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速攻!! 次の一手基本集 | [総合評価] B 難易度:★★☆ 〜★★★☆ 見開き2問 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解答の裏透け:C 解説:B 中級〜上級向き (有段者OK) |
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【監 修】 羽生善治 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2010年11月 | ISBN:978-4-8399-3747-8 | |||
定価:1,470円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 |
第1章 週刊将棋中盤編(第1問〜第18問)=18問 第2章 週刊将棋終盤編(第19問〜第66問)=48問 第3章 将棋世界序盤編(第67問〜第88問)=22問 第4章 将棋世界中盤編(第89問〜第160問)=72問 第5章 将棋世界終盤編(第161問〜第208問)=48問 ◆内容紹介 本書は羽生善治名人監修の次の一手問題集です。 週刊将棋「段・級位認定次の一手 上級位クラス」、将棋世界「級位コース問題」から良問を厳選した一冊です。初段を目指す方にとって、実力養成のためのピッタリした一冊となることでしょう。 本書は1ページに2問収録することにより、合計208問とボリュームたっぷりの一冊となっております。 また、各章に正解数と段位の目安を掲載しており、解きながら自分の実力を測ることもできるようになっております。 |
【レビュー】 |
次の一手問題集。週刊将棋誌に掲載された上級位クラスの問題(2006年2月22日号〜2007年6月6日号)と、将棋世界に掲載された級位コースの問題(2007年1月号〜2010年8月号)をまとめたもの。 2009年9月〜2010年5月にかけて、将棋世界の掲載問題をまとめた「X段コース」シリーズが発売されたが、本書はその「級位コース版」に当たるもの。級位コース問題集が100問強では価値が足りないと見たのか、週刊将棋の上級位クラスの問題と合同で、200問強で出版された。 そのため、問題は見開き2問で出題。出題図は、週将編では三択あり、ヒントなし。将世編は選択肢なし、ヒントあり(30〜40字)。 解説図は各問1枚で、将世分は解説が掲載時よりも圧縮されている。週将分の解説は掲載時とほぼ同じだが、文体が「ですます調」に変更され、少し柔らかい感じになっている。 各章ごとに、解けた数で棋力の目安が分かるようになっている。だいたい8割強解ければ初段以上、3割〜5割だと3級になる。 各問題には掲載時の正解率が添えられている。本書では、各章で正解率の高い順(=おおむね易しい順)に並べられているので、今回はヒストグラムではなく、折れ線グラフにしてみた。 第1章・第2章の週将問題の方が全体的に正解率が高いのは、おそらく三択のため。適当に答えても1/3は正解だし、平凡な手を除外するとさらに正解率が上がる。問題自体のレベルは初段〜二段クラスとほぼ同等だろう。 各章の問題の傾向をサラッと紹介してみよう。 第1章(週将・中盤)は、主に駒得や敵陣突破を目指す問題。1問だけそのまま寄せに直結するものもあった。 第2章(週将・終盤)は、約2/3が必至をかける問題。残りの1/3は、「詰めろ逃れの詰めろ」と、「(詰まされないように)王手を凌ぐ」。「即詰み」「凌ぎ」が少しだけ混じっている。『上級者の力』(週刊将棋編,MYCOM,2009.02)には出てこなかった「合駒請求」の手筋もいくつかあった。 第3章(将世・序盤)は、駒得・捌き・敵陣突破を目指す問題。定跡からの出題が多い。第87問は△四間飛車vs▲左4六銀急戦の基本的な定跡の一局面だが、正解率18%は意外。他に有力な手筋があったので、勘違いした人が多い? 第4章(将世・中盤)も、ほとんどは駒得・捌き・敵陣突破を目指す問題で、第3章と大きな違いはない。あえて言えば、定跡から少し離れた局面での出題が多い感じ。最後の3問(正解率が一桁)は難問というほどではないが、正解には劣るが有力そうな手があるため、極端に正解率が下がっているようだ。 第5章(将世・終盤)は、約4割が必至をかける問題で、次に「詰めろ逃れの詰めろ」が多い。「王手を凌ぐ」「寄せ」「詰み」「受け」「逆王手」もときどき出てくる。また、一気の寄せを天秤にかけた状態での「駒得狙い」「敵陣突破」「捌き」などもあり、第2章よりバラエティに富んでいる。最後の方には、歩の不成で打歩詰めを回避する問題や、自玉を打歩詰めにして凌ぐ問題などもあった。 全体的に「ラクラク次の一手」シリーズ(『ラクラク次の一手(2)』(日本将棋連盟書籍編,日本将棋連盟,2003.04)など)の後継本、といっていいと思う。ただ、定価のインフレ率がすごいです。 個人的には、級位者向けだからといって、問題をたくさん詰め込もうとせず、将棋世界の解説クオリティをそのまま搭載した方が良かったかと思う。これは好みの問題かもしれないので、「解説の質より問題の量」の人は本書で良いだろう。解説重視の人は『初段コース』や『二段コース』の方がオススメ。 最後に一つ、これだけは言わせて。監修の羽生名人がまえがきに「慣れてくれば誰でも容易にすらすら解けます」と書いているが、終盤問題は結構間違えましたよorz 『上級者の力』(週刊将棋編,MYCOM,2009.02)では少なかった「詰めろ逃れの詰めろ」や「合駒請求」もちょこちょこ出てくるので、「誰でも容易にすらすら」というほど簡単ではないと思う。 総合的には、すでに初段の実力がある人がトレーニングをするのに最適な本だ。級位者の人は、「正解率○%以上の問題はマスターする」など、自分で目標ラインを設定して取り組むのがよいと思う。(2011Mar03) ※第24問は『上級者の力』の第1問と同一。解説は違う文章になっている。『上級者の力』は週刊将棋2004年1月14日号〜2006年2月15日号から出題なので、掲載時期は本書とは重なっていないはずなのだが…。 ※ところで、タイトルの「速攻!!」って何だろうか。急戦がテーマというわけではない。「サクサク解ける」というニュアンスだろうか? |