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東大将棋ブックス 中飛車道場 第一巻 ゴキゲン中飛車超急戦 |
[総合評価] A 難易度:★★★★☆ 図面:見開き6枚 内容:(質)A(量)A レイアウト:A 解説:A 読みやすさ:B 有段向き |
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【著 者】 所司和晴 | ||||
【出版社】 毎日コミュニケーションズ | ||||
発行:2004年1月 | ISBN:4-8399-1373-0 | |||
定価:1,365円(5%税込) | 224ページ/19cm |
【本の内容】 | ||||||||||||||||||||
◆内容紹介(MYCOMホームページより) |
【レビュー】 |
△ゴキゲン中飛車vs▲超急戦の定跡書。 ゴキゲン中飛車は、序盤から角道を止めない戦法のため、常に▲2四歩と突かれる可能性がある。7手目▲2四歩の「早突き」は、先手が飛先を逆襲される展開を嫌って実戦例は少ないが、実際はなかなか難しい。7手目▲4八銀であれば、先手玉の右側が一時的に壁になっているため決戦策は採りにくく、いくぶん穏やかな展開になりやすい(※1)。それに対し、7手目▲5八金右は「先手は決戦を辞さない」という覚悟の表れである。この変化は、先手良しの結論が出れば後手がかなり苦しくなる可能性があり、現在もトッププロ同士でしのぎを削っている。 本書は、△ゴキゲン中飛車vs▲5八金右超急戦と、▲2四歩早突きを一冊にまとめた本である。 各章の内容をチャートを交えながら簡単に紹介していこう。 第1章は、ゴキゲン中飛車の序盤変化の概要。チャート(下図)にあるように、個別に章や節が立っている変化は本章では紹介のみにとどめ、それ以外の変化については少し詳しく書かれている。 第2章は、▲5八金右超急戦の大決戦型。本書の本命である。この超急戦はゴキゲン中飛車の登場後すぐからずっとあるものだが、10年以上経過した2011年現在でもどちらが有利かの結論は出ていない。 ただし、本章のメインである▲7五角型については、研究が進んで、2011年現在では「消えた戦法」になっている。詳しくは『遠山流中飛車急戦ガイド』(遠山雄亮,MYCOM,2010.07)を参照のこと。 また、2010〜2011年ごろの最新変化である▲1一龍△9九馬▲3三角△4四銀▲同角成…については、本書発売時には登場していないので載っていない。(△4四銀までは載っているが、その後は違う変化になっている) 第3章は、先手の▲5八金右〜飛先交換に対し、決戦策を採らず、△5四飛と浮いて捌きで勝負しようという形。わたしの実戦ではこれをやってくる人が多い。本書では後手がやや苦しいという結論になっているが、ゴキゲン中飛車らしい指し方ではある。 第4章は、飛先を放置してさっさと囲ってしまう作戦と、△3三角と上がって角交換させる作戦の2つ。わたしの実戦ではこれも多い。「▲5八金右を指す人は決戦策には自信がありそうだから、変化球で勝負しよう」ということだろうか。 第5章は、7手目に▲2四歩と早突きする形。横歩取りで金を締まらずに飛先交換したときと同様に(※2)、飛先を逆襲されるので、実戦例は少ない。しかし案外難しいところがある。 ▲5八金右の超急戦は、かなりの知識と研究が必要とされる戦型だ。▲7五角型が消えた戦法になっているなど、本書の内容は2011年現在は古くなっている部分があるが、基本的なことはほとんど書かれている。また、決戦策を回避する形についても載っているので、ゴキゲン党は読んでおきたい一冊である。居飛車党は、▲5八金右を指したい人だけでいい。(2011Apr02) ※1 ^ 2010年に「超速」が流行り始めてからは、▲4八銀でもあまり穏やかな展開にはならなくなっている。 ※2 ^ 詳しくは『横歩取り空中戦法』(内藤国雄,弘文社,1974)などを参照。 |