車の▲3六歩が先に入っているが、先手番での戦い方が応用できるとのこと。ただし、「後手だから千日手でもOK」という消極的スタンスもやむを得ないというのが前提だ。第7型は先後の違いが大きく出る局面がテーマ。先手番の時に有力だったいくつかの手ができなくなってしまうが、それでも結論は「いい勝負」だ。 全体的に思想・考え方重視でとても読み進めやすく、イメージとしては『現代矢倉の思想』(森下卓,河出書房新社,1999)に似ている。また、各変化の結論(「振飛車ペース」など)が棋譜の末尾についているのも分かりやすい(これは同シリーズの『矢倉の急所』(森内俊之,浅川書房,2008)などにも採用されていた)。 広瀬穴熊の本命と思われる、続編の「対銀冠穴熊・対居飛穴編」も今から楽しみだ。あー、楽しみだなぁぁ。(2011Apr14) ※誤植・誤字等(初版で確認): p5 目次に「凡例」があるが、どこにも載っていない。(同シリーズの他書では、例えば「[基本][応用]の二段階で難易度を示しました」などと書いてあるページがある。ちなみに本書では[基本][応用][研究]の3種類。 p127図面上 ×「第10は▲5六歩まで」 ○「第10図は▲5六歩まで」 p173 ×「△4六歩や△8六飛などい厳しい手が」 ○「△4六歩や△8六飛などの厳しい手が」 |